7話
銀鉱石の採取はもう十分だ。次はサーベルウルフからの剥ぎ取り採取。
だけど、お金になるモンスターなだけあって、目当てのサーベルウルフの死体を見つけても、サーベルウルフの牙や毛皮は採取されていて、一向に見つからない。
このゲームではモンスターを倒したプレイヤー、もしくはパーティーにモンスターの剥ぎ取りの権利があるが、一定時間の放置で権利がなくなる仕様になっている。
権利がなくなったモンスターから剥ぎ取り採取するのが、ハイエナ行為と言われている。
でもクランに所属している人は権利がなくなる仕様を上手く利用して、倒す専門のパーティーと剥ぎ取り採取専門と分かれて効率的に行動している。
だから個人でこっそりとハイエナ行為をやっていても見つかりにくい。
だけど見つかった場合はネットに晒されて、酷い事になる事もわかっているから、慎重にハイエナ行為をやる必要がある。
ハイエナ行為かクランの活動なのかを見分ける方法として、クランメンバーが倒して剥ぎ取りせずに放置したモンスターにはクランの旗を立てておく。
採取専門のクランメンバーはその旗を見て、剥ぎ取り採取して採取が終わったら、旗を回収していく感じ。
もちろんクランで活動している人は旗の数を数えているから、旗の立っているモンスターから剥ぎ取り採取のハイエナをすると、すぐにわかる。
「しばらく探してみたが、採取出来そうなモンスターの死体はない。あっても旗のついたサーベルウルフの死体ばかりだ」
やっぱりハイエナ行為で稼ぐのは無理があるんだろうか。でも銀鉱石の採取だけだとなぁ。
銀鉱石の採取は金にはなるが、すごい稼げるわけではない。
どうしようか悩んでいると、クランの旗の立っているサーベルウルフの死体を発見。
どうする。
辺りにはまだ人影はない感じだ。でもハイエナ行為をバレたら晒されて終わり。
どうする。
「おい!そこのお前!!何をやっている」
やばい、人に見つかってしまった。
「さっきからちょこちょこハイエナ行為しようとしているのは見えていたが、旗付きに手を出さないでいたから、何も言わなかったが、覚悟するんだな」
カシャッ
マズイ展開だ。スクショを撮られてしまった。
あー、もうお終いだ・・・イヤ、最後の悪あがきをしてやる。
「ちょ、ちょっと待ってください。ボクの話も聞いてください」
「ハイエナ野郎の話を聞く気はない」
「ボクはハイエナじゃなくてトレードしたくて待ってたんです」
「はぁ?トレード?サーベルウルフのトレードならマーケットですればいいだろ」
やった。ちょっとは興味を持ってくれた。
「マーケットでのトレードじゃなくて、サーベルウルフを剥ぎ取り採取したかったんです」
「なんだそれ?ちゃんと説明しろ」
良かった。上手くごまかしながらちゃんと話をすれば大丈夫かもしれない。
「実はボク、鉱石系の採取と鍛冶をメインで活動しているんですけど、今日たまたまラッキーで最高品質の銀鉱石が手に入ったんです」
「さ、最高品質だと!!」
アイテム袋から1つ最高品質の銀鉱石を取り出して見せた。
「たしかに最高品質の銀鉱石だ」
「普通品質の銀鉱石とサーベルウルフの牙のトレードならレート的には無理なのはわかっています。でも最高品質なら・・・この銀鉱石とサーベルウルフの剥ぎ取り採取の権利をトレードしていただけないでしょうか」
「お前は銀狼の剣を作りたいのか。それにお前の今の装備ならサーベルウルフを倒せるような装備でもない・・・ちょっ、ちょっと待ってろよ。・・・どうしよう、どうしよう。俺、鉱石系の知識なんてほとんどないけど、最高品質の銀鉱石が超レアなのはさすがにわかるぞ。どうしよう、どうしよう」
あと一押しでなんとかいけそうだ。
「もしかしたら、最高品質の銀鉱石は初めてかもしれないですよ。鉄鉱石の最高品質ですら数回しかないみたいです。サーベルウルフはいくらでも採取できますが、最高品質の銀鉱石は初めてかもしれない。きっと、このトレードをクランメンバーも納得してくれますよ」
「そ、そうか。そうだよな。わかった。このトレードは成立だ」
「ありがとうございます」
採取専門の人は最高品質の銀鉱石を受け取り、クランの旗を回収してこの場から去ってくれた。
「よし、サーベルウルフの剥ぎ取り採取の開始だ」
~~~
数時間後。
「たまたまラッキーで最高品質の銀鉱石なんか採れるわけねぇだろ!!鉄鉱石の最高品質を採取できたヤツは、大手クランがひたすら未加工の鉄鉱石を買ってきて、切削加工専門でずっと切削加工してきたヤツなんだぞ」
「す、すみません」
「で、そいつはどんなヤツだったんだ?」
「あ、スクショ撮ってます」
「見た事ないヤツだな。とりあえずコイツは切削加工に極めて高い才能を持ってるやつだから、次見かけたらフレンド登録してクランに誘うようにしろ」
「わ、わかりました」