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ゼロの輝き─無魔力追放からの反逆  作者: ジュン・ガリアーノ
第6章 魔力クリスタルの深淵
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cys:103 女神レティシアと『祓う者』

「やめてーーーー!!」


 涙を(ほとば)せながら、悲痛な叫び声を上げた少女。


 その瞳に映るのは、辺り一面に燃え盛る炎と惨殺された数多の死体、その中を必死に逃げ惑う人々の姿だ。

 そして、血の混じった砂塵が空を覆い、それを突き破るかような数多の悲鳴がこだまする。


 そんな地獄絵図を次々と作り出していく、邪悪なる者達の下卑た笑み。

 救いなど、どこにも無い景色。


 この国の戦士ロキは、その邪悪な者達から少女を守る為に、ボロボロの姿になりながらも敵に向かい剣を構え、その瞳に光を宿し敵を見据えている。


「ハァッ……ハァッ……お前達の好きにはさせん。必ずこの国を、人々を守り抜く!」

「クククッ……ムダだ。死ね」


 邪悪な者は、振りかざした剣に漆黒のエネルギーを集め巨大な刃と化すと、ニヤリと嗤いながらそれをロキに振り下ろした。


「ぐはぁッ!」


 ロキの体からブシャァァァッ! と血しぶきが舞った時、少女の瞳が染まる。真紅の絶望に。


「いやぁーーーーーー!!!」


 また、(ロキ)を惨殺されたカインは怒りに打ち震え敵を睨みつける。


「ロキ! くっ……許さん!!」


 カインは怒りと共に剣を振り上げたが、その体は一瞬にして敵に後ろからガシッと止められてしまった。


「キ、キサマは……」


 苦しみながら顔をググッと振り返らせたカインに、女は蔑んだ笑みを浮かべてニヤッと嗤う。


「じっとしてなさぁい♪ 私、実力も無いのに戦う男、嫌いなのーー」

「黙れ……皆の命とユグドラシルは俺の命に代えてでも……」

「そーゆーとこよ。もう、死になさい♪ 『プソファー・シンフォニー』!!」


 女がそう告げ死の歌を歌うと、カインの神経はズタズタに引き裂かれた。


「ぐあぁぁぁぁ……!!」


 ドシャっと倒れ絶命したカインをその女は嗤う。

 その瞳に邪悪で妖しい光を宿したまま。


「ウフフフッ♪ 脆いわねぇ。でも、私の歌を聞いて死ねるなんて幸せね。アーッハッハッハッ!」


 その女が嗤う中、別の場所では多くの人が一瞬で醜い化け物に姿を変えられていた。


「うがぁぁぁっ!」「ぐぎぎぎぎっ!」「あががががっ……」


 そう悲鳴を上げた直後、彼らの身体は真ん中からベリッベリッ! と音を立てて引き裂かれ、大量の血が数多の噴水のように吹き上がる。


 それを見て、楽しそうに少し目を丸くしている邪悪な者。


「ウヒヒヒヒッ♪ これは新たな発見だ。次は、もう少し苦しみを続けられるように調整するか」


 邪悪なる者達は殺戮と蹂躙を嬉々として続け、それにより、さらに力無き者達が次々に殺されていく……


 その光景を、ノーティスはただ見つめていた。

 いや、見させられていたといった方が正しい。

 関わる事の出来ない絶望の光景を……


「やめろ……やめろ……やめろーーー!!」




 ノーティスが涙を零しながらそう叫んだ時、世界が瞬く間に白く優しい光に包まれた景色に変わった。


「こ、ここは、一体……」


 突然景色の変わった世界は、まるで神話に出てくる天国の様な場所だった。

 その中をキョロキョロ見渡しながら歩いていくと、ノーティスを呼ぶ女の声が聞こえてくる。


「ノーティス……エデン・ノーティス……」

「誰だ? 俺を呼ぶこの声は」


 ノーティスが不思議な顔をしてそう零すと、少し前方に白く神々しい光を溢れさせている女が現れた。

 白いドレスに美しい長い髪がかかった姿で、どこまでも澄んだ瞳でノーティスを見つめている。


「アナタは……」

「私は女神『レティシア』です。ノーティス、よくぞここまで戦いました」


 そう告げ優しく微笑んだレティシアに、ノーティスは目を大きく開いて詰め寄った。


「女神レティシアだって……じゃあ、俺は死んだのか? それに、さっき見たあの光景は一体何なんだ!」


 ノーティスが憤りをぶつけていくと、レティシアは軽く瞳を伏せ神々しい声で答えていく。


「確かにここは生身の人間には来れない場所……けれど、貴方は死んではいません」

「死んではいない? じゃあここは……」

「ここは、夢の中であり現実と言えば分かるかしら」

「夢の中であり現実? どこかで聞いたような……」


 ノーティスが自分の中の記憶を探っていくと、レティシアはノーティスを少し哀しく見つめた。


「やはり、まだ完全には思い出せないのですね」

「思い出せない?」

「ええ……貴方が完全に光に目覚めれば、ここでの事も、そして本来の使命も全て思い出すでしょう」

「本来の使命?」

「そう。それまでは、ここの事も記憶の底に眠ったままです……」

「そんな……俺は、俺の本来の使命とは何なんだ?!」


 そう言って詰め寄るノーティスに、レティシアは凛とした眼差しを向けた。


「一刻でも早く目覚めるのです。先程の光景を見たでしょう」

「そうだ。あれは一体何なんだ?」

「あれは昔、実際に起こった真実の歴史です」

「なんだって! じゃあまさかあれは……」


 ノーティスの背筋にゾッと冷たいモノが走った。

 

───あの光景はまさか、シドやアネーシャが言ってた事なのか……!


 すると、レティシアはノーティスの心を読んだかのように、哀しく瞳を伏せた。


「ノーティス……貴方が思った通りです」

「そ、そんな……」

「あれは、スマート・ミレニアム建国前の出来事……」


 それを聞き、絶望に身体を震わせ膝をつきそうになったノーティスに、レティシアは再び凛とした眼差しを向けた。


「でも、貴方はここで負けてはいけません。エデン・ノーティス。貴方は光の勇者であり『祓う者』なのですから」

「祓う者……?」

「そうです。ただ、今はもう、これ以上ここにいられる時間はありません。後は貴方の光の目覚めにかかっています」


レティシアがそう告げた時、ノーティスの意識は現世に戻っていった。

祓う者とは一体なんなのか……!



次話は久々にルミやエレナが登場します。

大分シリアスなのが続いたので……

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな残忍な光景を見たら 気を失なうのは当然。 そして、真実を知ってしまったら、一体 どうなるのか。 次の展開が楽しみです。
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