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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:108 真実への葛藤

「ノーティス、どうしたの……」


 星空を見つめているノーティスの背中から、そっと声をかけたメティア。

 いつものように明るく声をかけなかったのは、ノーティスの背中からなぜか儚げなオーラを感じたからだ。


───さっきまで、あんなに元気だったのに。


 そう思って見つめていると、ノーティスはメティアにスッと振り向いた。


「メティア、まだ寝てなかったのか」

「うん、何となくね」

「そうか。メティア、手伝ってくれて本当に嬉しいけど、無理はし過ぎるなよ」

「ありがとう♪ ノーティス。でも、キミの方が何か無理してないかな」


 メティアから見つめられたノーティスは、一瞬ハッとした表情を浮かべたが、すぐにいつものようにフッと笑みを零した。


「別に、そんな事は無いさ」


 けれどメティアには通用しない。


「……アネーシャが言ってた事、考えてたの?」

「メティア……!」


 ハッとして目を開いたノーティス。

 それをメティアは静かに見つめる。

 するとノーティスは、ハァッ……と軽くため息を零し、メティアに切ない笑みを向けた。


「まったく、メティアに隠し事は出来ないな」

「当たり前でしょ♪ ボクはいつもキミを見てるんだから」


 そう言ってメティアも少し切ない笑みを零し、ノーティスを包み込むような優しい瞳で見つめる。

 ある意味、分かり過ぎてしまうのが辛いと思うぐらい、メティアはノーティスの心を大切に想っているから。


 そんなメティアの愛に当てられたノーティスは、隠す事をやめた。


「メティア、いつもありがとう」

「ううん。ボクが好きでしてるんだから気にしないで♪」

「けど、そんなキミに俺はいつも助けてもらってる。あの冷たい雨の日も、アネーシャと戦った時も」

「それはお互い様だよ。ボクだって助けてもらってるし、ノーティスの側にいれて幸せだよ♪」


 そう言ってニコッと笑ったメティアに、ノーティスも嬉しそうに微笑むと、言いにくそうに悩んだ顔を浮かべた。


「メティア……アネーシャと戦った時言った通り、俺はメティア達の事を必ず守る。けど……」


 そう言って言葉を詰まらすノーティスを、メティアは黙ったまま見つめている。

 そしてそんな中、ノーティスは絞り出すように声を震わす。


「俺は……俺達は、間違って……いるのか!」

「ノーティス……」

「アネーシャとの時だけじゃない。シドの時も感じた……」


 ノーティスの脳裏に蘇るあの時の記憶。


『守る? 守るだと? 貴様は……貴様らは、この俺達からどれだけのモノを奪ったと思っている!!』

『やはり、偽りの光と歴史に(まみ)れた国の者には、何も見えていないようだな』


───シド……!


『ノーティス。アナタは今から100年前……本当にこの世界に悪魔、カターディアが現れたと思っているの?』

『本当にカターディアからの呪いの感染防止の為に、魔力クリスタルが必要になったと思ってるの?』

『……どうせ言っても信じもしないし、分からないわ。クリスタルの輝きという偽りの光に目を眩まされ、何も見えない……いえ、何も()()()()()()()()アナタ達には!!』


───アネーシャ……!


 ノーティスはシドとアネーシャの言葉が、ずっと胸に突き刺さっている。

 もちろん、その時唯一側にいたメティアもだ。

 ノーティスが戦っている時は、騙されないで! と、強く叫びノーティスを応援したが、メティアもずっとそれは心に残っている。


 また、スマート・ミレニアムではシドやアネーシャの国トゥーラ・レヴォルトの事を、悪魔に支配された蛮族の国というが、少なくともシドとアネーシャは決して蛮族などではなく、むしろ、気高く誇り高い戦士の誇りを持っていた事も分かっていた。


 だからこそメティアは、ノーティスの気持ちが痛いほどよく分かるのだ。

 彼らが言っていた事が正しいのであれば、自分達は一体何の為にここまで戦い、そしてここから戦おうとしているのか?


 その問いがノーティスの胸を、いや、まるで魂ごとギュッと締付けてくる事を……!


 そんな切なさと悔しさ、どうしようもない葛藤を抱えうつむくノーティスを、メティアは哀しげに見つめている。


「ノーティス……間違ってるって、どういう意味」

「それは……」


 ノーティス自身が一番言いたくなかった。

 言葉にしてしまうと、それを本当に認めてしまいそうになってしまうから。


───でも、ハッキリさせないと俺は……!


 心でそう零すとメティアを真摯な眼差しで見つめた。


「メティア、俺はこの目で確かめたい。真実が一体何なのかを……!」


 ノーティスから純粋で儚げなオーラを感じたメティアは、ハッ! と目を見開き哀しげな瞳で零す。


「ノーティス、まさかキミは……」

「あぁ、俺はもう一度ティコ・バローズへ行く」

「ティコ・バローズへ?」


 てっきり、ノーティスが単身でトゥーラ・レヴォルトに乗り込むんじゃないかと思ったメティアは、予想外の答えに驚き目を丸くした。


「なんでまたあそこに行くの?」


 メティアがそう尋ねた時、ノーティスの魔力ポータルが振動した。


───誰だ?


 そう思ったノーティスは、着信の相手を見てハッとし、それを数旬見つめた後メティアに断り応答ボタンを押した。


「ノーティス、ごめんね。こんな時間に」

「構わないよ……セイラ」

このタイミングでの連絡……!

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