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夜空を映したユメsteXllar -ステラ-  作者: 渚桜
ゲームスタート
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32-1話 ー デート大作戦〜 凪咲view 〜 ー

 




 時刻は午前10時45分。

 ()は港エリアの一角にある公園のベンチに腰掛けていた。


 一緒に家を出たシャーロットは、その眩しいくらいキラキラした金髪を靡かせながら、元気に公園内に設置されているアスレチックで遊んでいる。

 こんな姿を見ると、普段の言動がしっかりしている分、年相応だなぁと感じた。


 白いブラウスとユニオンジャック柄のスカートは、まるで彼女の為に誂えたかのように似合う。

 遥希が天使だなんだと持て囃すのも頷けるわ……。




 対して私はどうだろう。

 髪型は普段通り、いつものリボンでポニーテールにしている。

 毎日頑張ってお手入れしているので、これでも髪には自信があった。

 服装は薄茶と桜色のチェックカーディガンと黒色の生地に一本の白いラインが入ったミニスカートで決めてみた。

 私もそうだけど、遥希も桜色が好きなので、少しでも好印象の色で攻める作戦だ。




 バックもちょっとお高めのオシャレポーチを肩から下げているスタイル。

 お化粧だってやった…… 慣れてないから、結局 "ほんのり" 程度だけど。

 最後に普段は滅多に使わないお気に入りのリップクリームを唇に一塗りして完成。



 男性から見ればどうかは分からないけど、女の子から見れば『あっ、この子今からデートなんだ』って分かっちゃうくらい気合いが入っている装備。

 そのせいか、散歩に来ている人達…… 特に男性の目線が突き刺さっているのがわかる。




 落ち着かない、変じゃないかしら?

 一時間も同じ格好して鏡の前に立って身だしなみを整えたにも関わらず不安で不安で仕方がない。

 反面、あぁ… 私今恋してるんだなって、我が子とながら思っちゃう。

 念のためもう一度フレグランスを振る。

 ダメだ、匂いすらも曖昧になって来た。




「…… ねぇ、そこのキミ、一人?」




 火照る体をどうにかしようと手団扇で誤魔化そうとしていた時、不意に知らない男性の声がした。


 振り返ると、そこには日焼けした金髪の男が二人立っている。

 ピアスやネックレスをチャラチャラつけていて、服装もお世辞にも好印象なものではない、如何にも遊び慣れていそうな出で立ちだ。

 大学生よりも上だろうか、少なくとも高校生ではない。

 …… もしかして、ナンパされてる!?




「ナギさーん…… あれ、この方々は?」




 状況に気が付いたのか、シャーロットがこちらに寄ってくる。

 今は来て欲しくなかったなぁ。



「フォーッ、そっちの子もレベル高ぇっ! どう、今日めっちゃ暑いし、どっかで冷たい物でも食べない?」



 もう一人の男が、シャーロットを見て更にテンションを上げる。

 二人とも下心が丸見えだ。



「…… いえ、待ち人がいます」


「そう言わずにさ? 集合時間になっても来ないやつって〜俺どうかと思うねー。そんなやつほっとこ、な?」



 冷たく遇らおうとしたが、チャラ男二人はめげない。



「あ、あの…… 私達、これから用事が……」


「うわっ、近くで見たらチョー美人じゃん!? 何、外人? それ染めてるわけじゃないよね?」



 助けようとしてくれたのか、シャーロットが勇気をだして発言したのが裏目に出た。

 男二人は益々私達に興味を示してしまう。

 全く不愉快な男達である。

 気にくわない。

 女性を誘うのであれば、まずは口の利き方から治して欲しい。




 海外の人を『外人』と言っているのにも腹が立つ。

 まるで差別しているようじゃない。

 しかも本人が目の前にいるんだから、『外国人』ってちゃんと言いなさいよ。



「……ですから、私達は今から用事があるんです! 他を当たって下さい!」


「怒らないでくれよー? お詫びの印に、そこのカフェでパフェ、奢ってあげるからさっ!」


「お前それゼンッゼン面白くねーべ?」



 私の怒声にも似た発言にも怯まずヘラヘラしているチャラ男。

 全くもって不愉快極まりない。



「まぁいいや、ほら熱中症になる前に早くいこーぜ?」



 チャラ男Aが手を伸ばしてくる。

 逃げようと思ったけど……なぜが身体が固まってしまって動かない。



「な、ナギさぁん……」



 シャーロットも得体の知れない恐怖心からか、私の背中にしがみ付いてくる。

 そして、チャラ男Aの手が私に触れようとした時だった。




「よっ、おまたせ」




 公園に素っ頓狂な声が響いた。

 そこには、普段は見ない私服を着た遥希がいた。

 いつも私服は『着られればおk』なスタンスの遥希が、きちんと身嗜みを整え、服もバッチリ着こなしているからか、昨日よりも…… カッコよく見える。



「…… なんだテメェは」


「コイツらの待ち人」



 ターゲットを遥希に変えたチャラ男Aは、ナンパを邪魔されたせいか、酷く不機嫌な顔で遥希を睨むが、等の遥希はいつも通り飄々としている。



「遅くなってすまんな。 てか待ち合わせは11時だったろ? お前ら早く来すぎ」



 ほれ行くぞーっと、ごく自然に差し出された手を握ってベンチから立ち、私はシャーロットと共に遥希の背中に回った。



「何このチビ、この子達のカレシ?」


「いや、家族っス」


「兄貴だか弟だかしらねぇけどさ、出しゃばんなよオイ」



 チャラ男ABは険悪なムードで遥希に迫るが、それでも遥希は余裕を崩さない。



「チビ、ねぇ。認めたくはないですが確かに仰る通りですわ。ただ、お兄さん達の方は気が小さいようですがね」


「…… 舐めてんの?」


「舐めるんなら砂場に落ちた飴ちゃん舐めた方が大分マシですわ。相手する価値もない」


「よし、一発殴る決定っ!」



 チャラ男Bが遥希の胸倉を掴もうと手を伸ばした。



「…… あっ、イデデデデッ!?」



 が、痛がっているのはチャラ男の方だった。

 関節技が見事に決まっていて、見ているこっちも痛くなってしまうほどの鮮やかさだわ……。



「お兄さんも良いお歳でしょ? 穏便に行きましょうや」


「テメっ!」


「あぁ、言い忘れてましたけど、コイツらの親って、あのFS(フォーシーズン)の重役でしてね。この島ではかなりの権力者なんですが…… そういやこの前、警察署長さんと呑んだーなんて言ってたかなぁ、あの親父さん……」



 堂々と嘘を付く遥希。

 事情を知らない者なら確実に信じてしまうような喋り口調。

 名俳優でもここまで咄嗟に演技はできないだろう。



「わ、わかった、わかったからっ! 早く手をっ、手を離せっ…… !」


「もう二人にちょっかい出しません? オレお目付役なんで、二人に何かあるとこっちが怒られるんですわ」


「やくっ、約束するからっ! はやくっ!」



 遥希が手を離すと、チャラ男Bは転げるように距離を取った。



「因みにオレ、ボディーガードも兼ねてるんでその辺のヤンキー程度が束になっても勝てませんぜ? 出来れば四人以上はお断りしたいですが」


「……クソっ、タダじゃおかねぇっ」





「…………あ?」





「…… ヒッ!?」



 たった一言。

 それだけで周囲の気温がガクリと下がった気がした。

 背中で聞いていた私ですら、嫌な汗が体全体から溢れて、お腹の底から凍えてしまうような感覚に襲われる。



「まぁ、ナンパするなーとは言いませんが、次からはちゃんとお互い同意の上でよろしくやって下さいねー」



 そんな空気も一瞬だけで、二言目にはいつもの人を食ったようなセリフを飛ばしていた。



「なんかコイツヤバイって、目がマジじゃん……」


「…… し、白けたわ、行こうぜ」



 チャラ男ABは早足で公園を去って行った。



「…………」



 隣にいたシャーロットも更に身を縮こませている。

 多分、チャラ男にではなく、遥希に怯えてしまったのだろう。

 …… 久し振りに彼が怒った姿を見た。

 滅多なことがない限り、怒りを抑えに抑えられる遥希が、一瞬でも怒りを表に出した。


 それは、チャラ男にムカついたから?

 それとも、私達のため?




「……いやぁ悪い悪いっ! まさかもう来ているなんて思わなかった」




 こちらに振り返って頭を掻く彼の姿は、いつもと変わらない、桜庭遥希だった。

 昔っからそう。

 読めないのだ、この男が考えていることは。

 私生活の中でならある程度分かるが、本当に大事なことや悩み事は絶対に表に出さないのが、遥希。

 言ってしまえば、相当な意地っ張りでもあった。




「は、は、遥希さぁん……」


「すまんシャーロット、怖かったよな? 慧神島の連中は基本的に良い奴らなんだけどなぁ、アレが前に言った()()ってヤツだ」


「怖かったです……あの方達も……… 遥希さんもっ」


「えっ、マジ? 穏便な笑顔のつもりだったんだけど」



 そんな遥希は、シャーロットの頭を優しく撫でている。

 …… うん、いつもの遥希だ。



「ナギもすまんな。 まさかこんな事…… に、なる……」


 今度は私に謝ってきた遥希は、言葉を止めた。



「……な、何よ?」


「…… その服、初めて見た。 アレだ…… 可愛いじゃん」



 なっ!?

 この男はいけしゃあしゃあとっ!



「遥希さん遥希さんっ、私はどうですか? 初めてお化粧してもらったんですよっ!?」


「最高。それ以外の言葉が思いつかん」


「やったーっ!」


 コイツはホストかなんかかっ!



「はぁ。ほら、時間も押してるし、さっさとデートコースを回るわよ」


「はーい、です!」



 シャーロットは目的地へと歩き始めた。

 私と遥希、二人きりになる。



「悪い、もっと早く来ていれば……」


「もう良いわよ。それより……」



 申し訳無さそうに謝る遥希に、手を差し出した。



「こ、恋人同士のプランでしょ? だから、私達も恋人らしく……演技しないとだから、て、手を繋いで……」


「あぁ、そうだな。……っほれ、んじゃ行こうぜ」



 余りにも自然に手を繋いでくれる。

 照れもしないで。

 昔は私がよく遥希に、手を繋いでくれとせがんでいたのを思い出した。



 やはり、妹としてしか見られていないのだろうか?


 一歩目から不安な幕開けとなったデートプランが始まった。



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