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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:110 ルミの復活

「そーですよ、ノーティス様。全部自分でお抱えになる所は、ノーティス様の悪い癖です♪」


 その声にハッ! としてノーティスが後ろを振り向くと、そこには自分に向かい、エレナの隣でルミが微笑んでいる姿が。

 もちろん寝巻き姿ではなく、いつものピシッとした執事服に身を包んでいる。


「ルミっ!」


 ノーティスがルミの方へ身体を振り向け嬉しそうな顔を浮かべると、ルミはノーティスにツカツカと歩み寄りグイッと身を乗り出した。

 そして、ちょっと怒った可愛い顔でノーティスを見上げる。


「私もメティアさんもノーティス様を大切に想っているの、分かっていないんですか? どーなんです?」

「うっ、いや、それは……」

「ちゃんと答えて下さい」


 いつも通りの微笑ましい光景に、エレナも一瞬笑みを浮かべ乗っかっていく。


「そーだよノーティス。私だってそうなんだからね」

「エレナ……」


 ノーティスは、参ったなという顔をして片手で頭をクシャッと掻くと、ルミを真っすぐに見つめた。


「分かってるに決まってるだろ」

「ですよね」

「ああ、当然だ」

「じゃーーーなんで置いてこうとしたんです」

「うっ……!」

「どーせノーティス様の事ですから、寝てる私にそっと別れを告げて、お一人で行こうとか考えてたんですよね」

「な、なんでそれを」


 まるで、超能力でも使われたかのように完全に見抜かれドキマキするノーティスに、ルミはニコッと笑った。


「当り前じゃないですか。私は、ノーティス様の執事ですから♪」

「ルミ……なんかそのセリフ、凄く久しぶりに聞いた気がするよ」

「それはそうですよ。私とノーティス様、入れ替わりで倒れてたんですから」

「フッ、そうだな。でも安心したよ。ルミが元気になってよかった」

「それはノーティス様達のお陰です。ありがとうございます♪」


 ルミはメティアとエレナに振り向き笑顔で会釈をすると、再びノーティスを凛とした瞳で見つめる。


「ですのでノーティス様、私達も一緒に行きますからね」

「……う、うん。分かったよ」


 ちょっと照れながら口を尖らせたノーティス。


「分かって頂ければいいんです♪」


 そう言ってニコッと笑うと、メティアがルミに微笑んだ。

 ルミが元気になったのも嬉しかったし、最近ずっと戦いばかりだったので、こういうほのぼのした光景が嬉しかったから。


「さすがルミさんだね♪ 病み上がりとは思えないよ」

「メティアさんのお陰です。それにノーティス様は、すぐこういうご勝手されますから、いつまでも寝てられませんし」

「アハハッ♪ 確かにそーだね」


 メティアが楽しそうに笑う中、エレナは軽く微笑みを浮かべてルミに言う。

 まるで、その場にいるのが申し訳なさそうな雰囲気だ。


「お姉ちゃんがいない間、家の事はちゃんとしておくから♪」

「エレナ……!」


 ルミが少しハッとした顔をすると、エレナはちょっと切なそうにみんなを見つめる。

 エレナは分かっているからだ。

 ルミやメティアと違い、自分はそこに行くにはそぐわないという事が。


 その気持ちを察しエレナを切なく見つめるルミとメティアだが、ノーティスはそんなエレナをジッと見つめた。


「エレナ、家の事はいい。キミも一緒に来てくれ」

「えっ、だって私は……」

「キミだって、いつも俺を大切に想ってくれてるじゃないか」

「ノーティス……!」


 エレナは思わず涙が零れそうになった。

 ノーティスが同情や気を使ってではなく、本心でそう言ってくれてるのが伝わってきたから。

 でも、だからこそニコッと笑って舌を出した。


「べーーーっ、分かってないなぁ♪ もし私まで言っちゃったら、その間にレイ様達が訪ねてきた時とか、どーするつもりなの」

「あっ……まぁそれはだな……」


 言葉を詰まらせたノーティスに向かい、エレナは再びニコッと笑い首を可愛く横に傾けた。


「でしょ。だから私はここに残るから」

「分かった……じゃあ、留守の間よろしく頼むよ」

「任せてっ♪」


 エレナは、ノーティスが自分の事を大事な場面に誘ってくれただけで、充分嬉しかったのだ。

 そんなエレナをルミもメティアも優しく見つめると、ノーティスに凛とした瞳を向けた。


「ではノーティス様、明日の朝、セイラ様にご連絡してから向かいましょう」

「ああ、そうだなルミ」

「ボクはセイラさんに会うの初めてだから、緊張するなーーー」

「大丈夫ですよ、メティアさん。セイラ様は気さくでお優しい方ですから。ですよね、ノーティス様」


 ルミは明らかに同意を求める眼差しを向けたが、素直なノーティスはまた余計な事を言ってくる。


「うん、でも最初ルミは喧嘩したけ……」

「ゴホンっ!」


 その咳払いに、ここは余計な事を言ってはいけないと察したノーティス。


「ああっ、大丈夫だメティア。へーき、へーき」

「ですよね。ノーティス様」


 と、まあこんな感じでルミも目を覚まし、いつも通りの景色が戻ってきた。


 けれど、ノーティス達は分かっていなかった。

 ここから途轍もない運命の大きなうねりが、自分達を待ち構えている事を……!

運命は良くも悪くも完璧なタイミングで訪れる……



次話はセイラから話を聞いた後、あの男が登場します。

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