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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:109 涙の訴え

───えっ? セイラってノーティスの……!


 メティアは何か胸騒ぎがした。

 セイラの事は昔ノーティスから聞いた事があるし、アルカナートが率いていた伝説のパーティのメンバーの1人だと知ってるから。


 なので、このタイミングで連絡が来た事に、ノーティスもメティアも何か言いようのない予感を感じてしまう。

 

 また、セイラはいつもの明るく元気なテンションではなく、ノーティスのその予感を裏付けるかのような切ない声のトーンだった。


 そんなセイラに、ノーティスは静かに尋ねる。


「セイラ、別にいいけど急にどうしたんだ」

「ん……ちょっと近い内に会えないかな。出来ればここ数日以内に」

「数日以内?」

「うん。ちょっと、直接会って話したい事があるの」


 普段なら、もっとおちゃらけた雰囲気を出してくるセイラだが、今はそれが無かった。

 なので、よっぽど大切な事なのだと直感的に悟ったノーティスは、思わず真剣な顔になってしまった。


「かまわないよ。ただ、ルミの体調が戻ってからにしてほしい」

「ルミちゃんが? あの子に何かあったの?!」


 セイラが本気で心配している声が伝わってくる。

 ルミとは以前一度会ったきりだが、その時に2人は凄く意気投合していたからだ。

 後は元々セイラが持つ、女神のような愛がそうさせるのだろう。

 

「いや、ただ疲れて眠ってるだけさ。俺が戦いの後しばらく寝たままだったから、その看病で疲労が……」

「そっか……お互いに大変だったね。ノーティスはもう大丈夫なの?」

「あぁ、俺は、もう大丈夫だ」

「よかった♪ じゃあ、ルミちゃんが回復してからでいいよ」


 少し声が明るくなったセイラ。

 今日はもう、これ以上本題には入らないからだ。


「すまない、セイラ」

「ヘーキよ。それに、ルミちゃんはノーティスの彼女なんだから大切にしなきゃね♪」

「ち、違うって」

「えっ、もしかしてまだ付き合ってないの?」

「まだってセイラ、なんでそういう前提なんだよ」


 少し顔を赤くしたノーティスに、セイラは魔力ポータルの向こうで軽く溜息をついた。


「まったく、ダメよノーティス。あんまり待たせ過ぎたら」

「いや、それについては色々あって……まっ、また今度話すよ」

「ふーーん……怪しぃ~~~」

「うっ……」


 ちょっと言葉に詰まったノーティス。

 さっきルミの気持を聞いてしまってる分だけに、セイラの言葉がより刺さるのだ。

 けれど、セイラはそんなノーティスの気持を全て察したかのように微笑んだ。


「まっ、いいわ。その件も今度一緒に聞かせてね♪」

「まぁ、何か進展があれば……ね」

「はーーい♪ じゃあ連絡待ってるね」

「分かった……」


 そう言って魔力ポータルの通信を切ろうとした時、ノーティスは思わずセイラを呼び止めた。


 「セイラ!」


 セイラならきっと、何かを知ってると思ったから。


「ん? どうしたの」

「いや、セイラ……」


 でも、ノーティスはそこまで言って言葉を変える。

 今度直接会った時に尋けばいいし、何よりセイラが今度自分に話したい事が、正にそれのような気がしたからだ。


「今日は声を聞けて嬉しかった。ありがとう」

「なによも~~~ノーティス、改まっちゃって。私の方こそ声聞けて嬉しかったよ♪ それだけ?」

「うん……」

「そっか。じゃあまたね♪」


 セイラはそう告げ笑顔で通信を終えると、フゥッとため息をつき切なくうつむいた。


「アルカナート……貴方がいないから、ノーティスに伝えるね。あの日の事」


 セイラがそう零した時、メティアは心配そうにノーティスの顔を覗き込んだ。

 ノーティスの顔は辛辣そうだったから。


「ノーティス……セイラさんは何て?」


 メティアにそう尋ねられたノーティスは、軽くうつむいたまま答える。


「セイラが話があるらしい。近い内に会いに行く事になった」

「えっ、もしかしてそれって……」

「あぁ。多分これに関係している事だ」


 ノーティスがそう答えた時、メティアはハッとして目を大きく開いた。


「じゃあ、もし本当にそうだとしたら……!」

「そう、きっと師匠も以前何か掴んだんだ。それをセイラは聞いているんだ。もしかしたら、今俺が考えてる以上の事を……!」


 その時メティアは見つめていた。

 まるで、先にある悲しい真実を見据えているかのような、ノーティスの精悍な横顔を。


 それを見ていいようのない不安に襲われたメティアは、ノーティスに訴えるような眼差しを向けた。


「ノーティス、それならボクも一緒に行くよ!」

「メティア……」


 ノーティスはメティアの方へ少し寂し気な表情を向け、少しうつむく。


「気持ちは嬉しいけど、俺一人で行く……!」

「なんで?!」

「メティア……俺はキミを巻き込みたくないんだ」

「ノーティス……」


 メティアは哀し気に見つめているが、ノーティスはうつむいたままだ。

 ノーティスには分かっているのだ。

 この闇が途轍もなく深い物である事が。


「だから、これは俺一人でいい。俺は勇者としてメティア達を必ず守る」

「ダメだよノーティス。ボクも一緒に背負うよ!」

「いい。俺は勇者である以上……」

「ノーティス、違うよそれは……」

「違わない。メティア、俺は……」


 ノーティスがそこまで言いかけた時、メティアはギュッと拳を握りしめた。


「ノーティス! いい加減にしてよ!!」


 その叫びに、ノーティスはハッと顔を上げて見つめた。

 涙を滲ませ身体を震わせているメティアを。


「メティア……!」

「ノーティス……うぅっ……なんで、なんでそんな事言うんだよ! ボクはキミの仲間じゃないの?! どうして、全部自分で背負い込もうとするの……ボクはキミの事をずっと大切に想ってるんだよ……!」


 メティアがそう言って涙を零した時だった。


「そーですよ、ノーティス様。全部自分でお抱えになる所は、ノーティス様の悪い癖です♪」

この声は、ようやくお目覚めに……!



次話は久々のルミらしさが炸裂です。

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