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盗賊



俺は山を降りる事になった。


「おいヤマダ行くぞ」

「…… あぁ」

集落の広場には商人が買い付けて山盛りになった魔物や動物の毛皮と干し肉が積まれている幌馬車が先にゴロゴロと山道を下りていく。


コーン…… コーン

シーズンが始まり木こりの斧音(おのと)木霊(こだま)する。

「こんな早く去る事になるとはな…… 」


踏み締める土が乾くと狩猟を教わるハズだったのだが仕方ない。



俺が歩くとついてきて服の端を摘み、諦めた顔で手を離すをもう何度も繰り返すエリーに振り返って手をつなぐ。

「エリー、すまない」

「いいんだよ…… 山の女は強いんだよ? 」

涙を流すエリーに心が痛む。


本当に終わりなんだとエリーは下を向き唇を噛み締めながら自宅に戻った

エリーの父親は…… 高い岩に座り厳しい目で俺を睨み僅かに肩を上下させている。


「えらい睨まれてるな」

「あぁ、これは仕方ない事だ」

警護団のリーダー、ケゴは無表情に前を向きながら小声で俺に話す。


俺は…… 日本でも異世界(ここ)でも無責任なままだな。

自分のダメさに自己嫌悪しながら歩き続ける



下山途中に魔物が現れて即座にケゴがそれを殺す。


土が血を吸い込んで色が汚く変わる…… その汚泥はまるで今の俺のようだった。




変わらなきゃならんな…… せっかくやり直し出来る環境なんだしな。

人間、歳をとると心に棚が出来て自分の感じるものや考える方向を仕分けしてしまう。

思い込み…… というヤツか?


しかし身体が若くなった今、その棚が広がり心の許容範囲が無限に感じるのだ。




□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


「〈キーサーチ〉 」

俺は下山2日目の山中での休憩時間に暇つぶしとしてスキルを使う


冬の間に何度も繰り返し使って分かったのはキーサーチのkeyは鍵だけではなく|key-person《キーパーソン》やkey-word(キーワード)など抽象的な事にも作用するようだ。


初めに使った時に出た


▽key→800メートル


は俺が死なない為のkey(ヒント)だったんだろう。

キーサーチは発動する時により具体的にイメージを作ると知りたい事の精度は倍々に跳ね上がる。

例えば

①ケゴが

②何をしているか

それを〈キーサーチ〉で探ると


◁key→警護団ケゴ10メートル[剣の整備中]


と目の前に出る。たった2つの検索ワードを足しただけで

①ケゴが警護団に所属している

②10メートル西にいる

③剣を使う人物

という相手の情報を探れるのだ。


冬の間に〈キーサーチ〉を使いまくり精度はかなり上がった…… と思う

ただ、まだ分からない事もある。


スキル説明にはこうある


〈鍵を探して、開ける事が出来る能力(アビリティ)熟練度MAXにより全ての鍵を解除可能〉


〈開ける〉という意味が分からない。

それを解明する為に暇があれば魔力量がギリギリになるまで俺は〈キーサーチ〉を使い続けている。


「ヤマダ! そろそろ出発するぞ! 」

「ああ…… 」

ケゴが整備を終えた剣を鞘にしまってブーツの紐を結び直す。

ちなみに俺は山の集落で餞別に貰った大鉈(おおナタ)を手持ちで装備しているんだが今はいい


「ケゴ、そのまま聞いてくれ」

「…… 」

ピタリと一瞬ケゴの手が止まり、また紐を結ぶのを続ける

「これから2キロに待ち伏せがある。多分アンタを狙っている気をつけろ」

簡潔に要件を伝えるとケゴは次の足の靴紐を結び直す。


「なぜだ? 」

「オマエが死ぬと俺も口封じで…… だ…… 。 」

ケゴは無表情で俺に一度目を合わせ下山方向に目を向けガチャガチャと右手で分かりやすく(・・・・・・)腰の剣を鳴らし、その手でさりげなくピースをする。


ふん、お人好しめ…… 俺みたいな新参の意見を聞いて一応は用心するという事か。


俺は手で口を隠してニヤついた。


実は先程の休憩中にした暇つぶしのキーサーチで

△約2キロ→ 待ち伏せ[敵] 数10 脅威[小]


と出たのだ…… もちろん人間に対してもキーサーチをした検索ワードは

①この中の敵は誰か

②理由は?


それに対してキーサーチは商人2人と警護団2人の情報を教えてくれた。


△ケゴ 警護団

◁ヨズル 警護団 → 敵[理由→ 金]

△ブル 商人→ 敵 [理由→金]

◁サルー 商人見習い→ 敵 [理由→命令]


…… なんだよ味方はケゴだけかよ……

どうやらケゴはブルを部下として信用しているようなので俺は殿のブルの後ろを歩く事にする。


敵が踊り出たら無力化をしなければ俺も殺される可能性が高いからだ。


もし、ブルが変な動きをしたならその瞬間に後ろから対応しなければならないだろう……




荷が多くなり幌馬車に乗れなくなってしまった商人が何故か先導するように前を行く。

1キロを歩いた所で商人は回りをキョロキョロ確認して何かに目を止めた


———————— 木が不自然に揺れているな


どうやらあの揺れた木の下で襲うつもりなんだろう。


ケゴもそれに気づいたのか商人と揺れる木をチラリと見て自分の頭をポリポリと掻いた。

「あーあ」とか思ってるんだろう。



ゆっくりと幌馬車は下山の道を進みながら出来るだけ道の端に寄っていく…… 分かりやすいな荷と馬車が傷まないようにしたいのか


道の中央に腰ぐらいの高さの岩がある所で弓矢が飛んでくる。

ケゴはいつでも動けるように右足に意識して力を込めて歩いていたので初動が早くグルリと商人の方へ向かい地面を転がりそれを(かわ)して立ち上がると同時に商人の(アゴ)へ強烈なアッパーカットを食らわせる。


ゴキン! という音が俺にも聞こえて来た。

商人の顎はもう使い物にならないだろう。


ケゴのアッパーカットで商人が崩れる前に警護団のもう1人のヨズルが動く。

剣ではなく懐からナイフを出してケゴへ投擲(とうてき)しようとするがコイツが敵と分かっていた(・・・・・・・・) 俺は手に持つ大鉈(おおナタ)(むね)でヨズルの後頭部を殴りつける。



ヨズルの手から離れたナイフがケゴの足元近くに刺さるとケゴは白目を剥いて気絶したヨズルを一瞬睨むと弓矢が飛んできた方へ口から血を流す商人を掲げる。


金の出所(でどころ)だろう商人を盾にされては弓矢は使えないな。上手いぜケゴ……


しばらくの沈黙の後、痺れを切らした(ぞく)が前方から5人現れた。


事前に得た情報より人数が少ないのでキーサーチをすぐにかける


△盗賊5人→ 逃走 320メートル


キーサーチは本当に便利だ…… これから盗賊5人がどう出てくるか心配せずに済みそうだ。

「ケゴ、手伝うか? 」

俺の言葉にケゴは仲間だったヨズルを見て敵に目を戻す。


手伝ってもいいがヨズルを無力化したからもう大丈夫って所かい? ならば、ありがたい俺はもう一つの確認をする為にケゴを見つめた。


ケゴは剣や槍を持って駆けてくる盗賊が弓を持って無いのを確認すると商人を商人見習いに投げつける。


もつれて倒れる商人見習いの鼻を俺が思いっきり踏みつけるのとケゴが盗賊の1人を斬り殺すのはほぼ同時だった。


ケゴはどうやら強いようで、容赦無く盗賊を殴り腕を折りをした後に殺していく。

全く躊躇(ためら)いなくケゴが5人の盗賊を殺した所で俺は満足出来る答えをもらえて笑顔でケゴを見た。



どうやら、この異世界は犯罪者なら複数人を殺してもそれを当然とする政治環境があるようだ。


ヨズルを殺すのを止めた理由はこれで、日本のように犯罪者を自衛の為に殺しても過剰防衛と言われ逮捕される可能性があり怖かったのだ。



それは同時に今より強い力が必要であり、俺を見捨てた松本を訴えても意味がない可能性が高いという事でもあった。

タイトルは仮です

よろしくお願いします。

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