二十一話『おばあちゃんもそうだった』
お祝いの垂れ幕を和室に飾り、カラフルな紙が宙を舞った。
こうなったのには、原因がある。
「お祝いじゃー!」
俺は別に結婚するなんて一言も言ってないのだが、焦ったマキが「し、したいです」と口走ってしまった。
それをきっかけにじいちゃんが近所に電話をかけて人を集めたのだ。
「見てよ、あれがうちの孫のお嫁さんなの。美人さんでしょ~?」
「あの、おばあ様、あまり騒がないでください……」
マキはおばあちゃんに連れられて、奥の襖へと向かっていた。 まさにお祭り状態で、無垢な木材テーブルには料理が並んでいる。
この一瞬でどうやって作ったんだよ……恐るべしおばあちゃん。
「ナオト~。お前ようあんな可愛い子捕まえたな!」
「いや……急にお祝いとか、それに結婚も年的にできないんだけど」
細かい話はいいから、と言って飲み物を勧めてくる。
唐突な流れに困惑した。
「で、どっちから告白したんだ?」
「結局それが聞きたかったのかよ、じいちゃん」
「気になるじゃろ」
「マキからだよ」
じいちゃんの目の色が変わる。顔を歪めて「なにぃ~?」と酒の臭い口臭が鼻腔をくすぐった。
「ナオトなぁ……こう、男らしくないでどうすんじゃ~!」
「ど、怒鳴るなよ……」
「うちのおばあちゃんは、昔郵便局の局長やっててな?」
あー、耳にタコができるくらい聞いた話だ。
集まってくれた近所の人たちも苦笑いしながら、またいつもの話だと聞き流す。
「そりゃぁもう、怖い人だったんだ」
「何回も聞いたよ。冷酷な人だったのを、じいちゃんが告白して今の明かる人にしたんだろ」
「いやいや、冷酷なんてもんじゃない。他人からは完璧でカッコいい人物で、みんなの憧れだったのさ」
「ふーん」
何となく、それだけ聞くとマキに似ている気がする。
別人だとは分かっているが、じいちゃんと似た人を好きになるって、血が繋がっているんだなと思った。
話を流していると、疲労したマキが隣に戻ってくる。髪の毛が乱れ、服も所々ヨレヨレだった。
「つ、疲れたわ」
「大丈夫か……?」
「え、ええ。明日お祭りがあるらしくて、その着付けを教えてもらっただけ」
お祭りか。そういえば、そんなのあったな。
「無理しなくてもいいんだぞ? 今日帰るつもりだし」
日帰りだと大変かもしれないが、マキにストレスを与えてしまうよりはいい。
過保護と言われようが構わん。
「日帰りなんて許さんぞ! 泊ってくれ。頼む、老い先短い老人の頼みじゃ!」
「そうよ! せっかく着物まで用意したのに」
「マキに迷惑だろ。少しは遠慮しろ」
「い、いいの。私は嬉しいから」
マキになだめられるとそれ以上は何も言えない。
俺自身も、実のところ久々にじいちゃんい会えて嬉しかった。元気そうだし。
ある程度宴会が落ち着くと、場が静かになった。
すでに日も落ちていて、外は暗い。
お風呂も済ませて、ようやく肩の力を抜くとおばあちゃんに寝室を用意してもらった。
「……待った。布団が一つなのは分かる。分かるが――――なんでマキと一緒なんだ」




