久しぶりの感覚
数回同じ所を切りつけ、痛みがあるところまで繰り返した。
血が膨れ上がり、たれ流れていく。
いくら拭っても血は止まらない。
ピリピリするような痛みが走った。
ああ、やっと痛覚が繋がった。
そうぼんやりと思った。
手当てをして翌日、忘れていた事を思い出したそれは自分の肌が弱いこと。
大きめの透明な絆創膏をつけたら、縁から皮膚が溶けてしまったのだ。
まぁ、衣服が当たりすれてしまった。と言うのも理由の一つだろうが、本来の傷より余程痛い。
昔から、自傷行為より絆創膏でのかぶれの方が酷かったことを思い出した。
時、既に遅し。
リストカットもするつもりだった。
でも仕事で水に良く触れるので、手首は無理だった。
いつもなら幾度となく切りつけ、何箇所何十箇所と傷を付けた。
そうしないと生きてる感覚が無くなるからだ。
血が止まると駄目。
それ故に手当てをしても血が止まらず、ブラウスを赤く染めていた事もあった。
あの時は鈍い感覚ながらも『洗わなくちゃ』と思った。
親は私がリストカットをしているのを知っていた。
でもいらない子に向けられる暖かい目は無い。
すっかりと生きる意味を無くした私は、感覚もなく生き長らえた。
彼女に出会い、リストカットもそれ以外の自傷行為もやめた。薬も、止めた。
だからといってまともには戻れない。
あれから四年と数ヶ月、抑えていたそれに手を出した。
今までより持続しなかったのは何よりの救い。
二日三日、同じところを切り開くだけで終わった。
あまりにも人間味がなくやる気がなくなったのかも知れない。
何のやる気だよって感じですが…。