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七話『勘違いは広がり、波紋を呼ぶ』


 昼休み、居心地が悪いから、とナオトは教室に居らず、昼飯を買いに行こうと購買に向かっていた。

 教室では女子たちが黄色い歓声をあげて、マキの周りに集まっていた。


「ねぇねぇマキさんって、なんでナオトくんと許嫁なの? ナオトくん今いないし、教えてよ」


 クラスの一人がマキに対して質問をする。

 マキが悩んだ素振りを見せて、話し始めた。


「昔、幼馴染で結婚の約束をしたのだけど――――」


 過去の話を聞いた者の中には拝む者もいて、尊いと思う気持ちが揃っていた。


「純愛って奴じゃん! うわぁ~、マキさんのトラウマを覚えてて、それを救ってくれるなんて王子様みたい」

「そう、ナオトは王子様なの、カッコよくて素敵で好きな人......うへっ」

「え?」

「……ナオトはただの許嫁だから」


 マキは手を組んで、瞳を僅かに下へ降ろした。

 悲恋さを予期させるような面持ちで呟く。


「でも、他の女性を十年以上好きだったらしいの。クールで真面目で優しい人なんですって……」


 女子の目の色が変わったのはこの呟きを聞いてからだ。

 マキを可哀想と呼ぶ者も居れば小金ナオト絶対殺すと言う者もいる。


 だが、落ち着いてみると全員が一つの答えの行き着いた。


 (((それ、あなたのことじゃないの)))


 *

 

「……なんも買えなかった」


 購買は運動部によって占領されており、マキを好きな男子から敵意を向けられたのだ。

 今日広がった話とは言え、マキのこととなると広がるのも早い。

 流石に男子全員から直接的なことをされた訳ではないが、こうも注目されるのは苦手だった。 

 やっぱりマキの人気は凄い、俺が思っている以上に影響を及ぼしていた。


 教室に戻ると突如、真っ黒な影に廊下まで押された。

 

「ナぁぁぁオぉぉぉトぉぉぉ!」

「なんだ!? ……って、テツかよ」


 涙を垂れ流し、未練に満ちて朽ち果てた霊ではなくテツだった。

 本気でビビった。教室に入った瞬間に飛び掛かってくるとは。


「うばんだこばらー!」

「せめて日本語で喋れよ」


 クラスの様子はどこか殺気があり、入ろうとすれば何か起こりそうな気がした。

 ほんと、ヤバいことになったと思う。

 

「お前は俺と同じ年齢イコール彼女なしだと思ってたのに!」

「誤解だ。確かにマキは許嫁だけど、彼女じゃない」

「あぁ!? ここまで来てシラを切るつもりか!」

「話を聞けっての」


 俺は許嫁が子どもの頃約束したことで、マキは律儀にもその約束を果たそうとしてくれているだけなんだ、と話してこの前のことも話した。

 それでも恨み顔はされた。


「ナオト、お前って鈍感だろ」

「スズみたいなこと言いやがって、結構勘はいいんだぞ」

「だって、女王はお前が好きだと思うんだけど?」


 手を左右に振って軽く否定する。

 まったく、俺の悪友は何を言い出すかと思えばありえないだろ。


「ないない。この前だって、やんわりと聞いたけど、告白しない方がいいって言われたんだぞ?」

「……誤解がある気がするな」


 俺の言葉をやけに深刻そうに構えたテツが、指を鳴らした。

 

「そうだ、勉強会を開いてみろよ」

「べ、勉強会?」

「ああ、勉強だったらさりげなく近寄れるだろ? その反応で好きかどうか判断してみるってのアリじゃないか?」


 反応で確かめるというテツの提案は、アリかもしれない。

 だけど、さりげなく近寄るって……難易度高いな!


「たぶん、俺が嬉しくて卒倒する可能性が高い、かつ怖い」

「お前なぁ……」

「仕方ないだろ! それで嫌われたらどうすんだよ!」

「考えすぎなんだって、男らしく構えろ」

「うっ……まぁ気が向いたら」

「気が向いたらって絶対しないやつだろ、今すぐやれ」

「あのなぁ、タイミングってもんがあるだろ? やるから、待っとけ」


 諭されるまま、俺はテツの提案を受け入れる。

 テスト勉強ね。そういえば近々テストがあるな、スズと一緒にやれば多少は緊張もほぐれるはずだ。あとで誘ってみるか。誘えたらだけど。


「……ナオト。お昼」


 いつの間にか、マキが手にお弁当を持っていた。

 もしかして、俺のお弁当を作ってきてくれたのか!?


「スズちゃんから、今日お弁当作って渡しそびれたらしい」

「んな馬鹿な!? アイツがお弁当なんて珍しい」


 青い布に入った包を受け取りると、信じられないくらい重かった。

 ……重くね。明らかにお弁当って重さじゃない、中身なんだ。


「さっ行きましょ」

「お、おう」

「女王、少し待て」

「……何?」


 引き留められたのが癪に障ったのか、何処か苛立ちを含んでいるように思える。

 邪魔しないで、と言ったような瞳でテツを睨んだ。


「ナオトがな? 勉強会しようって言いだしたんだ」

「お前っ! 勝手になにを言い出すんだ」

「勉強会……? ナオトの家で?」

「そうだぜ、行くか?」

「行く」


 即答だった。

 待って、俺の意見は?

 

 テツが親指でこちらに頑張れよ、と合図を送ってきた。


「まっ俺は行かねえけどな」


 お前は来ないんかい。

 テツはただ面白がってるだけにしか見えない。

【――お願い――】

 ブックマーク及び★★★★★をするととても作者が喜びますm(_ _)m

 『続きが見たい』って方はぜひお願いします……!

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