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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:105 メティアの愛

「ノーティス様……♪」


 ドキドキしながらルミは顔を近づけるが、それに気づいているノーティスも心臓がバクバクだ。

 頭も心もフル回転。


───いいのか? いや、むしろこれはチャンス? いや、そんなんルミを騙すみたいだ。いやいや、でもこれを逃したら告白するしか無くなるぞ。いいのか、俺の立場でそれをして。でも……ああ、ダメだ……もう耐えきれん。起きちゃおう!


 そう思いノーティスが目を開けようとした瞬間、家のインターホンが鳴った。


───ナイスタイミング! ……なのか??


「きゃ!」


 ビクッ! と、体をそらせたルミ。

 インターホンはいつも通り鳴っただけだが、なんか後ろから脅かされたように感じてしまったから。


───もうっ、誰よこんな時に!


 ルミがドキドキとイライラを混じらせながら画面を見ると、そこにはメティアがこちらを見つめる姿が。


「メティアさん!」


 エレナも横からヒョイッと画面を覗き込む。


「お姉ちゃん、この人って確か……」

「うん。王宮魔導士の1人でノーティス様の……大切な人よ」

「えっ? じゃあ……」


 少し複雑な顔でルミを見つめるエレナ。

 ルミのさっきの表情が物語っていたから。

 メティアが、ルミの恋のライバルの1人だという事を。


「……いいの。きっとお見舞いに来てくれたんだし、ノーティス様の大切な方だから」

「お姉ちゃん……」


 エレナが少し切なく零す中、ルミは応答ボタンを押して笑顔で答える。


「メティアさん、今お迎えに上がります♪」

「ルミさんありがとう」

「いえ、少々お待ち下さい♪」


 ルミはそう答えると部屋のドアに手をかけたが、スッとエレナに振り向いた。


「エレナ……ノーティス様の事よろしくね」

「うん♪ 私がキスしとくね」

「エレナ!」

「じょーだんだよ♪ する訳ないじゃん」

「まったくもうっ」


 ルミが膨れた顔をして部屋から出ていくのを、可愛く片手を振りながら見送ったエレナは、扉が閉まるとルミが座ってた椅子に腰掛けた。


 そして、両肘を太ももに乗せて頬杖をついたままノーティスを見つめる。


「あーぁ。私だってノーティスの事好きなんだけどなーー」


 エレナはそう呟くと、そっと立ち上がりノーティス方へ近寄った。

 そして、愛しい顔を浮かべながらノーティスの顔をそっと覗き込む。


「でも、ノーティスの初めてが私じゃダメだもんね……」


 切ない顔でしばらく見つめたエレナは、ノーティスの頬に顔を近付けチュッと軽くキスをした。


「これで我慢しといてあげる。早くお姉ちゃん幸せにしてあげてね……♪」


 そう言うと、椅子に座り再び頬杖をついてノーティスを微笑みながら見つめているエレナ。

 ノーティスはそれを感じ、胸がギュッと締め付けられた。

 いつものように、好きだと言って抱きついてくる時よりもずっと……


───エレナ、キミは強くて素敵だ。それに比べ俺は……


 ノーティスが自分の意気地の無さを責めていると部屋の扉がガチャッと開き、ルミとメティアが入ってきた。


「あっ、キミがエレナさん……? さっきルミさんから聞いたんだけど」

「はい。初めましてメティアさん。妹のエレナです♪」


 エレナは笑顔でそう答えながら、メティアの姿を見て内心焦っていた。


───これがノーティスの大切な人か。メチャクチャ可愛いじゃん! レイ様とは違って100%可愛いで出来てる。これは強敵だね……


 エレナがそう思う中、メティアはエレナにペコリとお辞儀をした。


「エレナさん、初めまして♪ 挨拶遅れちゃったけど、ボク、ノーティスと一緒に戦ってるフロラキス・メティアっていいます。よろしくね♪」


───しかも、この可愛さでボクって、もーーーなんなの。


「いえ、こちらこそよろしくね♪ メティアさん」

「うん、ありがとうエレナさん。ちなみにノーティス、まだ全然目を醒まさないの?」


 メティアからそう尋かれたエレナは、少し寂しそうに視線を落とした。


「うん……レイ様達がここに連れてきてくれた時以来、全然……」

「そっか……」


 メティア寂しくそう零すと、寝ている、まあ正確には寝たふりをしているノーティスに近づき、そっと顔を近づけた。


「ノーティス……」


 哀しそうな顔でノーティスを見つめるメティア。

 その気配を感じて内心ドキドキしているノーティスの頬に、メティアは片手をそっと添えた。


「ごめんね……ボクがキミの目を覚ませてあげれたらいいんだけど……」


 メティアは、このままノーティスがずっと目を覚まさないかと思うと、悲しくて涙が溢れてきてしまった。


「うぅっ……ノーティス、キミと幼い頃に出会って、そこから奇跡の再会を果たしたよね。そこから一緒に戦ってきたけど、キミはいつもボクの事を守ってくれた。本当はボクが守らなきゃいけないのに……」


 メティアの頬を伝った涙が、ノーティスの頬にポトンと落ちた。

 そしてそれは数を増し、ノーティスの頬にポトポト落ちていく。


「それに、シドやアネーシャと戦った時も、キミは心に大きな傷を抱えたよね……でも、そこから立ち上がってきた。ボクは……ボクはそんなノーティスと一緒にいられて幸せだよ」


 メティアのその姿を後ろから見て、涙ぐむルミとエレナ。


「ぐすっ……メティアさん……!」

「もうっ……」


 そんな2人を背に、メティアはノーティスにスッと頬を当て囁く。


「ノーティス、ボクはずっとキミを愛してるよ……うぅっ……」


 メティアの気持が心に染みわたってきたノーティスは、もう目を開けるしかなかった。

 心から溢れる涙を止める事が出来なかったから。


「メティア……!」

「ノーティス!!」

「ノーティス様!!」

「ノーティス!」


 メティア達が目を丸くして驚く中、ノーティスは上半身を起こしメティアに優しく微笑んだ。


「メティア、約束したもんな。俺達はもう、決してうずくまる事は無いって」

「ううっ、ノーティスーーーーーー♪」

「メティア、ありがとう」

「わーーーーん、よかったよーーーー♪」


 ノーティスは、喜びに泣きじゃくるメティアを愛おしさと共にそっと抱きしめた。

 すると、ルミがノーティスにそっとハンカチを差し出した。


「ノーティス様、お帰りなさいませ♪ これを、ノーティス様からメティアさんへ」

「これは……」

「ちゃんと綺麗に洗っておきました。ノーティス様の大切な魔法のハンカチです」

「ルミ……! ありがとう」


 ノーティスはそれを受け取ると、メティアにそっと渡す。


「メティア、これで涙を拭いて」

「ノーティス……! それに……」


 メティアは涙の乾かぬ瞳のままルミの方へスッと振り返ると、ルミに嬉しそうに微笑んだ。

 そして、ノーティスからスッと身体を離すとニコッと笑った。


「ルミさん、ありがとう。ボク、もう行くね……♪」

「えっ」 

メティアはなぜ、急に帰るのか……



次話はメティアの大きな愛がルミを包みます。

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