黒の姫との出会い
皆様、このお話を読もうと思って下さりありがとうございます。ifと申します。初投稿でして非常に緊張しております。今まで書いてきた小説はひとつも完結していませんので、このお話はどうにか終わらせたいです笑
男子高校生の雛 藤花くんの視点でお話は進んでいきます。どうか暖かい目でご覧下さい
「黒い...」
俺、雛 藤花が冷たい風が吹く夜、1人で川を眺めていた彼女、宵宮 小夜を見た時に真っ先に思ったことだった。
うちの学校で宵宮のことを知らない生徒はいないだろう。成績優秀、容姿端麗、クールで人を寄せ付けない佇まい。そして吸い込まれるような黒い髪。これが宵宮が黒の姫と呼ばれている1番の理由だろう。
しかし彼女はいつも1人だった。まるで1人を望んでいるかのようだった。笑顔でいれば周りに人だかりができるくらいの美貌を持っているのに。
本当にもったいないと思う。でも、彼女がそれを望んでいないと感じる。
ある日の夜、俺はいつものように街を流れる川に置いてあるベンチに座っていた。
この川は何にも遮られず真っ直ぐに伸びている。夕暮れ時には赤く染まった太陽に向かって一直線に伸びているように見える。
「こんな時間に人がいる...」
向こう岸に女の子がいるのに気がついた。とても黒く艶やかな髪を持つ女の子。宵宮だ。
「黒い...」
真っ先にそう思った。本当に綺麗な髪をしている。
こんな時間に何をしているんだろう。そう思った俺は向こう岸まで歩いてみることにした。
宵宮は鼻歌を歌っていた。
「♪♪〜〜♪♪」
ショパンのノクターンだろうか。彼女は比較的有名なクラシックを口ずさんでいた。
宵宮は川の中を眺めていた。川は澄んでいて小さな魚が泳いでいる。
「お魚さん。かわいいな〜。ふんふーん」
普段の彼女からは連想できないような声が聞こえてきた。
「え?」
思わず俺は声を出してしまった。気になってこちら側に来たのだが、声をかける予定はなかった。気付かれずに歩くつもりだったのだ。
「あ...」
宵宮は俺の声に気づき、こちらを振り返り笑みを消した。
「雛さん...」
どうやら名前は知られているらしい。
「あ、いや...ごめんなさい。声をかけるつもりはなかったんです」
と何故か焦って言い訳をしてしまった。
彼女は普段の冷たい表情だったが、少し微笑んでいるような気がした。
「見ましたか?」
彼女は冷たい声で俺に問う。
「な、何も見ていない...ことはないです。ごめんなさい」
即座に謝る俺。何故か見てはいけないものを見たような気分になっていた。
「別にいいのですが...誰にも言わないでください。それにしても私だと分かって近寄ってくるなんて...」
言葉の最後の方は風の音と川の音で聞こえなかった。
「もちろん誰にも言わない。じゃあ俺あっちだから」
深入りしても悪いという判断で俺はその場を離れることにした。宵宮が夜の川で魚に向かってかわいいと言いながら歌っていたなんて言っても誰も信じてはくれないだろう。
「ありがとうございます。では」
そうして俺たちは別れた。
「宵宮、誰とも関わらないクールな人じゃないのか?」
宵宮とある程度距離ができたところで俺は呟いた。
(あんな笑顔もできるんだな)
俺の中での宵宮のイメージが更新された。
でも、宵宮と話すことはもうないだろう。
そう思い俺は帰路を辿った。
読んでくださりありがとうございました。
時間がある時に続きは書くと思います。