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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:124 クリザリッドの余裕

「ほう、全てを明らかにするだと」


 クリザリッドが余裕の笑みで見据える中、夕暮れ時のオレンジ色の太陽が、祠の後ろにある谷とノーティスの背を後光のように照らす。

 まるでノーティスの怒りの炎のように。


「そうさクリザリッド。今お前がアネーシャに語っていた事。そして、お前の野望を明らかにさせてもらう!」

「フンッ、下らん。それを明らかにした所で意味はない」

「あるさ……もうこれ以上、決して犠牲者を出させない為に!」

「クククッ……」

「何がおかしい」


 苛立つノーティスをクリザリッドは見下ろし、ニヤリと嗤った。


「師弟揃って同じ道を歩むとはな」

「なんだと! まさか……」


 驚愕し目を見開いたノーティスに、クリザリッドは言い放つ。


「そうだ。お前の師、イデア・アルカナートも貴様と同じく……いや、それ以上に真実に気付いてしまったのだ」

「じゃ、じゃあ師匠は……」

「粛清した。偉大なる教皇様に剣を向けた逆賊としてな」

「嘘だ! 師匠が……師匠がお前なんかに負けるハズがない!!」


 ノーティスは激しい怒りと共に叫んだ。

 アルカナートが負けるなんて信じられないし、信じたくもないからだ。


 しかしクリザリッドは、そんなノーティスを嘲笑う。


「あの男をそこまで信頼してるとは、愚かな奴よ。ハーッハッハッハッ」

「クリザリッド、貴様……!」


 ノーティスが怒りに震え剣を構えた瞬間、アネーシャが背中から強く声をかけてくる。


「ノーティス、気持ちは分かるけど挑発に乗っちゃダメ! まずは心を落ち着けて」

「アネーシャ……!」


 ハッと振り向いたノーティスを、アネーシャは凛とした瞳で見つめ静かに頷いた。

 それにより心を落ち着かせたノーティス。


「ありがとう。それに、激情に駆られちゃいけないのは、昔レイっていう王宮魔導士から教わったよ」

「レイって、もしかしてあの派手な女の子?」

「知ってるのかアネーシャ」


 少し驚いた顔を見せたノーティスに、アネーシャは軽く微笑んだ。


「えぇ。アナタが私と戦って倒れてた時、ちょっと話をしたから」

「そうだったのか……」

「あの子、ジークって人とお似合いだったわ♪」

「フッ、どうやら間違いないようだな」


 ノーティスはアネーシャと話し完全に落ち着きを取り戻したが、同時にレイやジーク達の事を思い出し想いを馳せた。


───レイ、ジーク……2人とも元気にしてるかな。アンリやロウにも久しく会ってないし。けど、みんなを守る為にも俺は……!


 ノーティスはクリザリッドの方へ再び顔を向け、そのままアネーシャに告げる。


「アネーシャ。後は任せてくれ」

「ダメよノーティス、私も戦うわ!」

「ありがとう。でも、キミは傷ついている。だから、俺がヤツを退ける!」


 そしてノーティスは、クリザリッドを精悍な眼差しで見据えた。

 決して退かないという決意と共に。


「クリザリッド。この古の祠に眠る秘密を明らかにして、お前の野望を必ず阻止する」 

「フンッ、戯言を。できる訳無いだろう。お前もアルカナートと同様、ここで粛清されるのだからな!」


 クリザリッドがそう言い放った瞬間、ノーティスはキッと睨み剣を構えた。


「師匠が負けたなんて、俺は信じない! 光のクリスタルの名の下に限界まで輝け! 俺のクリスタルよ!!」


 ノーティスは額の魔力クリスタルから一気にゴールドの輝きを溢れさせ、その煌めきを身に纏うと、クリザリッドに飛び掛かり激しく乱打を打ち合い始めた。


 ドガガガガッ! ガキィンガキィンガキィンッ!!


「ハァァァァッ!」


 大きく剣を振りかぶったノーティス。

 だがその瞬間、

 

「ボディーが甘い!」


 その叫びと共に、ノーティスの胸にクリザリッドの強烈な前蹴りがドカッと舞い込み、一瞬にして鎧が砕かれた。


「ぐはっ!!」


 吹き飛ばされたノーティスは何とか倒れずに踏ん張ったが、クリザリッドの強大な戦闘力に戦慄を隠せない。

 認めたくないが、クリザリッドの力はノーティスが知る限り、アルカナートに最も近かったからだ。


 そんな事を感じているノーティスにクリザリッドは飛び掛かり、拳でドドドッ! と、思いっきり強大な連打を浴びせた。

 クリザリッドは剣術も卓越しているが、拳法も凄まじいのだ。


「がはっ……!」


 口から血を吐き、片膝をついたノーティス。

 鎧を砕かれた所にもろに喰らった強烈な拳打で、ノーティスは複数骨折をさせられてしまった。


 クリザリッドは、そんなノーティスを薄ら笑いを浮かべて見下ろしている。


「どうした? 全てを明らかにするんじゃなかったのか」

「あぁ、明らかにするさ……! 必ず」

「ならば、あの世で全て見てるがいい。死ね、エデン・ノーティス!」


 クリザリッドの凶刃がノーティスに襲いかかった。

ノーティスはここからどう反撃に゙移るのか……!



次話は第6章最終話。

『ハーフ・ブレイキング・クリスタル』

この物語もいよいよ佳境に入ります。

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