46話
オーロラを操れるようになったのは次の日だった。
「この1日でボクは追い抜かれるかもしれないな」
ボクが最速最短で行きたかった理由。
ホワイトタイガーのクランのリーダーのコジロウさんが言っていた2週間あればぼくと同じ状態の人が出来ると言っていた言葉。
1年前に行われた半年記念イベントで簡単に死にレベルを上げれるイベントがあった。
そしてこのイベントの最終日にイベントボスが気になる言葉を残したために大手クランのトッププレイヤー達は主要なクランメンバーに対して死なないように指示をだしたために死んでいないのだ。
死にレベルはただ単純に死ねばレベルが上がるというわけじゃない。
レベルが低いうちは死にレベルは簡単に上がっていくが、レベルが上がってくるとそのモンスターにあった適切な装備が必要になってくる。
倒すのに死にレベル30が必要なサーベルウルフに初期装備で戦っても10くらいまでしか上がらない。
だからみんな装備を整えてモンスターに挑む。
半年記念イベントでは装備に関係なく死にレベルが上がったため、ほぼ全ての人が一度は死んだといってもいいくらいだった。
ボクは半年記念イベントの少し前にゲームを開始して始まりの街でずっとスキル構成を悩んでいたためにこのイベントをスルーした。
だからもう少しすればノーデスの称号を持つ人は一気に増えて、生産マスターの称号を持つ人も出てくるはず。
ボッチのボクと違ってクランに所属している人はクランメンバーの力も借りて素材集めをする。
そうなると狩場の取り合いも出てくる。ここまでくるとボッチのボクはどうする事も出来なくなる。
だから『アテナの骨』を作るまでは最速最短で行きたかった。
「とりあえず今は出来る事を最速最短でやっていくしかない」
アラスカサーベルタイガーの牙と冷凍メタン灰土で燃える永久凍土の剣が出来上がる。
この剣を使わないと取れない素材がある。
ナルドダヴィンチライオンというボスモンスターから採取できるネオモナリザイト鉱石。
ネオモナリザイト鉱石はミスリルやプラチリル、アダマンタイトに含まれているネオリウムが多く含まれる磁石の鉱石。
ネオリウムは熱に弱いのだが、ナルドダヴィンチライオンの弱点は火属性。
普通の火属性の武器でナルドダヴィンチライオンを倒す事は出来ても体内にあるネオモナリザイト鉱石はゴミになるために燃える永久凍土の剣が必要。燃える氷の剣でもネオモナリザイト鉱石は採取出来るが品質が落ちてしまう。
「よし、燃える永久凍土の剣を作るぞ」
冷凍メタン灰土、99%の最高品質。
アラスカサーベルタイガーの牙、99%の最高品質。
「この2つの最高品質の素材を成形加工すれば神品質で武器が出来上がる。そして女神の加護が付く初めての武器にもなる」
「一点集中スキル・オン」
「成形加工作業・開始」
アラスカサーベルタイガーの牙を軸にして冷凍メタン灰土を型に流し込んで魔力を通して冷凍メタン灰土を固着させる。
「成形加工作業・終了」
「一点集中スキル・オフ」
品質は・・・
品質を見ようとすると眩しく光り輝く女神アテナのエフェクトが現れた。
燃える永久凍土の剣、100%の神品質。戦闘の女神の加護+30。
戦闘の女神の加護は一体どんな効果があるんだろう。
ボクはさらに詳細に効果を確認。
戦闘の女神の加護を使えばモンスターの時間が停止する。+10で0.1秒の時間停止。
「これはすごい効果だな。これがあれば鈍臭いボクでもモンスターを倒せるかも。でも今は遊んでいる暇はない」
このゲームを遊んでるよという突っ込みはきちんと入れておこう。
「3日後に満月になるから、その時に地獄にいるナルドダヴィンチライオンの討伐とムーンライトハニーを採取だな」
今日を含めた3日間、無駄に過ごす気は一切ない。
『アテナの骨』を作る時に必要な酸化カルシウム。
この酸化カルシウムを作る時に必要な素材が、酸化カルシウムで出来ているマグマ貝の貝殻。
でもアテナの骨を作る時に必要な酸化カルシウムはマグマ貝の酸化カルシウムでは作れない。
酸化カルシウムで出来たマグマ貝の貝殻にいろいろな素材を混ぜて脂肪酸カルシウムにして、それを神の鍛冶場で焼成して出来上がる酸化カルシウムが必要。
脂肪酸カルシウムを作るのに必要素材。マグマ貝の貝殻、アピス牛の牛乳、トキのリンゴジュースとあともう一つ。
この最後の素材の採取が時間がかかるのだ。
最後の素材の名前はジュネ油。
現実世界ではジュネは一般的にはエゴマの名前の方で知られている。
このゲームでは世界樹の根の先から採取出来る実からこのジュネ油が採取出来る。
明日からは世界樹の根の先にあるジュネの実を探すためにひたすら土掘りをする事になる。
このゲームには世界樹は1本しかない。そんな1人ボッチの世界樹にはパーティーでは近づく事は出来ない。
土掘り作業は1人だと大変な作業。ボッチだと心が折れそうになるほどの大変な作業だけど、いつもボッチのボクには関係ない。
「よし、頑張るか」
ボクは世界樹にあるところに向かった。




