第二話 家族の食卓
家が完成して、生活も落ち着いてきた頃。
夕飯を食べていた。
我が家は家族揃って食べるのが決まりだった。
座る場所も決まっていた。
いつもどおりの食卓。
母が言う。「週末のご予定は?」
「あぁ...。始まった...。」この頃には、この言葉の後の事が理解できるようになっていた。
「ごちそうさま」兄が居間から出て行く。食事は終わっていない。
もう一人の兄は、ご飯を急いで食べる。この兄、将次は、しょう兄ちゃんと呼ばれていた。
小さい兄、だから「しょうにい」だと思っていたが、実は「将」を何と読ませるかで夫婦喧嘩の結果「まさ」と読ませる事になったが父が意地になっていたらしく「しょうにいちゃん」と、どちらとも取れる呼び方になった。と、だいぶ大人になってから聞いた。
そして、しょう兄も急いで居間から出て行く。
父「ゴルフ」
母「またですか?先週もゴルフでしたよね」
父「付き合いがあるんだ」
父は多趣味な人で、車、ゴルフ、庭いじり、絵画、この頃は特にゴルフに熱中していた。
このやりとりの最後は決まって
母「たまには家族サービスをしてくださいよ!」
父は週休2日ではなかったので週休にゴルフに行くと「ボク」は2週間近く父と会わない時もあった。
そして、この言葉で毎回、父が怒る。
兄達は「週末の...」でこの後の展開を理解していたようでした。
「てめぇ、この野郎!」父が激怒する。
「こっちは、朝から晩まで働いてるんだ。週に一度しか休んでないのに、この上、家族にサービスしろって言うのか!」
毎回のこの言葉を幼い「ボク」はオロオロして聞いているだけでした。
母の「週末のご予定は」の言い方も嫌味っぽくて、「ボク」は、母も言わなくて良いのに、と思っていました。