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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:114 サガの無双と焦るドロス

「死ね!」

「この薄汚い蛮族めが!」


 サガに襲いかかるドロスの部下達。

 

 しかしその直後、バシュバシュバシュッ! という風を切る音と共に、ドロスの部下達はその場に倒れた。


「なっ?!」


 驚き目を丸くしたドロスの事を、シドの父親は憤怒と覚悟を込めて睨みつける。


「貴様ら、ふざけるのも大概にしろ。アイツらには決して近寄らせん。ここを通りたくば、死を覚悟して挑んでこい!」


 再び剣を構えたサガに、ドロスはニヤッと嗤った。

 

「ハハハッ、多少はやるようだが、これだけの数を前にオマエ1人で防ぎきれる訳がなかろう。死を覚悟するのはオマエだ」


 ドロスは多数の部下を従えシドの父親を侮蔑の表情で見下したが、シドの父親の眼光は衰えない。

 魔力クリスタルが無くても、サガの瞳は決意と共に輝いている。


「フン、笑わせるな。死の覚悟など、父親になった時から常に出来ている。ただ、易々とやられはしない。オマエ達はここで止める! このトゥーラ・レヴォルトの戦士『アルベルト・サガ』の命に代えてもな!」


 サガはスマート・ミレニアム軍に向かい決意放つと同時に、右手を天空にかざし詠唱を行う。

 自らの力を最大限に引き出し、大切な者を守る為に。


「神獣と(いにしえ)の神々達、我に力を与えよ!!」


 サガの髪が逆立つと同時に体には呪符が浮かび上がり、左の瞳が蒼く輝く。


「オォォォォォォツ! さあ、かかってこい!!」

「うっ……」

「くっ……!」


 咆哮を上げてスマート・ミレニアム軍に向かい合うサガのその姿に、彼らは一瞬怖気づいた。

 しかし、そんな彼らにドロスは激を飛ばす。


「怯むな! 所詮奴は一人だ! 数の利はこちらにある。取り囲んで一斉に攻撃をしろ!」


 そう命じられたドロスの部下達は、即座に三角形の形にサガを取り囲んだ。


「終わりだ。この三点同時からの陣形に死角は無い」


 けれど、サガは彼らがそう告げるやいなや、あっという間にその内の一人にザッと近づき一瞬で首を()ねる。


 バシュッ!


「えっ……あっ。ガハッ!」


 それを見て残りの二人は驚きと恐怖に震えた。


「なっ? バカな! 早すぎる!」

「動きすら目に止まらん!」


 サガ彼らのその隙を見逃さず、他の二人も一瞬で片づけていく。

 反撃の隙すら与えずに。


 ザッ!


「ぐあっ!」


 バシュッ!


「うぐっ!」


 そしてサガは彼らの屍を背に、ドロスの顔を強き戦士の貌で見据えた。


「どうした、ドロスとやら。数の利があるんじゃなかったのか?」

「おのれ……蛮族めが!」

 

 悔しさに歯をギリッと食いしばったドロス。

 元々サガの事を蛮族だと思っている上に、サガのようなタイプが嫌いだからだ。


───気に喰わん! しかも、あの凛と澄んだ瞳はまるで……


 「えぇーい、お前達。剣と魔法の同時攻撃でいけ。魔法で動きを鈍らせた隙に、剣で止めを刺すのだ!」

「はっ! かしこまりました」


 ドロスに激を飛ばされた部下達は、再びサガに向かい剣を構えて態勢を整えた。

 また、魔法部隊は詠唱を終えると、サガに向かい炎を放つ。


「スフィア・インフェルノ!」


 サガはその炎を真っ直ぐ見据え、一刀両断に叩き斬る。


「ハッ!」


 だがその直後、氷の飛礫(つぶて)が襲ってきた。


「エクサ・ミュエルザーチ!」

「くっ……!」


 サガはそれを何とか防いだが、一瞬にして足元を凍らされ身動きが取れなくなってしまった。

 それをドロスは逃さない。


「今だ! 一斉にかかれ!」


 ドロスは勝ちを確信し、勝ち誇った顔で彼らに命令した。

 しかしその直後、彼の表情は一変した。

 サガが足元の氷を一瞬で砕き、襲い掛かったスマート・ミレニアム軍の戦士達を一瞬で薙ぎ払ったからだ。


「させんっ!」

「ぐわぁぁぁぁぁっ!」


 それを見たドロスは驚きと怒りに顔を歪め、恨めしくサガを睨んだ。


「くっ、この蛮族め……強い!」


 ドロスがそう零し周りを見ると、残りの人数はもう少なくなっていた。

 サガのあまりの戦力に戦慄を禁じ得ない。


「バカな……我らスマート・ミレニアム軍の戦士達が、こんなたった一人の蛮族に……」


 ドロスは怒りと共に部下に檄を飛ばす。


「ゆ、許さん! お前達、何としてでもこの蛮族を倒すのだ!」


 けれど、残りの部下達はサガのあまりの強さに立ちすくみ、ドロスに懇願してくる。


「ドロス様。恐れながら、ヤツの強さは尋常ではありません。もう撤退しましょう!」

「バカを言うな! 例え公式な戦でなくとも、こんな蛮族1人に退いたとあってはスマート・ミレニアム軍の名折れだ!」

「し、しかし……!」


 サガはそんな彼らがいたたまれなくなり、構えていた剣をスッと下に下げると、精悍な眼差しでドロスを見据えた。


「ドロスとやら、オマエの部下達の言う通りだ。もう退け。これ以上の無益な殺生は好まん。俺は大切な者を守れればそれでいい」


 サガの言った事は最もな事だし、力の差を見極めるのも戦では大切な要素だ。

 しかしドロスは、屈辱から生まれる恨みの籠った目でサガを睨みつけた。


「な、な、舐めるな! この蛮族めが!」


 それを受けて軽く呆れたサガ。


「フゥッ。だったらせめて、嫌がる部下に命令するんじゃなく、オマエ自身でかかってきたらいい」

「わ、私自らが? それは……」


 ドロスは自分ではサガに勝てない事が分かっていた。

 少なくとも、真正面から戦えば負けるのは必死。


「う、ううっ……」


 冷や汗をダラダラと流していると、突き刺さってくる。

 部下達からの冷ややかな視線が。


───こ、コイツら……!


 ドロスは部下達の冷たい視線とサガの言葉に挟まれ、半ば自暴自棄気味に決意する。


「わ、分かった! 私がいこう」


 その瞬間、ドロスの背後から強大なオーラと共に、精悍で自信に満ち溢れた声が響いてきた。


「よぉドロス。お前にしては、なかなか頑張って決断したじゃねぇか!」

「ハッ! アナタは……!」


 その声に振り返りったドロスに、男は言葉を続ける。

 ニヤリと不敵な笑みを浮かべて。


「その意気や良し。と言いたい所だが、命をムダに捨てるのは蛮勇だ。勝てない相手から逃げるのは悪い事じゃない。後は俺が引き受ける」


 そう告げられたドロスは、畏れと共に歓喜の声を上げた。


「アルカナート様っ!」

出会ってしまった2人の勇者……!



次話はアルカナートがドロスをざまぁします。

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