#2
精神科にだって行った。
薬だって飲んだ。
でも、就職をした時に出会った一人の同期に、人生を変えてもらった。
私は変わらず人が嫌いだった。
だからその子の事だって受け入れては居なかった。
俺様的なその考え方。ものの言い方。全てが受け入れがたかった。
でも、後に一番の理解者になるとは、当時は思わなかった。
親しくなるにつれ、それでも心の中では信用が出来なかった。
それまで自分の中では親しいと思っていた人が、変わってしまったから。
親しいと思っているのが、私だけだったから。
そんな思いをする位なら、私は一人でいいと思った。
だって、ずっと一人だった。
だから、今も昔も、そう変わらない。
辛いなんて思うことも無い。
でも、彼女は違う。
私の全てを知っても私を見捨てなかった。
その全てを私の一部と、称してくれた。
親ですら貶し、遊び扱いしたこの体中の傷は、それでも私の
人生の一部だ。
一度だってふざけて付けた事は無い。
本当にどうなっても良かった。
死にたくて、死にたくて、その繰り返し。
彼女に諭され、私はリストカットを止めた。
どんなに小さな自傷行為だって止めた。
暫くは自傷行為をしたい衝動に駆られた。
それに耐え忍ぶのは怖ろしく大変だった。
何しろ、それまで『彼』がらみ以外では止めた事が無かったのだから。
しかも『彼』の時は、精々二〜三週間程度。
期限付きの我慢だからまだ何とかなった。
でも、今回は違う。無期限だ。
出来る事なら、ずっとそんな事しなくても済むようになりたい。
まともな人間として生きて行きたい。
そう思った。
これを繰り返す以上、私はきっと普通の人間じゃない。
過去、身体に刻んだ物は、どうしても消える事は無い。
そうしてしまった事を、後悔はしていない。
そうしなければ私は生きていけなかった。
生きているという事を確認する方法が、リストカットだっただけ。
でも、世間の目はそうではないだろう。
今のご時世ではそれは決して珍しくない。
数え切れないほどいる人口で、私だけがそれをしているわけが無い。
私しか居なければ、そんな専門の病院も存在しないことだろう。
まあ、何百人と子どもがいる小学校で苛めを受けているのが
自分だけだと勘違いしていた時期もあったが・・・。
仕方ない。だって周りを見る余裕なんて無い。
毎日泣いて過ごして、毎日俯いて過ごした。
自分のクラス以外を見ることなんて無い。
勿論、友達も居ない。
幼馴染だって、私が苛められているのを見て見ぬ振りをした。
それは当たり前の行動だろう。
誰だって傘で叩かれたり、石を投げつけれれたりはしたくないだろう。
周りでそれを見て笑ってる連中だって同罪だ。
いや、むしろそれを行っている連中より性質が悪いかも知れない。
己の手は汚さず、ただ見て笑っているだけなのだから。
そんな事が積み重なり、私はすっかりと人間が嫌いだった。
過去形に出来ないのは辛いところ。
未だに私は人が苦手。
男女問わず、信用は出来ないし、一緒に居るのも辛い時がある。
苦しくなるんだ。
どうしたらいいのかわからない症状に駆られる。
そこから逃げ出したくなる。
落ち着きがなくなって、じっと下を見るだけだ。
その人達がこちらを見て笑ってると、馬鹿にされているような気がする。
勿論、そんな事は無い。
ただ私が普通では無いから笑っているだけなんだろう。
でも、酷い被害妄想が襲う。
目を合わせるのが怖い。
考えを、全て読み取られてしまうのではないかと。
当然だがそんな事は無い。
能力者じゃあるまいし、目を見ただけで全てが分かる人なんてそうそう居ないだろう。
いや、この世には一人たりともいないかも知れない。