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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:106 託されたルミ

「えっ、帰るってなんで急に……」


 思わずそう声を漏らしたルミの側で、エレナもビックリした。

 メティアが言った言葉が、全く予想外の物だったからだ。


「そーだよ。ノーティスが今起きたばっかりなのに……」


 ルミもエレナも、なぜメティアが急にここで帰ると言い出したのか、本当に分からない。

 むしろ、メティアの涙で目をノーティスが覚ましたのなら、自分がノーティスに一番愛されてるんだ。と、誇ってもいいのにとさえ思っている。


 けれど2人がそう思う中、メティアはルミにスッと近づくとルミをギュっと抱きしめた。

 そしてそのまま、微笑みと共に囁く。


(ルミさん、ノーティスの事よろしくね)

(えっ? メティアさん、なんで……)


 急にそう告げられ目を丸くしたルミに抱きついたまま、メティアは切なく微笑む。


(だって、ルミさんずっと寝てなかったし、食事も取って無かったでしょ)

(な、なんでその事を……)

(ボクはこれでも特級ヒーラーだから、見たら分かるよ。ルミさん寝ないで、ノーティスの事を看てたんだなって……)

(メティアさん……)

(だから、ルミさんになら……ボクの大好きなノーティスを任せられるよ)

(うっ、うぅっ……メティアさん)

 

 ルミはその瞳から大粒の涙をボロボロ零した。

 メティアのノーティスへの愛と、それを自分に託してくれる切なく大きな愛に。

 また、それが聞こえてしまったエレナも涙を零している。


「な、なによそれ……ズルいよっ……」


 するとメティアはルミからスッと身体を離し、ルミにニコッと微笑んだ。


「じゃあ、またねルミさん」


 そして、ベットから自分の方を見つめているノーティスの所へ行くと、ハンカチをスッと差し出した。


「ノーティス、ごめんね。またグチャグチャにしちゃって」

「かまわないさ。でも、今ルミと何を話してたんだ」

「へへっ♪ それはルミさんから聞いて」

「えっ、なんで」

「いーーから♪ じゃあまたね、ノーティス」


 ニコッと笑ったメティアに、ノーティスはちょっと肩透かしを喰らったような気になった。


「あっ、あぁ。もう少しゆっくりしていかないのか」

「そうしたいんだけど、今日はもう……」


 メティアがそう言いかけた時、エレナが悲壮な声が部屋に響く。


「お姉ちゃん!!」


 その声にノーティスとメティアがハッと振り向くと、そこには倒れたルミを抱えるエレナの姿が。


「ルミっ!」

「ルミさん!」


 ノーティスとメティアはサッと駆け寄り、ルミの顔を覗き込んだ。

 特にノーティスは必死な顔でルミを見ている。


「ルミどうした! しっかりしろ!」


 するとエレナがノーティスに向かい、シッ! とポーズを取り片目を瞑った。


(ノーティス、静かに)

「な、どういう……ハッ、まさか」

(そう、お姉ちゃんずっと寝てなかったの)


 ノーティスはホッとして大きく息を吐くと、ルミの身体をスッと抱きかかえ、ルミの寝顔を愛おしく見つめながら歩き出した。

 ルミを部屋まで運んで行く為に。


 そして部屋まで辿り着くと、ノーティスはルミをベットにそっと寝かせた。

 エレナは切なく、それを見つめる。


───ノーティス、まるで王子様みたいね。それに、お姉ちゃんはお姫様か……


 エレナが心でそう零す中、ノーティスはルミの手をそっと握った。

 ルミに申し訳ない気持もあるがそれ以上に、こんなになるまで自分を看てくれたルミが、ただただ愛おしいのだ。


───ルミ。キミにはいつも、助けてもらってばかりだな……


 ノーティスはこれまでの事を振り返り、ルミの手をよりギュッと握った。


「今度は俺がキミを看る」


 するとそれを見たメティアがハァッと、軽くため息を漏らした。


「あーーーもうそれじゃあ、今度はまたノーティスが倒れての入れ替わりじゃん」

「メティア……」

「大丈夫ですよメティアさん、私もいるし」


 エレナがそう言うと、メティアは2人を見て優しく微笑んだ。


「そーゆー訳にはいかないよ。だって、エレナさんが寝てる時、ノーティスはちゃんと出来るの? 病み上がりなのに」

「別に、問題ないさ」

「あるよ。だって、ノーティスの身の周りの事は、いつもルミさんがやってくれてるんでしょ」

「まっ、まあそーだけど……」


 バツが悪そうな顔を浮かべ、ノーティスは片手で頭を掻いた。


 看たい気持ちとは裏腹に、確かに身の回りの事は全部ルミにやってもらっていたので、ルミを看るどころか自分の事も出来るか怪しい。

 メティアはそれを分かっていたので、敢えてノーティスに言ったのだ。


「だからノーティス、無理しないで。人には得手不得手があって当然なんだから♪」

「メティア、それ、昔ルミからも同じ事言われたよ」

「アハハッ♪ さすがルミさんだね」


 メティアはそう言って笑うと、エレナをチラッと見た。


「じゃあエレナさん、一緒に美味しいご飯を作ろう♪」

「えっ?」

少し吹っ切れた感じのメティアと、貴重な穏やかな時間……



次話は2人のお料理対決にノーティスが付き合います。

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