第七節~第八節
神々はひたすらに待つ、煩悩の神を、待っているものが耐え難い絶望でも、溢れんばかりの希望でも
第七節 絶望
準備は整った、漆黒に抗う時が来たのだ。
神々はその大役を煩悩の神に預けた、自らの神器をも預け、しかし彼は過去世界を滅ぼさんとした邪神であることに変わりはない、神々は完全には彼を信じていなかった、これをおきに神器もろとも奪われ逃走されたとなればどうしようもなくなってしまう、それを避けるべく監視役兼サポート役として精神の神と平等の神を付けた、煩悩、精神、平等、この三神に世界は託されたのだ。
三神による探索の目的地は漆黒の星発生地点、東の国中央部、この漆黒はこの地点から湧き水のように広がっているため、漆黒を生成する何か、あるいはその術者か何かが存在するのではないかとふんだのだ、彼らは神々最後の希望、その恐ろしく重い足かせとともに漆黒へと消えていった。
三神が旅立ち、かなりの年月が経った、その漆黒は西の8割を飲み込み、もう神々も後がない状態であった、神々はひたすらに信じ、待った、彼らの帰還を、、、しかし、彼らは一向に帰ってこない、神々はその愚行を後悔した、煩悩の神などに任せるのでなかったと、神々はそのやり場のない不安と恐怖を西の神へと向けた、罵声を浴びせながら西の神を責め立てる、西の神はただただそれを寡黙に受け止め鎮座している、
それにしびれを切らした一人の神が西の神に殴りかかろうとしたその時、、、
城の門を叩く者がいた
第八節 おしまい
そこにいたのは変わり果てた煩悩の神であった
その予想外の出来事に神々はしばしの間ピクリとも動かなかった、その静寂を破ったのは誰でもない西の神であった、彼がよくぞ戻ったと煩悩の神をねぎらうと、煩悩の神はその場で泣き崩れた、よく見ると彼は創生の冠をしておらず、ともに旅立った仲間、精神の神と平等の神の二人の姿も見えなかった、、、それについて西の神が問いただすと、煩悩の神はひどく混乱しているのかひたすらに二人に対する謝罪をし、その場にうずくまってしまった、それを見た西の神は煩悩の神に近づくとゆっくりと抱擁し、再び煩悩の神の帰還を喜んだ、それを見た周りの神々も落ち着きを取り戻し少しずつ煩悩の神の帰還をよろこびだした、ひとしきり煩悩の神の帰還を祝福したのち、落ち着きを取り戻した煩悩の神に西の神はその旅路について問うた、すると煩悩の神はゆっくりとその口を開いた、、、、
煩悩の神いわくやはり漆黒の中は完全なる無であったそうだ、そこに物体や概念など存在せず、今自分たちが西に進んでいるのか東に進んでいるのかはもちろんのこと、自分が落ちているのか上がっているのか浮いているのかなどの感覚さえも不確かであり、常に精神をむしばむ状態であった、もし精神の神がそばにいなければすぐにその旅路は途切れていたとゆう、果てしなく長いあいだその漆黒を進み続けた一行、そこに変化などとゆうものはなく、中央部に近づいているのかさえまったくわからない、三神とも果てない旅路と不安に押しつぶされそうであった、しかし煩悩の神のみがその不安をふりきり、ひたすらに皆を信じ前へ前へと前進した、その姿があったからこそ精神の神と平等の神もその不安をふりきることができた、三神が三神を信じ、闇をかき分けひた進む、、、さらに長き時間がたったのち、煩悩の神が明らかに異様な何かを見つけた。
それはこの場所には似つかわしくない空間、ドーム状に広がった漆黒のない空間、石畳の床があり、ほんのりと明るい、その空間の中央部にそれはいた、それは確かに人の形であることはよくわかった、しかしそれは人ではない、その体はまるで漆黒から形作ったかのように黒く、体形からはおなごのように見える、そして黒い球体のようなものを抱え込んで寝ている、それがこの漆黒の召喚者であることは明白、おそらく彼女を倒せばこの漆黒はおさまるだろう、三神は武器を取り戦闘態勢になった、それと同時に彼女もその眠りから覚めた、、、彼女は精神攻撃を得意とし、三神の精神をむしばみことごとく破壊しようとした、しかしこちらには精神の神がいた、彼女のおかげで何とか漆黒のおなごに勝つことのできた一行、あたりの漆黒は晴れ、昔栄えていたであろう東の国の残骸が現れた、三神はその旅の終わりに各々様々な思いをはせ帰路につこうとしたその時、精神の神が倒れたのだ、そう、漆黒はまだ晴れていない、彼女の抱えていた球体、あれは独立して別の個体であり、精神攻撃を与えてきたのだ、そこからは一方的蹂躙であった、精神の神がやられ、次に平等の神がやられた、最後に煩悩の神、しかし煩悩の神の精神が壊れる瞬間、二人の声がした、、、あんたならできる、あなたにたくしました、と、瞬間、ほんの一瞬、精神攻撃が解けた、煩悩の神はその瞬間を見逃さなかった、すかさず本体である球体へ会心の一撃を叩きこんだ、球体はこの世のものとは思えないほど恐ろしい叫び声をあげたのち息絶えた、、、。
戦いは終わり、煩悩の神は今にも息絶えそうな二人へと近づく、そして煩悩の神はその創生の冠を使い二人をよみがえらせようとした、しかし二人はそれを止めた、創生の冠を酷使したため、冠は壊れかけていた、元凶は倒した、しかしそれによって漆黒は消えないようだ、その漆黒はこの世に顕現した時点で世界を飲み込むまで消えないようだった、そのため帰るのに創生の冠が必要なのだ、煩悩の神は世界などどうでもよい、二人さえ生きていればとまたもや蘇生を試みた、しかし二人はそれを良しとしなかった、彼らが形を保ってられるのも冠のおかげ、ここで壊れてしまえばどちらにしろ漆黒に飲まれてしまう、それならみんなの元に帰って私たちの存在を語り継いでほしいと、煩悩の神は苦悩した、、、ひたすらに、それを見かねた平等の神が一言こう言った「あなたが私たちのことを忘れない限り、きっとどこかで会えますよ、それははるか遠い先、世界が幾度と再製を繰り返した後かもしれませんが、あなたが忘れない限りきっとまた会えますよ、その時までのお別れですから、行ってください!、、、」。
煩悩の神は二人に背を向け走り出した、
西の国を目指し、二人は向き合い微笑みあった、
「またね」「また会いましょう」「また会おう!約束だ!!」
その声は漆黒へと消えていった、未来への希望を託しながら
煩悩の神は西を目指し走る、未来への希望と、耐え難き絶望を背負い、二人のために、、、