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第75話 闇魔法

「シャルロット! 危な……」

「大丈夫です。多数の人が無作為に攻撃していますが、操られている人は全て把握し、その行動予測は全て済んでいます」


 通りを悠然と歩くシャルロットに、剣を持った男が近付いてきたので、慌てて声を掛けたけど、そのまま男がどこかへ通り過ぎて行く。

 よく見れば、直前でシャルロットが足を止め、攻撃を避けると共に男を転ばせていた。

 その後も、短剣を持った少年や、斧を持ったオジサンが来るけれど、その全てを最小限の動きで避けていく。

 その一方で、


「右手の屋根の上に居る男性……クリスさんに向かって矢を放ってきますので、避けるか止めるかしてください」


 シャルロットがそう言った直後、その男が突然弓矢を取り出したので、魔銃を使って凍り付かせる。

 その後も同じようにシャルロットが事前に全てを防ぎ、人の多い通りから、薄暗い裏路地へ。

 そこには身なりの良い格好の男性が居て、シャルロットが詰め寄る。


「貴方ですね。闇魔法を使って、この混乱を引き起こしているのは」

「流石は魔導少女といったところか。こうも簡単に見破られるとはな」


 相手がシャルロットの事を知っているからか、あっさりと認めたので、マリーが間髪入れずに攻撃魔法を放つ。

 だが、


「レナっ!」

「……ウインド・シールド」


 男がレナさんの名を呼び、それに応じたレナさんが風の魔法で男を守る。


「レナさん!?」

「ふん、やっぱりね。その女はずっと怪しいと思っていたのよ。ご主人様に、ずっとちょっかいをかけようとしていたし」

「ち、違うんですっ! 私は……」


 レナさんが何かを言いかけた所で、


「レナ! こっちへ」

「……はい」


 男の指示通り側へ。

 レナさんの表情を見る限り、仕方なく従っているように見えるけど、所有者はベルンハルト伯爵だよね?

 それなのにレナさんが従っているという事は……この人も所有者って事?


「あっ! もしかして、ベルンハルト伯爵の息子!?」

「そういう事だ。だが、のこのことこんな所へやって来たのは愚かだったな! くらえっ! 闇魔法マリオネット! カーディを支配しろっ!」

「カーディさんっ! 精神を集中させて、魔法に抵抗してくださいっ! カーディさんが操られてしまったら、シャルロットさんやマリーさんまで……」


 男が何かの魔法を使い、レナさんが叫び、マリーとクリスが不安そうに僕の顔を見てくる。

 だけど……あれ? 何とも無いんだけど。

 何か魔法を受けた感じが少しもしない。

 なので、心配ないと皆を安心させようとしたんだけど、


「ご主人様っ! ……んっ」

「あぁぁぁっ! マリーっ! どさくさに紛れて、お兄ちゃんに……お兄ちゃんにキスしたぁぁぁっ!」

「ま、マリー? この状況で、一体何をしているのかしら?」


 突然マリーに口を塞がれ、何も言えなくなってしまう。

 少ししてマリーが僕から離れ、


「お、お姉様。違うんです。古来より精神支配系の魔法は、ショック療法で治すのが一般的です。私が治癒系の魔法は得意ではない為、ご主人様にキスをする事で、闇魔法を解除しようと思ったんです!」


 どうして突然キスをしてきたのか説明してくれた。

 なるほど。理由は分かったけど……僕、何も変化が無いように思えるんだけど。


「な……何だと!? ならば、もう一度するまで! 闇魔法マリオネット! カーディを支配っ!」

「じゃ、じゃあ今度はクリスがっ! ……え、えへへ。き、キスしちゃった。起きてるお兄ちゃんにキスしちゃったー!」

「く、クリスさんまでっ! で、でしたら次は私が……ほら、早く闇魔法を使いなさいっ!」


 いや、シャルロットは何を言っているんだよっ!

 あと、クリスの発言も怖いんだけど。

 起きている……って、僕が寝ている時に何かしていたのっ!?

 というか、そもそも闇魔法自体効いてないからね!?

 これ以上、誤解でキスさせてしまう訳にはいかないので、


「待った! さっきから僕に闇魔法は効いていないから!」


 短く宣言し、氷の魔銃を男に向かって撃つ。

 しかし、


「……ウインド・シールド」


 やはりレナさんの防御魔法によって、防がれてしまった。

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