53話
これから脂肪酸カルシウムの焼成だ。
水酸化カルシウムを酸化カルシウムにする場合の温度は580度。脂肪酸カルシウムを酸化カルシウムにする場合は一体何度になるんだろうか。
ボクは脂肪酸カルシウムを焼成炉に入れた。
[お知らせ:現在、最終工程のパラジウムの焼成までアテナの骨の製作を進めている方がおります]
ん、システムメッセージだ。これはフクロウくんの事だな。もう最終工程までいったのか、仕事が早いな。やはり1日のハンデは厳しいものがある。でもボクはまだ諦めないぞ。
「焦らず生産に集中だ。ここから先は究極の集中が求められる。まずはトキのリンゴポーションを飲んで女神の加護を付与する」
ボクはトキのリンゴポーションをグイッと飲み干した。
3種の生産補助アイテムの生産の女神の加護は合計で80。トキのリンゴポーションで付与される加護は+10。これで女神加護は+90だ。
「よし、やるぞ」
「一点集中スキル・オン」
「鋳造作業・開始」
ボクは炉の温度計と時計を見ながら、魔力を流し込んでゆっくりと温度を上げていく。
すると温度計と時計に輝く点が見える。
温度計は185度、時計は40分。
次は・・・
温度計は525度、時計は68分。
次は・・・
温度計は589度、時計は369分12.4875秒
「温度の調整は問題ない。問題は時間の長さと細かい時間合わせ。これは一度でも失敗すればフクロウくんに追いつく事は困難になる。余計な事は考えるな、集中、集中」
・・・
「もう少しで369分経過する。ここから女神の加護を発動させる」
「女神の加護・オン」
陸上競技で使われているような時計のデジタル表示がゆっくりと進み始める。
369分12.4870秒
369分12.4871秒
369分12.4872秒
369分12.4873秒
369分12.4874秒
369分12.4875秒
「ここだ!!」
「鋳造作業・終了」
「一点集中スキル・オフ」
品質は・・・
品質を見ようとすると眩しく光り輝く女神アテナのエフェクトが現れた。
アテナの酸化カルシウム、100%の神品質。
「よし、次はこれを細かく砕いてナノ粉末にする。長時間の鋳造作業で疲れているけど、ボクに休んでいるヒマはない。このまま生産を続ける」
「一点集中スキル・オン」
「錬金作業・開始」
カンッ、カンッ、カンッ
ミスリルのハンマーを持ち、アテナの酸化カルシウムを砕いていく。
カンッ、カンッ、カンッ
~~~
「溶岩真珠の時はこのくらいで微粉末になったが見た感じだとまだ粉末だろう。時間のかかる作業だから細かく状態をチェックしながらいこう」
アテナの酸化カルシウムの粉末、100%の神品質。
「やはりまだ粉末状態か。微粉末になるまでどのくらいかかるんだろう」
再びミスリルのハンマーを持って叩き始める。
~~~
ゴリゴリ、ゴリゴリ、ゴリゴリ
粉末より細かくなると叩くというよりはすり潰す感じになる。
「これでどうだ」
アテナの酸化カルシウムの微粉末、100%の神品質。
「クソっまだか。イヤ、焦るな、落ちついて作業継続だ」
ボクは再びミスリルのハンマーを持ってゴリゴリし始める。
ゴリゴリ、ゴリゴリラ、ゴリゴリ、ゴリゴリ、ゴリゴリ、ゴリゴリ
超単純作業を永遠とも思えるような時間の中、ひたすらゴリゴリして微粉末をナノ粉末にする。途中ゴリラって聞こえた気もするが気のせいだろう。とりあえず今の状態を確認しよう。
アテナの酸化カルシウムのマイクロ粉末、100%の神品質。
「クソっまだか。一体いつになったらナノ粉末になるんだ。イヤ、焦るな。仕事は丁寧にやらないといけないんだ。じっくりいこう」
ボクは再びミスリルのハンマーでゴリゴリし始める。
ゴリラゴリラ、ゴリラゴリラ、ゴリラゴリラ、ウホッウホッ、ウホッウホッ、ウホッウホッ
「よし、ゴリラゴリラからウホッウホッに変わってきたぞ。ってこれは一体なんだ」
アテナの酸化カルシウムのナノ粉末、100%の神品質。
「でもようやくナノ粉末の完成だ。もう二度とこんな作業はしたくない。もうこりごりだ・・・コリゴリラ・・・あっーーー!!」
・・・
次はパラジウムの焼成だ。
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[お知らせ:現在、最終工程のパラジウムの焼成までアテナの骨の製作を進めている方がおります]
「ハヤトくんはすごいな。もうパラジウムの焼成まで来たのか。なのに僕は・・・クソっ、なんで最後の焼成が上手くいかないだ。僕には何か足りないものがあるのか・・・」
★★★★★★★★
フクロウくんに足りないモノ。
【クソっ】って何度も使っている違和感に気付けた感性がいい読者の方はきっとオチにお気付きだろう。
このオチに気づいた方はドラゴンセンスに目覚めているのかもしれませんね。




