腰痛になった老女が2軒の開業医に電話したら対応が正反対だった件
「先生、どう思います? 私、腰が痛いから長洞先生に電話したのに、『クリニックに来い』って」
そうこぼしたのは、1年に1回、脳神経外科外来を受診する高齢女性。
最近、腰が痛くなって長洞クリニックに電話で相談したら、すぐに受診するよう指示されたとか。
腰が痛くて動けないのに「すぐに来い」と言われたとかで憤慨している。
まあ、言っていることは分からなくもない。
オレもギックリ腰になったときには動けなかった。
トイレに行くのも大変だったし、その後に拭くのも苦労した。
こうやってオレの外来に顔を見せているのだから、なんだかんだ言っても治ったのには違いない。
そもそも脳の話をするために来たんじゃないのか?
「それでね、高橋内科に電話したのよ」
長洞先生も高橋先生も近所なのでよく知っている。
長洞先生が若くてエネルギー溢れているのに対し、高橋先生はかなり年配で温厚だ。
「そしたらね、高橋先生は自転車に乗って薬と湿布を持ってきてね」
「へえ、そうなんですか」
「それで郵便ポストに入れておいてくれたんよ」
そういう方法もあるのか、オレは感心した。
診察室で長話を聞かされるより、ある意味、効率的だ。
「すごいですねえ、高橋先生は」
「そうでしょ、すごく親切な先生なの」
そろそろ脳の話をさせてくれないかな。
「じゃあね、こんど医師会で長洞先生に会う予定があるからね」
「ええ」
「アドバイスしておきましょうか」
「お願いできる?」
「先生も自転車買った方がいいですよ、って」
「そっちかい!」
「お大事に」
-完-