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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
118/251

cys:117 光のレクイエム

「アルカナート……」


 サガが狂気から目覚めた時、一番最初に映ったのは血にまみれた自分の剣。

 そして、肩から胸まで斬り裂かれ仰向けに倒れている、アルカナートの姿だった。


 サガはそこにそっと近づくと一目で分かった。

 アルカナートの身体に、最早命は宿っていないという事が。


 その姿を見たサガの胸に、悲しみと怒りが込み上げてくる。

 自分が狂戦士として剣を振り下ろしたあの瞬間、アルカナートがその刃をワザと受けた事を分かっていたからだ。


「うぐっ……!」


 サガはその場にドシャッとしゃがみこみ、アルカナートの身体を両手で抱きかかえた。


「アルカナートよ……俺を目覚めさせる為に、その身を犠牲にするとは……すまない。すまない、アルカナートよ!」


 アルカナートとへの感謝の気持ちと、ドロスに戦士の誇りを弄ばれた悔しさに嗚咽を漏らすサガ。


 その光景を魔法で外から見ていたドロスは、ニマァっと卑らしい笑みを浮かべ嘲笑う。


「クク……クククク……ヒーッヒッヒッヒッ♪ よくやった蛮族よ! よくぞ憎っくきアルカナートを討ち取ってくれた! これで私をバカにしてきたアルカナートは死に、ついでにあの蛮族も炎で焼け死ぬ。愉快愉快♪」


 ドロスはそう声を上げて小躍りしていたが、サガに抱きかかえられているアルカナートの姿を、再びジッと見つめた。


「アルカナートの奴め、あの蛮族を狂戦士から戻す為に、ワザとあの蛮族の刃を受けたというのか……下らん。最後に生き残るのは、戦士の誇りなんかではなく狡猾さよ。いくら綺麗事を言っていても、死ねばただの躯に過ぎん」


 そう吐き捨てたドロスだが、同時に違和感を感じた。


───ん? 待て、おかしい。何かがおかしいぞ……


 ドロスはその感じた違和感を整理し始めた。

 剣術は疎く、魔力と狡猾さでここまでのし上がってきたドロスには、感じた違和感をそのまま放置しておく事が出来なかったからだ。


───あの蛮族を狂戦士から目覚めさせたとしても、結局あの炎に焼かれて蛮族は死ぬ事になるのはわかってたハズ。なのに、なぜアルカナートは身代わりになってまで……ハッ、まさか!


 ドロスがハッとその答えに辿り着いたその時だった。

 ドロスの魔法で映し出されている炎のドームの中の映像が、突然強く光輝いた。


 サガの腕に抱きかかえられていたアルカナートの額の魔力クリスタルが、突然大きな眩い光を放ったからだ。


「こ、この光は!」


 ドロスは思わず片腕で顔を半分覆ったが、次の瞬間ドロスは腰を抜かした。

 死んだハズのアルカナートの顔に生気が戻り、斬り裂かれていた傷も完全に治っていたからだ。


 しかもそれだけではなかった。

 アルカナートは復活すると同時に、いつも通りのニヤリとした不敵な笑みを浮かべ、映像越しにドロスを見据えてきたのだ。


「ドロス、どうせお前の事だ。俺達の事を見ているんだろ。 だから光栄に思えよ。今の光は、これから死にゆくお前の為のレクイエムだ」

「わ、私に対するレクイエムだと?!」


 ドロスは突然復活したアルカナートに驚愕しながらも、頭をフル回転させて考えた。

 アルカナートから逃れる為に。


───どうする……? 復活したヤツは必ず私を殺しにくる。奴の放つ勇者の光があれば、あの炎のドームも破られるのは必須。そうなれば……イヤ、待てよ


 ドロスはそこまで考えた時に、ふと思い出した。

 それはアルカナートの復活に関わるモノ。

 そしてドロスはそれを思いついた時、焦りながらも活路を見出した事により、ニヤリと卑らしい笑みを浮かべた。


◆◆◆


 ドロスが下卑た笑みを浮かべている時、アルカナートはクールな表情で手を差し伸べていた。

 アルカナートが復活した事により驚愕し、その場に座り込んでいるサガに対して。


「サガよ、狂戦士の禁呪から目覚めたようだな」

「ア、アルカナートよ、礼を言う。ただ、俺が斬ってしまっておいて言うのも何だが、確かにお前は死んだハズでは……?」


 驚きを隠せないサガに向かい、アルカナートはニヤリと笑った。


「サガ、俺も禁呪を使ったまでさ。ただし、復活の為の禁呪だがな」

「復活の為の禁呪?」


 アルカナートは自分の額の魔力クリスタルを指さした。


「己の魔力と引き換えに、死んだ瞬間に生き返る事が出来る禁呪だ」

「なんと! スマート・ミレニアム軍はそんな事が出来るのか?」


 サガは驚きと羨望の眼差しをアルカナートに向けたが、アルカナートは軽く首を横に振った。


「いいや、全員が出来る訳じゃない。勇者の光を持つ者のみの技だ」

「と、いう事は……」

「その通りだ、サガ。これは俺の専用の禁呪だ」


 サガにそう答えると、まるでドロスがそこにいるかのように虚空を向きニヤリと笑った。


「ドロスよ。俺の前で禁呪ベルセルクを使った事が、お前の敗因だ。策を弄しながらもこれを見抜けねーとは、やはり間抜けなヤローだ。覚悟しやがれ……!」

剣聖の光が闇を照らす……!



次話はドロスの卑劣さが加速します。

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