表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
12/251

cys:12 ルミの愛と杞憂

───ノーティス樣、無事に試験終わったのかな……


 ルミは筆記試験の部屋の外で、ノーティスが出てくるのを少しハラハラしながら待っていた。

 部屋に入る時にゲッソリしていたし、何よりノーティスはトラブルに巻き込まれる事が多い体質だからだ。


───あぁ……大丈夫かな、ノーティス樣……


 ルミがそう思い軽くうつむいていると、筆記試験終了の合図と共に、部屋から受験者達がゾロゾロと出てきた。


───あっ、試験終わったんだ! 早く会いたいなっ♪


 そう思ったルミはサッと顔を上げ、小柄な体をピンと伸ばしたまま、入口から出てくる人波を見つめながらノーティスを探す。

 けれど、ノーティスの姿は見当たらなかった。


───あれ? ノーティス様、何でいないのー?


 そう思ったルミは、部屋から出てきた受験者の1人の肩をポンポンと叩き、ん? と、振り返った男に尋ねる。


「あの、すいません。ノーティス樣をお見かけしませんでしたか?」

「ノ、ノーティス? 知らねーな。誰それ」


 ルミの可愛さにちょっと顔を火照らす男に、ルミはその可愛い顔を向けたまま下から見上げた。


「白のロングジャケットを着た、背の高くカッコいい男性です♪」


 ルミがニコッと笑って男を下から見つめると、男は顎に軽く手を添えて少し考えた。

 そして、何か思い出したような顔を浮かべると、ポンッと手を叩いた。


「あっ、もしかしてアイツかな。プラチナゴールドエリアから来た受験者」

「そう! 多分その人です」

「あー、アイツなら確か別室に連れて行かれたけど……」

「べっ、別室?!」


 事情を知らないルミは、目を大きく開いて声を上げた。

 またノーティスが何かに巻き込まれたのかと思ったから。

 男は、そんなルミに軽く告げる。


「あぁ、何か呼ばれてたぜ。俺は試験に集中したくてギリギリまで勉強してたから、あんましよく見てなかったけど、確か、何か白服のヤツを何人かが罵倒してたな……」


───白服、罵倒、間違いない。ノーティス様だ……


 ルミはそう確信しガクッと肩を落とすと同時に、ノーティスの事が凄く心配になってきた。


───ノーティス様、申し訳ありません。私がついていれば、必ずお守りしましたのに……!


 ルミは悔しさに震えながら、男に訴えるような眼差しを向ける。


「じゃあ、何してるんでしょうか? ノーティス様は!」

「さ、さぁ?」


 男は軽く首をかしげ、ごめんな、と言いその場から去っていった。

 ルミの事は可愛いと思うけど、彼氏持ちならこれ以上は、しゃーないと思ったから。


「あっ、あの……ハァッ……」


 ルミが軽くうつむいてため息を零すと、三人の受験者達が、ニヤニヤした顔をしながらルミに近付いてきた。

 あのキリト達だ。


「おい。アンタ今、ノーティスって言ったか?」

「あっ、はい。アナタ達は……」


 何となくイヤなオーラを感じたルミは、少し引きながらキリト達をジッと見つめた。

 するとルミが感じた通り、キリト達はルミに尊大な態度を取ってくる。


「クラスメイトだよ。まあ、元だけどな」


 それを聞いて、ちょっと警戒を解いたルミ。


「なんと、ノーティス樣のご学友の方でしたか!」

「まあな。ちなみに、アンタはノーティスの何なんだ?」

「私は、ノーティス樣の執事『アステリア・ルミ』と申します!」


 ルミがそう言って丁寧にお辞儀をすると、キリトはチッと舌打ちして顔をしかめた。


「マジかよ……どーゆー訳か分かんねぇけど、マジで執事いるんだな」

「ホント、信じられないね」

「そうね。本当にありえないわ。あんなヤツが」


 その態度に、ルミはイラッとした顔を向ける。

 やはり最初感じた通り、良くない相手だと思ったからだ。


「何なんですかアナタ達は。ノーティス様の、元ご学友ではないのですか?」


 ルミにキッと睨まれたキリトは、顔を軽く横に向け、ルミを嘲るように見下ろす。


「ハンッ! あんな能無しと一緒な訳ねーだろ。なぁ、オルフェ」

「キリトの言う通りだよ。全くもって不愉快だな……」


 オルフェがやれやれのポーズを取りため息を吐くと、エリスがズイッと前に出てきた。

そして、胸の前で腕を組み、勝ち誇った顔でルミを見下ろす。


「そーよ。それに試験なんて受かりっこないんだし、今頃どっかで寂しく落ち込んでるんじゃない♪ アハッ」


 下卑た笑みを浮かべながらノーティスを嘲る3人に、ルミはメラメラと怒りが込み上げてきた。

 大好きなノーティスの事を、バカにされたからだ。


「アナタ達、いい加減に……」


 ルミがそう叫びかけた時、筆記試験の部屋からノーティスが出てきた。


「あっ、ルミお待たせ」


 今怒りを爆発させそうになってたルミとは対象的に、軽い感じで声をかけてきたノーティス。

 その瞬間、ルミはパアッと顔を明るくした。


「ノーティス樣♪」


 好きな人に会えた時の、条件反射のような物だ。


「ごめん、遅くなっちゃって」

「大丈夫ですけど、心配しましたよ! どこに行ってたんですか?」


 ルミが、会えた嬉しさと心配した感情を入り混じらせた顔でノーティスを見つめると、横からキリト達が下卑た笑い声をぶつけてきた。


「アハハハハッ! ノーティス、どーせ全然出来なかったんだろ。試験俺らでも難しかったもんな」


 そうやってバカにした顔で口を大きく開くキリトの隣で、横顔に侮蔑の表情を浮べ、蔑みの眼差しを向けたオルフェとエリス。


「そうだね。キミが頭を抱えた姿が、目に浮かぶようだよ」

「どーせ落ちたんでしょ♪ 早くその子に慰めてもらえばーー♪ ボク、試験難しくて出来なかったのーーって♪」


 キリト達はそう言って卑らしく笑い声を上げていたが、次の瞬間ピタッとそれを止めた。

 ノーティスの後ろから、ロウがスッと出てきたからだ。


「あっ! て、天才王宮魔道軍師ロウ樣!」


 キリト達がロウとの突然の邂逅に緊張して固まる中、ロウは彼らをサッと一瞥すると、ノーティスを見た。

 少し腹に何か抱えたような眼差しで。


「ノーティス、彼らは?」

「あっ、彼らは元クラスメイトです」

「そうか……」


 ロウはそう呟き少し黙ると、ノーティスを凛々しい瞳で見つめたままサッと右手を差し出した。

 一瞬で見抜いたからだ。

 キリト達はノーティスに対して、ディラードと同じような事をしてきた事を。


───少し、彼らにも分かってもらうとするか。


「ノーティス。筆記試験満点だっただけでなく、キミには色々驚かされたよ。これから宜しくな!」


 そう告げたロウの手を、ノーティスは少し照れながらも、凛とした瞳を向けたガシッと握る。


「はい! こちらこそ、特別講義ありがとうございました!」


 その光景を目の当たりにして、啞然とした顔で立ち尽くす3人の元クラスメイト。


「ま、満点って……」

「う、嘘だ……」

「どーなってるのよ一体……」


 また、彼らだけではなく他のクラスメイト達も啞然とし、逆に、ノーティスを知らなかった人達は、尊敬の眼差しでノーティスを見つめている。


「満点だと! あの試験を……」

「ヤバい、あの人超カッコいい」

「しかも、あのロウ様に認めて貰えるなんて何者なの? 凄すぎるんだけど」


 男からも女の子達からも、羨望と好意の眼差しを向けられるノーティス。

 けれど、ノーティスはまるで何事も無いかのように、顔色を変える事はない。

 人の評価なんて、コロコロ変わる物だと知ってるからだ。


 そんなノーティスはロウと握手を交わした後、そこから去っていくロウの背中に礼儀正しくお辞儀をすると、スッとルミの方を向いた。


「ごめんな、ルミ。試験はすぐに終わったんだけど、その後ロウ様から、特別講義受けて色々と話をしててさ」

「いえいえ、いいんです♪ それに特別講義なんて凄いですね! 一体どのような?」 


 軽く驚いたルミに、ノーティスは嬉しそうに話す。


「話すとちょっと長くなるけど、クリスタルの特性の活かし方と、色の変化についての最新の研究だよ」

「へぇ、それは面白そうですね♪」

「あぁ、流石ロウ樣だ。師匠と近い事を言ってたよ」

「えっ? あの方とですか」


 アルカナートの事を思い出したルミに、ノーティスは少し誇らしげな顔をした。


「うん。ロウ様も師匠の弟子だったんだ」

「ええっ?! ホントですか」

「そーなんだよ。師匠の事も色々話してくれてさ。まあ、師匠は昔から変わってないなって思ったよ。色々とさ」

「アハハッ♪」


 ルミが楽しそうに笑った時、ハッとした顔を浮べたノーティス。


「あっ、ルミ。そーいえば大丈夫だった?」

「何がですか?」

「ほら、あそこの三人


 ノーティスは、キリト達の方へスッと視線を向けた。

 それにつられルミもキリト達の方を見ると、言葉を失い立ち尽くしてこちらを見ている彼らの姿が目に映った。


「あっ……」


 彼らの事をすっかり忘れていたルミに、ノーティスは心配した顔を向ける。


「彼らからなんか言われたり、逆に、怒ったりしちゃわなかったか?」


 まるで、その場にいたかのような質問をしてきたノーティスに、ルミは顔を少し火照らし軽くうつむいた。

 洞察力もそうだし、何より自分を心配してくれるノーティスの気持ちが嬉しかったから。


「あっ、暴力は振るわれていませんが……その……ノーティス樣の事を嘲るような事を言ってこられたので、少し怒りそうになってしまいました……」


 するとノーティスは、優しく軽い溜息をついてルミを見つめた。


「そうか……ありがとうルミ。でも、怒らなくていいんだよ。ルミが怒ったって、彼らは何も変わりはしないから」

「えっ?」


 チラッと上目遣いで見つめてきたルミに、ノーティスは優しく諭すような笑みで告げる。


「人は色んな事を経験して大切な事を学んでいく。だから許してあげて。彼らはこれからなんだ」

「ノーティス樣……!」


 ルミが感動してノーティスを潤んだ瞳で見つめていると、キリトとオルフェが怒りに体を震わせ、怒鳴りつける。


「ふざけるなよノーティス! バカにしやがって。何かエラソーだな、オマエよ!」

「そうだよ。まるで、キミが俺達よりも遥か先にいるような言い方だ!」


 そんなキリトとオルフェにノーティスは何も言わず、ただどこまでも深く澄んだ瞳で見つめた。

 ただ、ノーティスのその瞳に当てられた二人は、何も言葉が出てこない。

 その瞳がまるで自分達の愚かさと小ささを、ありありと映し出すように感じてしまうから。


「ちっ……」

「くっ……」


 けれど、エリスはそんな二人とは違った。

 ノーティスに妖艶な笑みを向けて真正面からゆっくり近付くと、媚びたような声で告げてくる。


「ノーティス、ごめんねーー♪ 私、ノーティスがこ〜〜んなに凄い男だって知らなかった♪」

「エ、エリス。一体何を……?」

豹変したエリスに、ノーティスは何を思うのか……

次話はエリスにざまぁです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ