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その村人は、王都の「普通」がわからない  作者: 延野正行


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第42話 魔族が弱いなんて“普通”じゃない

「バズス様が死んだ」

「そんな馬鹿な!」

「ルードガス魔帝国の四将が……」

「たった一撃で……」


 魔族たちが口々に呟く。

 総じておののき、1歩も動けないでいた。


 それはバナシェラ王国のみんなも同じだ。

 口をあんぐりと開けて、固まっている。


 あれれ?

 魔族の大将を倒したのに……。

 なんで、あんな顔をしているのだろう。

 もしかして、ぼく――また“普通”じゃないことをやってしまったのだろうか。


 すると、ようやくマリルーが隣のエトヴィンに話しかける。


「ね、ねぇ……。エトヴィン」


「なんだ?」


「もしかして、私たちいらなかった説とかある?」


「今、俺も同じ事を思っていた」


「はうぅ……。エイスくん、強すぎぃ」


 仲間たちは何か諦めたように、息を吐く。


 すると、魔族側の方から悲鳴が上がった。


「うわぁぁぁぁああぁぁあぁああぁあぁあ!!」

「化け物だぁぁぁああぁぁぁああぁぁぁあ!!」


 失礼だな。

 化け物はそっちの方でしょ。

 ぼくは、“普通”の村人なんだ。


 10000匹もいる魔族たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


 ぼくは後ろを振り返り、フォルデュナンテさんに確認した。


「逃げていきますけど、どうします? 追いますか?」


「いや、無用だ。とりあえず、危機は脱したのだから」


「は、はあ……」


 でも、魔族のことだから、また戻ってくるんじゃないのかな。

 その時はもっと強い魔族が出てくるかもしれない。

 たとえば、超四将とか。

 あるいは、魔王とか出てくるかもしれないし。

 少し数を減らしておいた方がいいかもしれない。


 えっと……。

 なるべく森に被害が出ないようにしないと。

 うん。この魔法でいいだろ。


 ぼくは魔法を唱えた。



 【天輪の慈悲】



 刹那、森へと逃げていく魔族の上に閃光が差した。

 それはとても安らかである。

 雨上がりの雲間から見える光のように神々しい。


 でも、それは魔族にとっては、灼熱よりも恐ろしい光だった。


「ぎゃあああああああ!!」

「身体が燃える! 燃える!!」

「助けてくれぇ!!」

「魔王様ぁぁぁああああああ!!」


 あちこちから悲鳴が聞こえる。

 大小問わず、魔族たちの皮膚が焼けただれていった。


 ぼくが使った魔法は、悪意あるものを討ち滅ぼす。

 魔族にとっては、効果覿面の魔法だ。

 大昔の英雄様が得意としていたらしい。

 ぼくも6歳の頃に習得した。


 その魔法に反応したのは、魔族だけではない。

 リナリルさんが身を乗り出し、その光を見つめていた。


「あ、あれは……。伝説の魔法【天輪の慈悲】。まさか、そんな……。あれは英雄様しか使えないはずなのに」


「え、英雄の魔法……」


「エイス、凄すぎだろ」


「はうぅ……!!」


 みんな、とても驚いている。


 そうなのか。

 英雄村ではみんな覚えていたけどな。

 スライダル兄さんなんて、お腹にいた頃に習得していたって言ってたし。


「おい! 見ろ!」

「魔族が……」


 え?

 何かあったのかな。

 もしかして、【天輪の慈悲】が効かない魔族がいたとか?

 仮にバズスっていう四将が、あの中で最強なら耐えられる魔族はいないと思うんだけど。


 ぼくは振り返る。


 魔族が全滅していた。


 あれれ?

 何人か逃げ切るかなって思ってたんだけど。

 もしかして、魔族って弱いのかな。


「10000もいた魔族が」

「一撃で全滅!?」

「四将も……」

「すごい!」

「英雄だ!」



 英雄が現れたぞ!!



 2000のバナシェラ王国軍は沸き立つ。

 腕を上げたり、拍手をしたり、とても盛り上がっていた。

 ぼくのことを「英雄」だと持ち上げる。


 ええ? ぼくが英雄?


 なんかみんなの様子が“普通”じゃない。


 こうしてぼくたちは、10000の魔族に勝利した。


 バナシェラ王国に英雄が現る……。


 その報は周辺の国にも轟いたらしい。

 次々と、バナシェラ王国に救援要請が舞い込んだ。

 ぼくたちはそのすべてを受けて、魔族の侵攻に悩む周辺諸国を助けてあげた。


 そして、その度にルードガス魔帝国の四将と対峙した。


「我が名はルードガス魔帝国の四将風のミストリネ。我が風! 受けきれるか!」


「えっと? なんですか、この風。ぼくが団扇で仰いだ方が、強いですよ」


 ぼくは試しに魔法で団扇を作る。

 それを全力で仰ぐと、風のミストリネを空の――さらにその上の(そら)へと吹き飛ばした。


「我の名、ルードガス魔帝国の四――」


「あの……。そういうの飽きたので……。すいません」


 ぼくはバズスと同じように、拳を振るった。

 とっても硬かったが、それでもまた空のさらに空の向こうまで飛んでいった。


 魔族の数はどんどん減っていった。

 一時は100万ぐらいいるんじゃないか、と思っていた兵力が、一瞬にして溶けていく。

 ぼくたちが周辺諸国を助けている間に、魔族は5万まで減ってしまった。


 そして、ぼくはすべての国を開放する。

 リナリルさんとフォルデュナンテさんが各国に呼びかけ、ルードガス魔帝国を包囲した。

 逆に人間側が帝国に侵入し、その領土をどんどん縮めていく。


 やがてぼくたちは、魔族の王――魔王の根城を包囲することに成功したんだ。


いよいよ最終決戦!

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