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二十四話『お守り』

 

 お祭りでは人が多く集まっていた。

 田舎も相まって、人は少ない。


 一応、この後マキとデートの約束があるものの、それまでの時間は距離を置いていたかった。


「いいのか? 彼女とデートした方がいいだろ」

「せっかく実家に帰ってきたんだから、おじさんの手伝いくらいさせてくれよ」


 親戚のおじさんと会って、バイト代をもらえると聞いて手伝っている。

 ここが都会であれば屋台はかなり忙しいかもしれないが田舎は暇だ。ポツポツと人が焼きそばを買っていく。


「ナオトの彼女さん、マキちゃんだっけか? 美人だよなぁ」

「……まぁ、マキは美人って言うより可愛いんだ」

「ほう、可愛いのか」

「ああ、人一倍頑張り屋さんで、俺が傍にいるとよく笑うし、素直じゃない一面もまた照れくさくて」

「胸焼けしてきたな」

「……すまん忘れて」


 俺、暇さえあればマキの話をしてるな。

 思い返すと恥ずかしくてそれ以上に言葉がでない。


「……だけど、マキといざ付き合ってみたら、怖いんだ」

「怖い? 何を悩んでいるんだか、男らしく行けよ」

「そんなに強く行けないよ」


 黙々と作業を続ける。これ以上言うと自分の心が暴かれてしまいそうで口を紡ぐ。

 

「へーい、そこのお兄ちゃーん」

「ん? ……外国人?」

「そうデース」

 

 小柄でサングラスに、大きめの鼻が特徴的な女性が居た。

付けているのはパーティー用の偽物に見える。

 ……スズじゃね? 


「ワタシ、この地域に遊びに来ました~!」

「いや、スズだろ」

「ち、違いマース」


 何やってんだコイツ。

 わざわざ変装してまで会いに来て……てか来るんだったら一言言えよ。


 こうして目の前で変装するからには意味があるんだろ。

仕方ない、付き合ってやるか。


「どこから来たんですか?」

「えーっと、ゆーえす、えー?」

「で、その立派な鼻は?」

「これはー、遺伝デース」

「遺伝ね……」


 気の抜けた一瞬を狙い、スズのサングラスと鼻を取った。

 グラサンの下はやはりスズだ。


「……何やってんだお前。いつ来たんだよ」

「さっきだよ! あーっもう、お兄ちゃんやめてよ!」

「いや、それはこっちの台詞なんだが?」


 また下らないことをしようとしてるんだろうな。

 呆れていると俺に携帯を突き出した。


「これ! 知ってるでしょ?」

「……いや? 知らんが」


 その画面には『縁結びの神社にて、お祭り限定お守り! これさえあれば二人は一生離れない!』


 確か、ここの通りを言った先にある神社だよな。縁結びが有名な場所だったってのは知ってるけど、これまた急に。


「最近人来ないらしいからねぇ、こういうので客寄せだってさ」

「へぇ。で、変装してまで教えたかったことがこれか?」

「……まぁ、作戦の一つだったんだけどね」


 作戦とは……また禄でもないこと考えてやがるな。

 そう簡単には行くか。


 否定的な言葉を並べると、スズが人差し指を突き出して言う。


「お兄ちゃん!」

「お、おう。なんだよ」

「もしかして、今不安なんでしょ」

「……なぜに」

 

 流石は我が妹、俺がスズの変装を見破ったように俺の気持ちも察しているようだ。

 

「分かるよ。マキ姉と傍にいるのが怖いんだよね?」

「……まぁ」


 肯定とも否定とも取れないニュアンスで言うと嫌な顔をされた。お前まで俺を男らしくないってか……。間違ってないけど。


「付き合うと別れるのが怖い……うん、大丈夫。そういうのはよくあるらしいよ!」

「ほ、本当か?」

「うん! だから、お守りでも買って自信つけなよ! そしたらもう一歩進めるかもよ……?」

「も、もう一歩?」


 なんだなんだ。

 魔性に吸われていくようにスズの提案に耳を傾けていた。


「キス、とか」

「き───っ! し、しろと!?」

「良い頃合いじゃない?」


 他のカップルがどれくらいでキスをするのか知らない。

 しかし、そういうのは雰囲気とか順序とかが必要だろ。


「数歩譲ってそうだとして、もし、もしだ。俺とマキが別れる可能性があった時に俺がマキの初キスを奪ってのは……怖い」

「自己肯定感低すぎ……じゃあ、お守りを買ったら?」


 確かに。あまり神様とかを信じている訳じゃないが、お守りか。

 

「よし、分かった。買ってくる……」

「急いだ方がいいよ~、どうにも数が少ないみたいだから」

「おう! ありがとな!」


 


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