#1
以前はスーパーで一日何百人とのお客様と顔を合わせていた。
忙しくても暇でも、それなりに『自分』と言うものがあった。
私じゃなければ出来ない。というわけじゃない。
そんな大それた役割ではなかったから。
代わりの人間なんていうのは、幾らでもいるものだ。
私でなくてもいい。
人と顔を合わせるのが好きだったわけではない。
ただ、新入社員として受かったのがスーパーだっただけの話。
それしか経験が無いから、そこを辞めてからも私はずっと
スーパーを転々とした。
スーパー業務が好きだったか?と聞かれたら、答えは『いいえ』。
人は好きではなかった。
過去に捕らわれすぎていた私は、人が嫌いだ。
今も昔も、特定の人間を除いて好きになることはなかった。
初恋は人並みにあるが、恋愛云々はない。
人が信用できないから、必要以上に想うことは無い。
そんな私がどうしてずっとスーパーに勤めていたかといえば
お客様の中のお子様を見るのが好きだったから。
そうは言っても、変態的な好意ではない。
ただ単に、子どもが好きだった。というだけ。
レジ業務はとても暇だ。
お金を扱い、お客様と直接的に対話をする。
それが一番多いのはレジだ。
レジは店の顔と言われる。
レジの対応一つで、その店の良し悪しが分かったり、
逆にその対応一つでクレームも付く。
お客様にも、パートさん、バイトの方々にはとても良くして貰った。
でも、私という人間はとても穢れていて、人に良くして頂ける様な
存在ではない。
悩みも何も無いといわれた。
そう解釈されていた。周りからは。
でも、実際は違う。
私は悩みだらけだった。
死にたくて仕方の無い日々を過ごしていた。
隠れている腕は、傷だらけだった。
色んな物が積もり積もって、私は自殺願望が強かった。
若かりし頃、それに手を出してしまった。
リストカット。また、それ以外の自傷行為に。
躊躇いはなかった。
それをしてはいけないというストッパーは私にはなかった。
色々有りすぎて、もう限界だった。
最初は痛みがあったそれも、次第になくなる。
心の中で大切にしていた何かが、音を立てて崩れる。
大切な人を失うたびに、おかしくなる。
私の心は、既にボロボロで、細かく砕かれていた。
苛めを受けることで心は崩れ、それを踏みにじられる。
その繰り返しで、私には心という物が無いように思えた。