第一章 最強の用務員爆誕(1)
SLは世界で最も売れた戦略シュミレーションRPGである。
SRPGとも呼ばれるこのゲームはマス目となったフィールドの上でプレイヤーが任意のキャラを選んで動かし、敵を倒す。すごく簡単に言うと、ステータスのある将棋だ。
「何でよりにもよってこのゲームなんだよ……」
不満が漏れる。
これがアクションRPGだったり、MMOだったならばスキルを手にして戦うとか、チート能力に目覚めたり……なんて展開があったかもしれない。
だがSLにはそれがない。
あるのは職業固有のスキル、そして上がるのはステータスのみ。それもレベルアップ時にランダムで、だ。
「それに問題はそれだけじゃないしなぁ……」
このゲームの問題点はそれだけではない。
先程戦略シュミレーションと言ったように、このゲームは戦いがメインだ。それも戦争という大きな戦いの。
そして戦にはあれが付き物だろう。
犠牲。
ゲーム上では確か第三部。平和だった学園が戦争の開始地点となる。
そこで生き残ったものは先程のレイラを始めとした数人。その中に俺は当然含まれていない。
「というか用務員って、こんなキャラいたか? レイラの故郷の話とかなかっただろうし……てか、そこそこイケメンだけど、自分じゃない顔を鏡で見るのって違和感しかないな……」
金髪に青目。
特徴だけだと主人公みたいな見た目ではあるが、そこまでかっこいいわけでもない。普通の脇役って顔だ。廃プレイヤーの俺ならば、プレイアブルキャラを忘れるわけはないと思うのだが見覚えは……。
「いや、あるわ」
気がついた。
このキャラは序盤のチュートリアルキャラだ。
「初心者プレイヤーに操作を教えるために使えるユニットだ……確か名前はフラン。そう、フラン」
主人公キャラを小屋まで連れてくると、チュートリアルをしてくれる初心者のためのキャラクター。
俺は何周もプレイしてお世話になることも無くなっていたので完全に忘れていたが、この顔は間違いなくフランそのものだ。
「懐かしいなぁ。小屋に何故か地下室があってそこで色々なチュートリアルを受けるだよなぁ……って、待てよ? チュートリアル……?」
目下の問題は戦争に生き残れるかどうか。ストーリーに関与しないキャラのため、生き残るかは定かではないとなれば力が必要だ。
そうなればチュートリアルが使えるかもしれない。
「確かチュートリアルにはレベルアップのチュートリアルがあったはず……」
本来ならば何体も敵を倒さなければ上がる事のないレベルを一発で上げてしまうチュートリアル。それがこの世界にもあって、きちんと機能するとすれば……。
「ゲームストーリー開始前からレベルMAXに……!?」
それが可能であればチュートリアルを駆使して最強にだってなれる。
「よし、決まったら早速……」
「早速校庭の草刈り始めてくれるかしらぁ?」
「レイラ先生!?」
ゲームでは見れなかった鬼の形相で部屋を覗き込む女性が一人。
「後一週間もないんだから早くしないとダメじゃないかしら?」
「す、すみません!!??」
というわけで異世界転生一個目の仕事は草むしりとなったのであった。
ブックマーク、高評価ありがとうございます。