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第6話 聖剣が落ちてるなんて“普通”じゃない

日間総合32位! ジャンル別14位!

一旦落ちかけたランキングですが、皆様の応援により戻って参りました。

ありがとうございます!


2018/08/21 21:38 サブタイ変更しました。

 ぼくは冒険者認定試験に合格した。

 数日後には、仮のクエストがある。


 試験の延長線みたいなもので、最近冒険者になった人とパーティーを組み、低レベル魔獣を倒しに行くという。

 リーダーはリナリルさんだ。


 頑張るぞ!

 リナリルさんに、良いところを見せなくちゃ。


 そのために、ぼくは武器を探さなければならない。

 愛用の剣は村に置いてきちゃったし、街の武器屋を巡ることにした。

 幸い、最近もらった報酬がある。

 少ないけど、安い短剣ぐらいなら買えるかもしれない。

 心許ないけど、折角冒険者になったんだから、カッコいい武器をもちたいよね。


 【地形走査(サイトビジョン)】を使って、街の武器屋をピックアップする。

 近くの店に入ってみた。


「いらっしゃい。ここは武器屋だよ」


「あ、知ってます。えっと、この店で1番安い武器ってなんですか?」


「そうですね。この短剣ですかね」


 武器屋の店主さんは、カウンターの上に短剣を置く。


 んん? これが短剣?

 その割りには鉄の塊みたいに見えるけど。


「すいません。こんな玩具みたいなのじゃなくて、もっとちゃんとした短剣ありませんか?」


「お、玩具!! むぅ……。ちゃんとしたってねぇ。たとえば、どんなものが欲しいんだい?」


「そうですね……。材質はオリハルコンとはいいませんけど、ミスリルの一等鉱石を使ってるもので……。あとパッシブのエンチャントがかけられるものがいいです。魔宝石(スロット)は最低でも3つは欲しいですね。エンチャントの様式は、古代ベルガン語でお願いします。ぼく、あの言語しかまだうまく操れなくて……。だいたいこんなところなんですけど、ありますか?」


「そんなもんあるかぁぁぁぁああああ!!」


 怒鳴られる。


 え? え? ぼく、なんか気に障るようなこといった?

 ぼくはただ単に、1番低レベルの武器を要望しただけなんだけど……。


「じゃ、じゃあ……。どこの武器屋さんに売ってますか?」


「そんなもの“普通”の武器屋で売ってるものか!! 冷やかしなら帰ってくれ!」


 店主さんの顔がますます赤くなる。


 おかしいなあ。

 うちの村では、刃を鍬にして農具として使ってたぐらいなんだけど。


「そんな立派な武器がほしかったら、中央広場に刺さってる伝説の聖剣でも抜くんだな。ほら、とっとと帰った帰った!!」


 武器屋さんはぼくを追い出した。

 塩までぶちまかれる始末だ。


 なんで怒ったんだろう。

 さっぱりわからない。


 その後も、ぼくは街の武器屋を回った。

 けど、反応はほとんど一緒だ。

 ある武器屋さんなんて、武器を持って追いかけ回してきた。


 何がいけなかったんだろうか。

 ぼくは玩具が欲しいわけじゃない、武器がほしいのに。


 【地形走査(サイトビジョン)】が間違って玩具屋を示してるのかとすら思ったけど、店の看板にはすべて武器屋と書いていた。

 もしかして、王都では武器屋のことを玩具屋と呼んでいるのかな。


 ああ……。やっぱり王都の“普通”はわからない。


 結局、全部回ったけど、武器は見つからなかった。


 途方に暮れたぼくは、一休みすることにする。

 広場のベンチに座り、近くで売っていたサンドウィッチを頬張った。

 すっかり陽が暮れ、広場には人の気配がない。


 どうしよう……。

 このままでは、クエストに素手で参加しなければならない。

 リーダーのリナリルさんに、恥を掻かせることになるかも。


 いっそ自分で作ろうかとも思ったけど、仮クエストは明後日だ。

 さすがに時間がない。


 ぼくが「うーん」と悩んでいると、ある物に目が止まった。


 それは剣だ。

 広場のど真ん中に刺さっていた。


 いい剣だ。


 材質はミスリルよりも強いアダマンタイトかな。

 かかってるエンチャントも悪くないし、扱いやすい古代ベルガン語で刻まれている。魔宝石(スロット)が2つなのが難ありだけど、アダマンタイトならぼくが全力で振っても壊れないだろう。


 でも、誰がこんなと(ヽヽヽヽヽヽ)ころに捨てた(ヽヽヽヽヽヽ)んだろう(ヽヽヽヽ)


 剣の側には石碑があった。

 【聖剣ユグドラシル】と書かれている。

 さらに「この剣を抜けし者。伝説の光の者となるだろう」と碑文が刻まれていた。


 この剣が聖剣?


 いやいやいやいやいやいや……。

 あり得ないって!

 こんなの剣なら、近くに住んでた子供の自由研究でも作れるよ。


 だったら、誰かが落としたのかな?


 不用心だな。

 悪用されたらどうするんだろうか。


 ぼくは剣の柄を握る。

 軽く力を込めると、スポッとあっさりと抜けた。


「近くの番所に届けよう。剣がなくなって困っている人がいるかもしれないからね」


 早速、ぼくは衛士さんたちが寝泊まりする番所へ行く。

 落とし物は届けてあげないと。


 【地形走査(サイトビジョン)】を使って、場所を特定する。

 番所の前で槍を持った衛士さんが立っていた。

 夜だからだろうか。

 欠伸をし、眠たそうにしていた。


「こんばんは。あの落とし物です」


 ぼくは例の剣を差し出す。


「ありがとう。剣が落としものなのかい? 随分、物騒だね。ちなみに、どこで拾ったんだい? 詳しく教えてくれないかな」


 番所の中に入り、本格的に事情を尋ねられる。

 椅子を勧められると、衛士さんは紙に向かってメモを取り始めた。


「えっと……。中央広場です」


「広場のどの辺りですか?」


「近くに石碑がありました」


「石碑? ああ……。【聖剣ユグドラシル】の」


「それです。その石碑に突き刺さってました」


「突き刺さっていた――と……うん?」


 衛士さんは羽根ペンを手から離した。

 ぼくが持っている剣をマジマジと見つめる。

 すると、今度は顔が真っ青になっていった。

 汗が浮かび、顎からドボドボと流れていく。


「あ、あの……。その剣、触っても良いかな」


「いいですよ」


 剣を渡した。

 途端、衛士さんは剣を落とす。

 地面と刀身に挟まれ悶絶した。


「おっっも! 剣、重っも!!」


「大丈夫ですか?」


 ぼくはひょいっと剣を拾い上げた。


 あれれ? そんなに重いかな……?

 全然軽いんだけど。


「あの……。君、ちょっと尋ねるんだけど……」


 挟まれた手をプラプラと動かし、衛士さんは息を切らしながら尋ねた。


「その剣を、君が引っこ抜いたの?」


「え? ええ、まあ……」


「――だよね。そうじゃないとここまで持って来られないよね」


「はい。そうですね」


「すごい!」


 衛士さんは叫んだ。


「すごいぞ! 君! 聖剣は君を選んだんだ!!」


 え? え? ええええ??


 どういうこと?

 言ってる意味がわからない。


 聖剣がぼくを選んだ?


 ていうか、聖剣どこにあるの?


 どう見ても、ぼくの前にあるのは、“普通”の剣なのに。


「あの……。とりあえず、この剣を預かってもらえますか?」


「何をいうんだい? それは君のものだ! 大事にしないとダメだぞ! ああ……。なんという日だ。神よ。衛士で一生終わると思っていたのに。まさか伝説の聖剣【ユグドラシル】を抜く人間を見届けることができるなんて」


「いや、困ります。持ち主の元に返してあげないと。きっと困ってますよ」


「違う。君は今から困ってる人を助けるんだ。さあ、行くんだ! 人々は君という救世主を待っているはずだ」


 衛士さんはすっごくいい顔をして、ぼくを送り出した。


 ぼくの方はというと、何が何やらわからない。


 つまり、ぼくが持ち主を探せってことかな?

 この街ではそういう仕組みになっているのかもしれない。


 早く王都の“普通”になれないと……。


 仕方ない。

 持ち主を見つけるまで、ぼくが預かっておくか。


 ……それまでこそっと使わせてもらおう。


 ちょっとぐらいなら問題ないよね。

 綺麗にして返せばいいんだし。


 こうしてぼくは、ようやく自分にあった武器を手に入れることが出来た。


モチベーションアップにつながるので、評価・ブクマお願いします!


初めてアルファポリスに登録してみました。

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