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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
122/251

cys:121 サガの涙とアルカナートの怒り

「バカな?! アルカナートだと?」


 サガが激高し睨んだ瞬間、その男はサガに向かって飛び掛かり、強烈な刃を振り下ろした!


 ガキィンッ!!


「ぐっ……!」


 サガはその刃を剣で何とか防いだが、凄まじい衝撃が体全体に走る。

 また、邪悪な殺意とアルカナートに匹敵する力に、驚愕を禁じえない。


 そんなサガを、余裕の顔で見つめている男はクリザリッドだ。

 この頃はまだアルカナートとパーティを共にしていたが、とある理由によりこの場に赴いてきたのだ。


「クククッ……この一撃を受け止めるとは、さすがにやるではないか。だが、その傷ついた身体でこれを受け止められるかな?」


 妖しい笑みを浮かべサガを見据えたまま後ろに飛び退くと、クリザリッドは胸の前に丸めた両手を向かい合わせて空間を作り、そこに漆黒のエネルギーを集めていく。


「ダークマターと共に漆黒に輝け! 我がクリスタルよ!」


 額のクリスタルが漆黒の輝きを放ち、それを全身に纏ったクリザリッド。

 そして両の手の中の漆黒のエネルギーを巨大化させると、それを片手で頭上に掲げた。


「永遠の闇と絶望に染まるがいい! 『スコーディ・アペーシア』!!」


 漆黒のエネルギーがサガを襲う。

 サガも闘気を高め技を放ったが、傷ついた身体のサガに最早(もはや)それ以上の力は残っておらず、サガの光は徐々に闇に押されていく。


「ぐっ……!」

「諦めろ……傷ついた身体では、それ以上の力は出まい。だが光栄に思え。お前の力を飲み込み、私は神に近づくのだからな」

「何だとっ! キサマは何を企んでいるのだ?」

「……これから死ぬお前に、知る必要はない。さらばだ! トゥーラ・レヴォルトの誇り高き戦士よ! ハァァァァツ!」


 クリザリッドは闇のエネルギーをより強く押し出し、サガの『神狼翔牙』の光を完全に覆い尽くしていく。


「ぐぁぁぁぁあっ!!」


 叫びを上げて倒れかけるサガに近づき、クリザリッドは吸収のスキル『ザカル』で自分の物にすると、満足気な笑みを浮かべ見下ろした。


「喜ぶがいい。お前の力は私が頂いた。後は安らかに眠るがいい」

「ぐっ……! シ、シド。すまない……」


 シドにそう言い残し、その場にドシャ! と前のめりに倒れたサガの心に、走馬灯が駆け巡る。

 今まで家族で過ごした幸せな日々が……

 それを見たサガは、心の中でシドと妻に向かい微笑んだ。


「ありがとう……!」


 そう言い終えると、サガは永遠に瞳を閉じた。

 瞳から流れる涙と共に……


 それを見届けたクリザリッドは妖しい瞳を煌めかせながら、絶命したサガを見下ろした。


「お前達の光は、消えなければならないのだ……」


◆◆◆


 それから数日後……


「ふざけるなっ!!」


 ドゴオッ!! という轟音と共に、薄暗い王宮内部の壁が吹き飛ばされた。

 アルカナートの怒りの拳によって。

 それを目の当たりにし腰を抜かしてヘタりこんだ兵士を、アルカナートは睨み付けた。


「キサマ、もう一度言ってみろ!」


 兵士は怒り狂うアルカナートに恐怖しながらも、アルカナートにもう一度告げた。

 黙っている方が、より危ないと感じだからだ。


「恐れながら、アルカナート様が敵国トゥーラ・レヴォルトの勇者を討ち取ったとの報告で、今城内がざわめきだっております……」


 それを聞いたアルカナートはギリッと歯を食い縛った後、兵士に踵を返しその場を後にした。

 そして、再び怒りと共に虚空を睨み付けた。

 自分の名を語り友を惨殺した、正体不明の敵に対して。


「我友を惨殺したキサマを、絶対許さん。この俺が必ず仇を取ってみせる……!」


◆◆◆


 その頃、トゥーラ・レヴォルトには悲しみの葬列が出来ていた。

 その葬列の先頭を行くのはサガの妻と息子のシド。

 彼らは悲しみのベールに包まれながら、サガの遺体と共に教会へ向かっていた。

 そして、シドは歩きながら思い出していた。

 サガの訃報を知った時の事を……



 降りしきる雨の中で憲兵隊が見守る中、泣き崩れるサガの妻と泣き叫ぶ息子シド。

 そこに、男が泣きながら膝をついて二人に懺悔してきた。


「申し訳ございません…… !サガ様が襲われている所に出くわしたのですが、賊のあまりにも強大な力の前に、私は震えて、隠れている事しか出来ませんでした……誠に申し訳ございません!」


 泣き崩れる男を前にしたシドは、悔しさと悲しさで拳を握り締めた。

 けれど、その男を責める事はしなかった。

 傷付いていたとはいえ、あの強い父を倒した男を目の当たりにしたのであれば、恐怖してしまっても仕方なかっと思ったからだ。


「くっ……父さんをこんな目に合わせたヤツは、どんなヤツだった?!」

「フードの中から鋭く冷たい眼光を放つ長身の男で、全身に禍々しい漆黒の光を纏っていました」

「漆黒の男……」

「はい……そして、名はアルカナートと言っていました」


 その瞬間、その場がざわめき憲兵隊の男が声を上げた。


「アルカナートだと!?」


 シドはその男に詰め寄り、悲壮な顔で問いかける。


「アルカナートって誰なの?!」


 シドからそう問いかけられた男は、哀しくうつむいた。


「スマート・ミレニアム軍、最強の勇者です……!」

「スマート・ミレニアム軍、最強の勇者?」


 思わず尋き返したシドに、男は沸き上がる怒りをこらえながら答えていく。


「そうです。ただ、敵ながら義に厚い男と聞いておりましたが、まさかこんな事をするとは……やはりスマート・ミレニアム軍の奴らは、我々の事をただの蛮族としか思っていないのです!」


 男はそう叫ぶと、怒りと悔しさと共に涙を溢した。


 その瞬間、シドの脳裏にサクラの木の前で対峙した時の事が甦り、同時に激しく心に燃え上がった。

 サクラの木を枯れさせる塔を作り、自分の父を惨殺したスマート・ミレニアム軍。

 そして、アルカナートへの復讐の炎が!


◆◆◆


「アルカナートよ。それからの戦いは知っての通りだ」

「クリザリッド……!」


 時は戻り、教皇の間でアルカナートの怒りが湧き上がる。


「サガの無念は俺が晴らす!」

「出来るのか? 勇者として剣を置いたお前に!」

「魔道に堕ちたお前に言われる筋合いはねぇ! ハァァァァッ!」

「ほざくな……魔道に墜ちなければならぬ苦しみ……キサマには分かるまい! オォォォォッ!」


 咆哮を上げ激しく技をぶつけ合う、アルカナートとクリザリッド。

 それを見据える教皇クルフォスは、額からツ――っと汗を流した。


───2人の力が完全に拮抗している。これはまさに永遠に決着の付かない『エターナル・ウォーズ』! いや、さすがは剣聖アルカナート。クリスタルの力は互角でも、僅かにクリザリッドを押し始めている。まずいな……いや、しかし……!


 クルフォスの瞳が妖しく輝いた。


◆◆◆


 時は完全に現代に戻り、ノーティスはルミとメティアを連れセイラの元から戻っている途中だった。

 ルミが隣でいつも通り運転し、後ろにメティアが座っている。


 3人でのドライブでもあるのだが、セイラからアネーシャの事を聞いた3人の表情は重く、しばらく黙ったままだった。

 セイラから聞かされた話が、あまりにも重かったからだ。


 けれどそんな中、メティアが口を開く。


「ねぇノーティス。ちょっと尋いてもいいかな」

「ん? ああいいけど、どうした」

「あのさーーー、近くに甘い物食べれる所ないかなーーー?」

「へっ? あ、甘い物?」


 全然予想外というか、この場の雰囲気と全然違う質問をしてきたメティアに、ノーティスは一瞬面食らったが、隣で運転してるルミは思わず笑顔を零した。


「アハハッ♪ メティアさん、相変わらずね」

「だってーーー疲れたら甘い物食べたくなるじゃーん」

「そうね、私もなんか甘い物ほしくなっちゃった♪」

「さっすがルミさん、分かってくれて嬉しいよ」


 急に和やかな雰囲気になった2人を、えっ? という顔をして見つめてるノーティス。

 いい事なんだけど、突然の雰囲気の変わりようにちょっと戸惑っているのだ。


 そんなノーティスに、ルミは前を向いたまま明るく告げる。


「じゃーーノーティス様、今から行きましょう♪」

「えっ、マジで?」

「はい。マジです。ねっ、メティアさん」

「そうそう♪ マジでーーーす」

「まあ、いいんだけど……」


 ノーティスがちょっと乗りきれないでいると、メティアが後ろから可愛い手でノーティスの両目をパッと塞いできた。


「メ、メティア、何すんだよ」

「だーーーって、ノーティスがずっと怖い目してるんだもん。だからボクが塞いだの」

「いや、それは2人も一緒……」


 そこまで言いかけると、メティアが全否定してくる。


「違うよ。ノーティスが恐い顔してたから、ボクもルミさんもずっと黙ってたんだよ」

「えっ? そ、そうなのか」

「そうだよ。ねっ、ルミさん」

「ルミさんの言う通りです。ノーティス様、確かにセイラさんから聞いた話は私もショックでしたけど、こういう時に暗くなってもいい事ありません」


 ルミが怒る訳ではなく淡々とそう言うと、メティアもノーティスからパッと手を離しニコッと笑った。


「ルミさんの言う通りだよ。ノーティス、元気出していこ♪ セイラさんだって、ノーティスにそんな風になってほしくて教えてくれた訳じゃないハズだよ」

「メティア……なんか、キミの方が分かってる感じだな」

「そんな事ないけど、セイラさんと今日会ってみてそう思ったからさ」


 そう言われたノーティスは心の中で振り返ってみた。

 そして、確かにそうだと感じフッと笑みを浮かべ明るい声で2人に言う。


「そーだな。じゃあ行くか! 俺も甘い物食べたくなってきた」

「いいねノーティス♪ ボクと一緒にお店の甘い物を食べ尽くそう」

「アハハッ♪ じゃあ行きましょう」

和ます2人に感謝しながらも、ノーティスは……



次話は遂にノーティスがルミに……

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