表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/19

『彼』と崩壊していく私

何より大切に想っている人がいる。


たった一人だけ、その人だけが私を生かしてくれた。


粉々になった心に、暖かいものを注いでくれる。


『彼』に会える日が楽しみで仕方が無かった。


会えると分かっている一週間前は、寝るのも勿体無いほどで

緊張して興奮して大変だった。


生きてるという感覚が殆ど無いというのに。


『彼』と会える時は、自傷行為を自粛する。


もしちょっとした事で傷が開いて出血でもしたら大変だから。


会えるのは楽しみで仕方が無い。


その気持ちで、自傷行為を抑える。


『もう直ぐ会える』


そう思う事で何とか耐えることが出来た。


『彼』に会い、心に暖かいものを溢れんばかりに注いでもらう。


そうすると、暫くは何もしなくても生きていけた。


生きているという感覚があった。


でも、もとより小さな欠片の心は、温かい物を零してしまう。


溢れんばかりに注いでもらっても、細かすぎてそれを保てない。


心は見る見るうちに涸れていき、私はまた自傷行為に明け暮れるしかない。


それをすることで、私は生きている事を感じ取っていた。


痛みがある。


最初はそれだけ。


でも、徐々に酷くなってくると痛みがなくなる。


痛みを感じなくなった時、私は絶望した。


ああ、私はもう生きていないんじゃないか。って。


そう思った時から、傷は深くなっていった。


血が多く滴るほど、私は生きていると実感した。


死んでいたら血は流れないでしょう?


生きているから、鮮血が滴るわけです。


そういう風に、考えるようになってしまった。


自傷行為は、毎日行われていた。


『彼』に会う少し前を除いて。


リストカットも絶え間なく行われた。


親の目も、兄や姉、同級生達を気にすることはなかった。


だから知っている人も居ただろう。


何しろ、手当てをきちんとしていなかったから。


でも気に留めることも出来ないほど、私はおかしくなっていたのだ。


手当てをちゃんとするようになったのは、いつ頃だっただろうか。


記憶には残っていない。


傷が深くなったから、絆創膏を貼るようになった位か?


繰り返されるそれは、取り返しの付かないことも起こる。


左利きの私は、主に右腕を切っていた。


右腕に、切れるスペースが無くなって来て、切る腕が替わった。


利き腕の左腕を切るようになった。


血管がくっきりと出ているところを主に切っていた。


特に切りやすかったのは肘の内側。


柔らかいし、血管は良く見える。


そこを切った時、左腕が伸びなくなってしまった。


変な風に切ってしまったらしい。


治った時、腕がつる様になった。


ピンと、見えない奥のほうで何かが起こったのだ。


途中までしか腕が伸ばせない。


無理に伸ばしたら、筋が切れてしまうのでは無いかと思った。


だから無理をせず、自業自得だと思った。


特に気にする事無く過ごし、次第にそれはなくなった。


腕は、ちゃんと最後まで伸びるようになった。


それが良かったのか悪かったのか、わからない。


変に傷をつけて、腕が動かなくでもなれば、それ以降のリストカットは

なかったかもしれない。


初めてリストカットをしてから、十年間ほど私は自傷行為を続けた。


止めることが出来なかった。


もう、おかしくなっているのは分かっていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ