表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その村人は、王都の「普通」がわからない  作者: 延野正行


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/54

第45話 魔族の疑い方が“普通”じゃない!

お待たせしましたm(_ _)m

 本当にこんなので大丈夫なのだろうか。

 ぼくはスピアブライドに手を引かれ、結界の周りを歩いていた。

 結界の内側にいる魔族に、結界を一時的に解いてもらうためだ。


 辿り着くと、スピアブライドは高らかに宣言する。


「魔王様がご帰還です。結界を解きなさい」


 高い声が響き渡る。

 だけど、なかなか結界は解かれない。


 やっぱりダメだったんじゃ……。


 諦めかけたその時、奇跡は起きた。

 魔王城を巨大なベールのように覆っていた結界が解けたんだ。


『お早く! 人間たちが入り込みます故……』


 声が聞こえる。

 ぼくたちは指示通り、素早く中に入った。

 瞬く間に、結界が降りてくると、再び魔王城を囲んだ。


「ともかく潜入成功だね」


 ふー。

 やっとこの仮面が脱げる。

 息するのが苦しいんだよね、これ。

 顔がかゆかったりしたら、掻けないし。

 よく魔族たちがしてる仮面だけど、不便じゃないのかな。


 ぼくは仮面を脱ごうとする。

 その前に、スピアブライドに止められた。


「お待ち下さい、ご主人様」


「え?」


「まだ脱がないでいただきたいのです」


「どうして? 結構、この仮面苦しいんだけど」


「ご主人様の忠実な下僕――いや、奴隷として、主人に苦しい思いをさせているのは、大変胸が痛みます。ですが、どうか。今しばらくそうしていただけないでしょうか。あとで、煮るなり焼くなり、ベッドの上で好きにしていいので……」


 いや、そこまで言ってないけどさ。

 あと、最後の一言なんなのだろうか。

 ベッドの上って、一体なに……。


「わかったよ。そこまで言うなら、スピアブライドの指示に従うよ」


「ありがとうございます。妾の予定としては、この姿のまま魔王様の居室に向かおうと思っております」


「魔王の居室!」


「魔王城の中には、たくさんの魔族が蠢いております。それを突破するのは、至難の業。それならば、この御姿のままで魔王城に入り、一気に魔王様の居室へと向かおうかと」


「良い考えだけど、危険じゃないかな。もし、ばれたりしたら、ぼくはともかく――」


「ご主人様、このスピアブライドを心配しているのですね。妾は感激です」


 うう……、と嗚咽を上げて泣き始めた。

 いや、泣くほどのことでもないと思うけどな。


「というわけで、魔王城に向かいましょう」


 ぼくたちは件の魔王城に向かう。


 こうして目の前にすると大きいなあ。

 ちゃんと外壁とかミスリル製だし。

 レジアス王国や、他の国と比べて大違いだ。


 まあ、ぼく相手だとミスリル製でもダメだけどね。

 こんな城、すぐにぶっ壊せちゃうけど。

 あれ? でも、みんなに危険がない方法って、ここでぼくが魔法をぶっ放すことなんじゃないだろうか。


 そうすれば、中にいる魔王もぺしゃんこになって。


 いやいや、甘いな。


 相手は魔王と呼ばれている人なんだ。

 そんなことでやられたりはしないだろう。

 まだまだぼくも甘いなあ。


 城門に辿り着く。

 これまた大きな城門だ。

 しかも、ミスリルとオリハルコンの合成金属だった。

 めんどくさいことをしたなあ。

 普通にオリハルコンで作ればいいのに。


 スピアブライドが話しかける。

 すると、大きな城門はひと1人が入れるほどの隙間を作り、開いた。

 いよいよぼくたちは、魔王城の中へと入っていく。


「うっ!」


 ぼくは思わず声を上げそうになった。

 そこにいたのは、たくさんの魔族や魔獣だっ。

 コボルト系、オーク系、あるいはデビル系や、オーガ系。

 様々な魔族や魔獣が、広い城の中にありながら、所狭しとひしめいていた。


 これが魔王城の内部か。

 少し緊張してきたぞ。


「魔王様、お帰りなさいませ」


 ぼく――というか魔王なんだけど――を出迎えたのは、アークデビルだった。

 ぼくの前に跪く。


「出迎えご苦労様、アークデビル」


「スピアブライド様も、無事のご帰還お喜び申し上げる。しかし――」


 アークデビルはギラリと瞳を光らせた。


「スピアブライド様は、人類軍(てき)に寝返ったと聞いておりましたが」


「アークデビル、あなたは魔族の中でも四将の次に賢いと思うわ。警戒するのも、無理からぬこと。しかし今、妾がどなた様の御前にいるのか。あなたには見えないのかしら?」


 スピアブライドは、ぼくの方に視線を注ぐ。

 アークデビルもまた、ぼくを見つめた。

 鋭い視線を送る。

 そこには、少し猜疑心のようなものが混じっていた。


 まずいな……。


 やはり疑われているのかもしれない。

 ここは少しスピアブライドのためにも、フォローして置かなければ。


 でも、下手なことはできない。

 魔王らしさがないとね。


(魔王らしい行動か。たとえば、こんな感じかな)


 ぼくは魔法を唱える。

 すると、嵐が巻き起こった。

 その凄まじい風力に、何匹もの魔族が吹き飛んでいく。


 アークデビルですら、やっとのことで堪えていた。


「な、なんという圧力だ! これが魔王様」


 慌てて、アークデビルは膝を折る。

 顔面に冷や汗を垂らしながら、荒い息を吐いた。

 先ほどまでの疑いの目はない。

 むしろ、恐怖に取り憑かれていた。


 あれれ? おかしいな。

 割と簡単な【風砲】を使っただけなんだけど。

 これだけで驚くなんて。


 もしかして、魔族って意外とビビリなんだろうか。


「まさか妾だけではなく、魔王様にまで疑いの目を向けるとはね。でも、これでわかったでしょ。ここにおわす方が誰なのか。そして、妾の忠節が一体誰に向けられているのか」


「し、失礼しました……。ど、どうぞ中にお入りください」


「よろしい……」


「ところで、一体いつの間に外に出られていたのですか? 今は、人類と戦争している最中だというのに」


「危急の時なればこそ、王としての余裕を見せつける必要があったのです。妾が側に仕えたのは、猿どもの内情に明るかったから。これでよろしい? アークデビル」


「度々失礼いたしました。……で、では最後に――。その後ろのオークどもは一体?」


 アークデビルは指を差す。

 そこにいたのは、3体のオークだった。

 指摘されると、たちまち震え上がる。


「ぼ、ぼくはオークだよ」

「悪いオークじゃないよ」

「は、はうぅ……!」


 謎の言葉を発する。

 アークデビルは再び疑惑の眼差しを送った。


「そのものは、最近入った新人です。魔王様自ら、調教した精鋭なのです」


「精鋭……。そのようには見えませんが――」


「また疑うのですか?」


「失礼しました!」


 アークデビルは頭を下げる。

 ようやく警戒を解いた。


 ぼくはホッと胸を撫で下ろす。


 後ろに控えるオークたちは、もちろんただのオークじゃない。

 マリルー、エトヴィン、そしてロザリムの3人だ。


 ぼくだけに危険な目を合わすことはできない。

 そう言って、魔王城潜入任務に加わったんだ。

 そして、スピアブライドの変身魔法によって、今はオークの姿をしている。


 とにかく潜入は成功したらしい。

 目指すは、魔王の居室だ!


【宣伝】

連載しております『ゼロスキルの料理番』が、

この度、カドカワBOOKS様より6月10日に出版することが決まりました。

異世界飯モノということで、この作品とはまた違った毛色ではありますが、

とてもお腹が空く内容となっております。

もし気になりましたら、是非お求め下さい。


引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! よろしければ、こちらも読んで下さい。
『隣に住む教え子(美少女)にオレの胃袋が掴まれている件』


小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=268202303&s

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ