20話
次は錬金鍋の成形作業。
普通の錬金鍋は金を使い、型に金を流し込んで完成。
プラチリルを使った神の錬金鍋の作り方はそれとは違う。
プラチリルを0.0001ミリの厚さまで薄くした物を何回も折り曲げて厚くしていく方式で作っていく。
最終的な厚さは0.4ミリ。12回折り曲げる工程を繰り返す事によって、高い熱伝導率と高い強度があるプラチリルの錬金鍋が作れる。
「よし、錬金鍋を作る手順の確認はできた。作業開始だ」
「一点集中スキル・オン」
「成形作業・開始」
プラチリルインゴットに魔力を流し、インゴットを0.0001ミリの厚さに薄く伸ばしていき、折り曲げる。
0.0001ミリはすぐに破いてしまいそうになるくらいの薄さ。
慎重に慎重に集中しながら作業を進めていく。
・・・
「ようやく折り曲げる作業が終わった」
気づくと折り曲げる作業だけで3時間たっていた。
そこにあるのは何層にもなった厚さ0.4ミリのプラチリルの板。
「これを鍋の型に合わせて、形を整えて完成だ」
板状になったプラチリルを型に合わせ、丸みを丁寧につけていく。
強度があるといっても0.4ミリの厚さ。
力を加え過ぎると破けて穴があく。そうなると鍋としては使い物にならなくなる。
ボクはゆっくりと丸みとつけていく。
・・・
「完成だ!!!」
「成形作業・終了」
「一点集中スキル・オフ」
品質はどうなった。
プラチリルの錬金鍋、90%の最高品質。
「よかった。元々のプラチリルのインゴットが90%だったから少しの失敗で高品質になる。そうなると神の錬金鍋とは呼べない品質になってしまう。危ないところだったな」
神の錬金鍋は完成した。だがこれはまだ錬金術を極める上での第一歩にしか過ぎない。
本当の錬金術とはこれからだ。
元々錬金術は鉛などの大量に取れる安い金属を金などの貴金属に変えようとしたのが始まり。
この世の物質、鉛や金を始めとする金属はもちろん、水素や酸素も陽子と中性子の数の組み合わせで出来ている。
現代の錬金術は陽子と中性子の数を操る事によって元素変換をして鉛を金に変えている。
このゲームではこの現代錬金術を元にした仕様で錬金術生産を行っている。
錬金術で1番有名なアイテム、賢者の石。
賢者の石は元素変換してくれるキーアイテム。
このゲーム『オウルブルーアテナ』での元素変換してくれる賢者の石は『アテナの骨』と呼ばれるアイテム。
女神アテナの別名、パラスアテナ。
その名前から取ってつけられた元素、パラジウム。
パラジウムと酸化カルシウムがナノレベルの薄さで何層にも重なって出来ているのが『アテナの骨』だ。
酸化系の金属のパラジウムとアルカリ系の金属の酸化カルシウム。
どちらも水素を吸収する性質がある。
水素を吸収する対になる金属が水素を奪い合おうとして、そこに【強い力】が発生する事によって元素変換が起こる。
だからこのゲームでは神の錬金鍋に神品質の魔力水と『アテナの骨』と元素変換したいアイテムを入れるとアイテムが変わるという仕様になっている。
『アテナの骨』を作るには神の鍛冶場と神の錬金鍋の両方が必要。
錬金術を極めるにはまだまだ先は長く険しい道のりだけど、生産職を極めたいボクは『アテナの骨』を初めて作った人になりたい。
次は神の鍛冶場を作りあげる。
神の鍛冶場を作るには全部で3つのアイテムが必要。
今回作ったプラチリルの温度計。
残り2つは・・・
青海月水晶の時計
超耐熱レンガゴーレムのコア
今のボクでは超耐熱レンガゴーレムのコアは採取できない。
次は青海月水晶の時計作りだな。




