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1人のあの子は川で...

第2部をクリックして頂きありがとうございます。

ifでございます。

クールな宵宮ちゃんが川でノクターンを歌っていたのを藤花が発見したわけですけども、このお話はどうなるのでしょうか

第2部で問題が起きて第3部で解決という感じになります

ではお楽しみください

昨日宵宮と少し話したからって俺の日常生活が変わるわけではない。


何も考えず、いつも通り学校に行く。


「はぁ、めんどくさい」


そんなことを言いながら家を出る。


俺の家と学校の間に例の川がある。昨日宵宮と出会った川だ。朝日を反射してキラキラと輝いている。


(あ、宵宮だ...)


遠目に宵宮を見つけてしまった。


漆黒の髪に川が反射した日光が当たり、まるであの日の夜空のようだった。


(はぁ...嫌なことを思い出してしまった)


俺は元々夜空を見上げるのが好きだった。でも、あの日を境に上を見るのをやめてしまった。


忘れもしない。12月の日。親に言われたあの言葉で俺は上を見るのをやめた。


「あんたがそんなに上を見るから...」


「落ちたりしないでくださいよ。私の目の前で死なれても困ります」


冷たく言い放たれたその言葉で俺のネガティブな思考は断ち切られた。


「宵宮...か」


真横に宵宮がいた。昨日の川を見ていた宵宮では無い。いつも通りのクールな宵宮が。


いつの間にか俺は川にかかる橋の柵から身を乗り出していたらしい。そのまま落ちるのではないか。そう思われたのだろう。


でも全くもってそんなつもりはない。もう、あんな親のことなんて忘れて楽しく生活しているから。


「別に死のうなんて思ってないよ。少し考え事をしてただけだ。心配かけて悪かった」


俺はそう言って学校へと歩を進めた。


「なんか、とんでもなく辛そうな顔してたから...」


少し離れたところで小さく呟かれたその声が俺に届くことはなかった。


放課後、俺はいつものごとく川に来ていた。昨日は夜だったが今日は夕焼けを見に来ていた。


俺は自然を愛している。人といると常に警戒心を持っていなければならないが、自然に対しては警戒心を持たずにいられる。


小さな子ども達が川で遊んでいる。それもいい景色だと思い、夕焼けを待った。


「あぁ、今日も良い1日だった。川のせせらぎと真っ赤に染った太陽。とても癒される...」


朝の嫌な思考は嘘のようになくなっていた。とても充実した気分だった。


(家に帰る前にコンビニでも行こうかな)


そう思い立った俺は川のベンチを後にした。



2時間程度たった。俺は川に戻ってきていた。もう外は暗く、川の音だけが聞こえてくる。


コンビニで夕飯を買った後、今夜読む本でも買おうと書店に立ち寄ったら気づいたらこんな時間になっていた。


(ん?こんな時間にまだ子どもがいるのか?)


川の水をバシャバシャと飛ばして歌っている少女がいた。


「♪♪〜〜♪♪〜」


ショパンのノクターン。まさかと思って見てみると、そのまさかだった。


宵宮だ。何故か川の中にいて、水と戯れている。


「美しい...」


気づいたらそんな感想を呟いていた。黒い髪は水滴が付き、月の光を反射して輝いている。


学校では吸い込まれそうな漆黒の髪だと思っていたが、こう見るとキラキラと輝く鮮やかな黒を連想させる。


しばらく眺めていると突然宵宮の体が傾いた。


本能がまずいと訴えてくる。この川はとても浅いので転んでしまったら絶対に怪我をする。


咄嗟に体が動いていた。


「危ないっ!!」


バシャーン


2人とも川に倒れ込んだ。


「危ないな...だいじょう...!?」


宵宮の顔が目の前にあった。俺が宵宮の下敷きになったような体勢だろう。少し顔を近ずければ口と口が触れてしまうような距離だ。


「っ...」


宵宮もそれに気づいたのだろう。すぐに立ち上がろうとしたが、俺の方にまた倒れてきた。


おそらく足でも挫いたのだろう。仕方なく宵宮を支えてベンチまで運ぶ。


「大丈夫か?」


いつもの調子で問いかける。しかし、宵宮はそうではなかった。


「あ...え...その...」


動揺しまくりだった。顔を真っ赤にして慌てている。


(なんだこの可愛い生き物は...)


いくら他人に警戒心を持っていても俺だって男だ。女の子に可愛いと思うくらいには男なのだ。


普段クールで誰とも話さない黒の姫が照れている。俺の胸を掻き立てるにはそれだけで十分だった。


「先程はすみませんでした」


宵宮は学校のテンションで話し出した。


「いや...無理でしょ」


思わず真顔でつっこんでしまった。あれだけ照れておいて無理がある。思ったことが声に出てしまった。


「ですよね...」


思ったよりもあっさりと認められた。


「お願いです。クラスの人に言わないでください」


何故か宵宮はクラスメイトに知られるのを嫌がっていた。

おそらく、黒の姫として生活しているからだろう。しかし、こっちが本性だと俺は思うのだが...。


「誰にも言わないよ。言ったところでメリットがない。その点は安心してもらって大丈夫だ」


そう言うと宵宮は安心したように微笑んでありがとうございますと呟いた。


こうしていればとても可愛いのにもったいないと思う。こんなこと言ったら悪いが学校での宵宮は可愛げはない。まあ、そんなこと本人に言えるはずないのだけど...。


「そんなことより、足挫いたんじゃないか?」


気になっていたことを聞いてみる。2人とも川でコケてびしょびしょなうえ、倒れたので怪我をしているだろう。それに、さっき俺の上から慌てて離れようとした時も上手く立てていなかった。


「はい。少し...。でも歩くのに問題はありませんので。助けて下さりありがとうございました」


そう言って宵宮は帰ろうとする。かなり足を引きずっている。宵宮の家など知らないがおそらくこのまま帰るのは無理だろう。


「ちょっと失礼」


そう言って俺は宵宮の腕を持ち上げ、自分の肩にかけた。


「え?...」


宵宮は戸惑っているがそんなことお構い無しに俺は歩き始める。


行き先は...

ここまでお読み頂きありがとうございます。

宵宮ちゃんの本性が見え、藤花の過去が少し顕になりました。2人はどこへ向かうのでしょう

第3部も読んでいただけると嬉しいです

では、また会いましょう

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