001 海
2020/12/08 一部修正
つばめ。あの鳥はつばめだ。
海を目指そう。
今までは行こうと思いさえすれば簡単に行くことができた場所でも、この世界ではじゅうぶんな目標になり得るだろう。そもそも海が存在するのかどうかもわからないが、それならば一番海に近い何処かや何かだって構わない。青い海。きらきらとした、さんざめく、銀のまぶされた青い海。
どこかまでゆけたら、なにかができたら、そしたらきっと変わろうだなんて遅すぎる。その時まで待つ必要などないし、とにかく今をもって変えればいい。
失うものは何もなく、そう、例えば私は真っ当に生きる必要性を既に失った。本当はもっとずっと前から、或いは出生の時からそんなもの持ってはいなかったのかもしれないけども、まあそれは置いておいて……
海を目指そう。理由もこれ以上の意味も、今更考えなくていい。
ーー私が呟いた長い独り言である。もういいだろうと、唐突に、いや、実は相当昔からじわじわと考えてもいたことだったのだが、何にせよこの時、私は大きく性格の舵を切ってやったのだった。
異世界らしき場所に転移もしくは転生して、丸一日が経過した街角でのことだった。
『異世界で海を目指すフィクション』