9話
チカクの街に着いたボクは真っ直ぐ鍛冶ギルドに向かい、作業場を借りた。
「始まりの街だとタダで使えたけど、他の街だとお金がかかるんだな。これを何回も繰り返してだと地味に痛手になるから、早くマイハウスが欲しいところだな」
さてと、作業開始だといきたいところだが、その前にやる事がある。
銀狼の剣を作る際の工程の確認だ。
銀鉱石を鋳造して、銀インゴットを5個作る。
サーベルウルフの牙を研磨して、外周にある骨を削り、剣の軸になる部分を取り出す。
銀インゴットを溶かして、剣の軸にするサーベルウルフの牙に銀を合わせて、剣の形に成形する。
最後に仕上げの研磨して、完成。
「よし、作業工程の確認はオッケーだ」
「一点集中スキル・オン」
「鋳造作業・開始」
銀鉱石を溶かすために炉に入れて、MPを使いながら魔力操作で温度管理をしていく。
銀の鋳造は結構神経を使う作業。
銀に不純物が付かないように魔力でコーティングして真空状態を維持しながら作業しなければならない。
温度の上げ方にも注意が必要。
始めに常温の25度から200度くらいまでは30分くらいかけて上げる。
200度まで温まったら1時間かけて500度まで上げる。
500度から960度まで2時間かけて温度を上げて、その温度をキープしながらインゴットの型に流し込む。
でもこれはあくまでも基本的な銀の鋳造の作業方法。
「さあ、生産マスターの称号の効果がある鋳造はどんな感じだ」
ボクは炉の温度計と時計を見ながら、魔力を流し込んでゆっくりと温度を上げていく。
すると温度計と時計に輝く点が見える。
温度計は185度、時計は40分。
1分間に4度上げる。もしかしてこの温度カーブで温めていくのがいいのか?
185度まで上げると、温度計と時計に新たな輝く点が見える。
温度計は525度、時計は68分。
今度は1分間に5度上げる。
次はこの感じで温度を上げていけばいいんだな。
525度まで上げると、温度計と時計に新たな輝く点が見える。
温度計は965度、時計は110分。
今度は1分間に4度上げる。
これが銀の鋳造における最適の温度カーブなのか。
「これを型に流して、銀インゴットの完成だ」
「鋳造作業・終了」
「一点集中スキル・オフ」
「フゥー、さすがに長時間かかる銀の鋳造は疲れたな。インゴットの冷却も必要だから、ちょっと休憩してから次の作業だ」
あっ、その前に銀の鋳造の温度カーブはメモしておいた方がいいな。
メモ、メモ。
「ちょっと食事でもしてくるか」
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「ここの部屋、ちょうどいいタイミングで休憩中だわ。ちょっと忘れ物したんだよね。ってこのメモ何かしら・・・銀の鋳造方法?こんなメモを残すくらいだから、きっと意味があるメモなんだよね。私も覚えておこう」