二十三話『敵対同士』
休日に追試のテストを受けながら、親指の爪を噛んだ
……分からない。なんだこれ、本当に人の使う言葉かな。この丸っこいグラフとか何、一体どんな意味が?
もしかして、他の図を照らし合わせると宝の地図になるのかな。
とりあえず埋めちゃえ。
テストを終えて、家に帰ろうとすると知っている顔が立っていた。
「あっお兄ちゃんの友達の人」
「おう。どうも、テツって言うんだ」
「何の用? お兄ちゃんなら今いないよ」
「それは聞いてる。そうじゃなくてスズちゃん悔しがってるかなって。ナオトと女王くっ付けられなくて」
「……やっぱり、何かやったんでしょ」
「まぁ、ちょっとだけね」
やはり、あれは何か仕組まれていた。だから釈然としなかったんだ。
お兄ちゃんはまだ覚悟を決め切れていなかったし、マキ姉も曖昧だった。その中で恋人関係になったなんて信じられない。
「ふーん。で、私の悔しい顔でも見に来たんだ」
「いやいや、俺は誰に対しても平等でイケメンでありたいんだ。ぶっちゃけ、あれは偶然にも成功しただけだし」
私の役目を横取りされたような気分で、釈然としない。やはり腹の底から煮えくり返るような怒りがわいてきた。
許せん。
「あなたがお兄ちゃんとマキ姉をくっ付けたかどうかは知らないけど、あの二人に対して直接的な干渉はやめて」
「そりゃ、そっちだって人のこと言えないだろ? デートを無理やりさせたくせに」
くっお兄ちゃんは口が軽い。
「今後は、”私”が二人を導きたいから」
「導くって……なんでだよ」
「恩を返すため」
「へぇ……それは俺も同じなんだよね」
「はい? あなたにも何か恩があるの?」
「まぁ、そんな所。で、俺にとっちゃスズちゃんは邪魔な訳。スズちゃんにとっても俺は邪魔でしょ?」
この男が言っていることは分かる。
お兄ちゃんとマキ姉を幸せにするのに、お互いは邪魔な存在だ。
「勝負しようぜ」
「勝負?」
「二人を俺とスズちゃん、どっちが幸せにできるか。負けた方は関わらない」
「乗った。どうせ私が勝つからね」
自信があった。私は二人のことを誰よりも知っている。
こんなポッとでの男になんかに負けない。
「いいのか? ちなみに俺は二人をくっ付けるという点でリードしているぞ」
悔しいがその通りだ。
私は無理やりくっ付けようとしたが、失敗した。なのにこの男はそれに成功したんだ。その点、どんな手段を用いたか知りたい。
「聞いた話だと、マキ姉が遭難しかけたんでしょ? あなたの仕業?」
凄んだ声で睨みつけると両手をあげた。
「まぁうまく行きすぎたって所だな。でも、あそこらへんの地形は既に調べ済みで川や崖とかはない。それに、これもあったしな」
手元に小さな機械を持っていた。
赤く点滅し、私にかざした携帯には地図と赤い点がある。
「……GPS?」
「その通り。女王とナオトにくっ付けておいた。そして、二人の過去の話を聞いて、これは行けると思ってな。安心しろ、女王が隠れるであろう場所もあえて誘導した。あそこは見つけやすいし安全だからな」
「……そこまでして、その執念だけは認めてあげる」
「ま、俺くらいになると余裕ですよ」
鼻を高くする男に対し、私は悔しかった。
ここまでして、お兄ちゃんに恩返しをしようとする男の理由はなんだろう。
「じゃあ! さっそく勝負しようよ」
「いい気合だな。で、何するんだ? あいつらいないだろ」
「明日、実家でお祭りがあるんだ。そこで――――」
作戦はある。ここから、私はこのテツという男から二人を取り返す。
「キスさせよう」
すみません。私の中で読者の方々と意識の乖離が発生したので時間をください。
正常に戻ればまた書き始めます。
 




