シャワーと湿布とハンカチ
こんにちはifです。藤花くんは小夜ちゃんを連れてどこへ行くのでしょうか?
それではお楽しみください
...シャワーの音がする。足を挫いた宵宮をうちに連れてきてシャワーを浴びてもらっている。
ガチャッ
ドアの開く音と共に風呂場から宵宮が出てきた。
「シャワーありがとうございました」
「あ、あぁ」
俺は宵宮を直視出来なかった。腰まで伸びた綺麗な黒髪。そして温まったことで火照っている体。何をとっても「美しい」そんな言葉が最も似合うと思った。
「悪かったな。急に家に連れ込んで」
「いえ、急に肩を組まれた時はどうしようかと思いましたが雛さんが優しい方で良かったです」
そう言って彼女は微笑んだ。決して黒の姫、宵宮小夜はこんな表情はしない。俺が勝手に本性だと思っている宵宮だ。
それにしても、何も考えずに俺のパーカーを貸したのは間違いだったのかもしれない。シャワーを浴びたのにびしょびしょの制服を着せて帰す訳にはいかないので俺の服を渡したが、明らかにサイズがあっていない。
「服、そんなのしかなくてごめん」
「い、いえ...ありがたいです。少し大きいですが」
彼女は笑っていた。
(美しい...いや、可愛い...うーん悩ましい)
そんな馬鹿なことを考えてしまった。良くない思考を断ち切るべく俺は立ち上がり救急箱を持ってきた。
「足、挫いたんだろ。湿布と包帯あげるから手当しな」
そう言って俺は湿布と包帯を宵宮に手渡した。
「何から何まですみません。ありがとうございます」
お礼を言う宵宮はいつもの宵宮に戻っていた。
宵宮が手当をしだしたので俺は宵宮の服を乾かすことにした。
(相変わらず真っ黒だな...)
俺の通う学校はスカートとズボンとブレザーは指定でブレザーの下には何を着てもいいことになっている。
黒の姫である宵宮はワイシャツの上から黒いカーディガンを着ているようだ。
「宵宮、お前黒が好きなのか?」
興味本位で聞いてみた。
「いえ、別に好きという訳ではないですが...」
表情には出ていないが困っているようだ。
「変なこと聞いて悪かった。誰が何を着ようが勝手だよな」
もうこれ以上聞くまいと思い話題を終わらせることにした。
特にそれからなにかある訳でもなく宵宮の制服を乾かしているうちに、手当も済んだようだ。
「手当終わりました。湿布と包帯ありがとうございました」
「そうか。歩いて帰れるか?」
「えぇ、これくらいなら問題ありません」
宵宮がそう言うので俺は何も言わずに送り出すことにした。
「気をつけてゆっくり帰れよ。転んだら危ないから」
何故か宵宮は驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの宵宮に戻った。
「ありがとうございます。このパーカー今度返しに来ます」
ずっと着ていないパーカーを選んだので別に返さなくてもいいのだが、本人が返すと言っているのだから受け取るのが正解だろう。
「あぁ、暇な時にでも持ってきてくれ」
そうして、特に何も無く宵宮は帰って行った...はずだった。
今日は疲れた。今まで少ししか話したことの無い女の子と川で一緒にコケて家に連れてきてシャワーを貸して服を貸した。しかも相手が黒の姫と呼ばれる宵宮 小夜だから余計にだ。
(しかし、間近で見るとやはり綺麗だったなぁ)
そんな馬鹿みたいなことを考えた。でも俺の中でクールというイメージはもはや崩壊しつつあった。
「あー。夕飯まだだった」
ずっと宵宮のことでバタバタしていたので忘れていた。
夕飯を食べるためにリビングに戻ると宵宮が座っていた椅子の上にハンカチが置いてあった。
(忘れ物か... 服返しに来た時に渡すか)
そう思って移動させようと持ち上げたら、1枚の紙が落ちた。
表には可愛らしい文字で「雛さんへ」と書いてあった。
学校でクールキャラでいる宵宮の字が思いのほか可愛らしくて思わず微笑みがこぼれた。
その紙の裏に書かれた内容は予想のはるか上を行くものだった。
「私はあなたに今までの人と違う何かを感じます。3日後の夜、あの川でお話しましょう。そのハンカチはその時に返してください。宵宮小夜」
なんかこう、ありがとうございました的な何かが書いてあるのかと思ったのに全然違った。
(俺、これ消される?)
そんなことを考えてしまうくらいには意味が分からなかった。
その後の2日間、宵宮が学校で絡んでくることも、視線をくれることもなかった。
本当になんなんだ...
読んでいただきありがとうございました。
藤花くんの家に残された謎の紙とハンカチ....
藤花くんは消されてしまうのでしょうか?笑
次回は川での2人の会話です(予定)
それではまた