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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第2章 波乱のギルド検定試験
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cys:11 王宮魔導軍師『アルカディア・ロウ』

「インチキだ! そんな事、出来るハズがない!」


 大声でそう叫んだのはディラードだ。

 ノーティスを怒りの眼差しで睨みつけている。


 さっきの事に引き続き、ノーティスが自分よりも遥かに早く解答した上に、満点を取ったなんて許せないからだ。


「この野郎……!」


 ギリギリと歯を食いしばるディラード。


───それに、ロウ様からあんな風に名前を覚えてもらうなんて、あの野郎ーーーーーーふざけやがって!!


 そんな怒り狂うディラードに、ロウは哀しい眼差しを向けた。


「インチキか。キミはなぜそう思う?」

「ロウ樣。恐れながら、彼は学校を退学させられた奴なんです!」

「退学? そうなのか……」


 それを聞いたロウは驚きに目を丸くしながらも、むしろ興味深そうな顔でノーティスを見つめる。


「ノーティス、彼の言ってる事は本当なのか?」

「……はい。インチキはしてませんけど、退学させられたのは本当です」

「フム、そうか……でもなぜだノーティス? キミのような、とてつもなく優秀な子が」


 すると、ノーティスが答えるよりも早くディラードが意気揚々とした顔で、ノーティスを指差した。


「コイツは、無色の魔力クリスタルの落ちこぼれだからです!」


 それを聞き、ノーティスの顔をジッと見つめたロウ。


「ほう……確かにそうだな。無色の魔力クリスタルとは珍しい。まあ、感染防止と学校の名誉の為に退学させられたのだろうな」

「そうです。だから、そんな奴があんな早く、しかも、満点なんて取れるハズないんです!」

「フム……」


 ロウが軽く顎に手を添えて考える中、ディラードはここがチャンスだと言わんばかりに、更に下卑た顔をして訴える。


「そう、きっとカンニングでもしたんですよ。そんな事したって、どーせ知識の使い道なんかないのに!  ヒャハハッ!」


 ディラードがノーティスを嘲りながらそう告げると、ロウは顎から手を離しハァッと溜息をついた。

 そして、ディラードに哀れむ瞳を向けて問う。


「キミ、名前は?」

「エデン・ディラードです」

「ん? エデンだと。もしかして、ノーティスの兄弟か?」

「まあ、一応。元ですけど……」


 ディラードが不機嫌そうに答えると、ロウはディラードに哀れむ瞳を向けたまま、残念そうな顔を浮かべた。


「フゥッ……何やら事情がありそうだが、兄弟でこうも差が出るとはな」

「ど、どういう事ですかっ?!」


 侮辱されたと感じ、怒りに顔をしかめたディラード。

 ロウはそんなディラードに、お前はバカかという顔を向けて話をしていく。


「キミは本当に分からないのか? 一番早く満点の解答したノーティスが、一体どうやってカンニングを出来る?」

「あっ……」

「それにだ、この会場には不正防止の為の結界が張られている」


 ロウはそこまで言うと、ディラードの事を少し強く見据えた。


「となると、後考えられるのは、私がノーティスと共謀して、ズルをしていた可能性に絞られる。ではディラード。私が何の為にそれをするのか、教えてくれないか?」

「うっ……そ、そんなつもりは……」


 ロウに完膚なきまでに論破され、全身にぐっちょり汗をかいているディラードに、ロウはトドメを刺すような言葉を投げかける。

 慧眼な瞳に静かな怒りを宿して。


「ディラードよ。キミこそ、本当に学校に通っていたのか?」

「なっ……!」

「申し訳ないが、キミの発言と、兄弟に対する愛や敬意の欠片も感じられない言動。ここに来るのは、キミにはまだ早すぎるように思えてならない」

「あっ……うっ……」


 もはや何も言う事が出来ず、恥辱と絶望に全身が固まっているディラードを、ロウは精悍な瞳で射抜く。


「だがディラード、キミの名前は覚えた。優秀なエデン・ノーティスの哀れな兄弟、エデン・ディラードとして」

「あぁぁ……あっ……」


 全身から冷や汗を流し真っ青な顔をしたまま、へたり込むように椅子にストンと腰を落としたディラード。

 当然、試験問題を解くどころか、ペンを持つ気力さえも消え去っている。


「うっ、あぁっ……」


 だがロウは許さない。

 天才魔道軍師であるロウは、これまでの短いやり取りの中で瞬時に全て見抜いたからだ。

 二人の関係性と、ディラードがノーティスに何をしてきたかを。


「ディラード。キミはまだ試験を受ける気なのかい? まあ私は別に構わないが、正直、出直してきた方がいいと思う。ここでの知識、今のキミが使える場所はどこにも無い」


 ロウに完全にやられたディラードは、まるで最後のエネルギーを爆発させたかのように椅子から勢いよくガタッと立ち上がると、ロウとノーティスをキッと睨みつけた。


「もういい!!」


 そして、すぐに二人に背を向けツカツカと出口に向かってゆくが。ロウは一瞬ニヤリと笑ってからディラードの背中に言葉をぶつける。


「ちなみに、ご両親には言わない方がいい。ここでの会話は全て私の魔力クリスタルに録音されている。訴えてもいいが、負けて恥をかくのはキミとキミのご両親だ」

「えっ……えっ?」


 顔を振り返らせ、不安に顔を引きつらせるディラードに、ロウは精悍な瞳を向け話を続けてゆく。


「またその場合、私も名誉毀損で訴えを起こすが、私はこれでも王宮魔導軍師だからな。それ相応の賠償額になる」

「あっ……あっ……そ、そんな……!」


 自分がしようとしていた事を見抜かれた挙げ句、それが全く意味の無いモノだと悟り更に絶望するディラードに、ロウはニコッと微笑んだ。


「キミが一生かけて賠償金を払う覚悟があるなら、好きにしたらいい。ただし……私はご両親ではなくキミに請求する!」

「うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁぁっ!!」


 ディラードは泣きながら大声で叫び、そのまま部屋から逃げ出すように飛び出していった。


 ロウは、その姿を見てやれやれのポーズを取りながらハァッと溜息を吐くと、皆に軽くすまなさそうな顔を向けた。


「すまない、皆の邪魔をしてしまった。今の分は延長するから、各自試験に戻ってくれ」


 そして、ノーティスの方を向くとニコッと微笑んだ。


「ノーティス。キミはちょっとこっちに来てくれ。話がある」

ロウは何を思うのか……

次話は、久々にアイツらが登場します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ロウさん、良い仕事してますね。 ティラードは典型的な小物ですね。 これで少しは懲りて欲しいんだが……。 やっぱりざまぁや主人公の成り上がり物語は 読んでいて楽しいです♪ 面白かったので、ポ…
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