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その村人は、王都の「普通」がわからない  作者: 延野正行


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第41話 殴ってこいなんて“普通”じゃない!

新作の方に読みにきていただいた方、ありがとうございました!

新作ともどもよろしくお願いします。

 バナシェラ王国とルードガス魔帝国は、向かい合っていた。

 王都の北――森と森に挟まれた小さな平原でだ。


 バナシェラ王国、2000。

 対してルードガス魔帝国は、10000。

 数の上では、5倍の兵力差がある。


 それでも、ぼくとぼくの仲間達に不安はない。

 王国の兵士たちも、ひやりと冷や汗を垂らしながらも、背を向けることなく魔族と対峙している。


 ぼくことエイス・フィガロなら、何かやってくれる……。


 そういう期待を一身に受け、ぼくは兵団の先頭に立った。


 すると、下品な笑みを浮かべた魔族の集団は縦に割れる。

 進み出てきたのは、アークデーモンという種の魔族だった。

 鉄のように硬い筋肉の鎧に、サイのような大きな顔と口。

 手には何かの骨で出来た大槍を持っている。


 突然、アークデーモンは高らかに声を張り上げ、名乗りをあげた。


「我が名はバズス! ルードガス魔帝国が四将が1人だ。よく来たな、エルフそして人間どもよ! その勇気に免じて、我と一騎打ちして勝ったなら我が軍を退いてやろう」


 え? 退くって、退却するってこと。

 あのバズスを倒したら……。

 それって、結構お得なことなんじゃないだろうか。

 いいのかな? そんなことを言って。

 あとで、魔王に怒られたりしない。


 だが、エルフの兵士さんたちは震え上がった。


「お、おい……」

「バズスって」

「四将最強っていわれてる」

「あのバズスか……」

「やばい。やっぱりこの戦、ダメなんじゃ……」


 口々に呟く。

 新王であり、司令官でもあるフォルデュナンテさんが諫めるが、動揺は収まらなかった。

 この士気のままでは負けてしまうかもしれない。


 ぼくは決断した。


「ぼくが行きます、フォルデュナンテさん」


「エイスくん」


「大丈夫です」


 ぼくは前に進み出る。

 すると、バズスは笑った。


「くはははは! 一体誰が出てくると思ったら、まだ子どもではないか」


「子どもがじゃありません。これでも16歳ですから」


「言うではないか。小僧、名前は?」


「エイス・フィガロです。よろしくお願いします」


「なかなか落ち着いているな、エイス。お前が目にしているのは、ルードガス魔帝国最強の四将なのだぞ」


 四将ってことは、スピアブライドの知り合いかな。

 それとも友人とか。

 そういえば、レジアス王国においてきたまんまだな。

 どうしてるだろうか?

 変なことをしていないといいけど。


「ほう。スピアブライドを知っているのか?」


「はい。今は、ぼくの忠実な下僕です」


「なに! 四将を下僕にしただと……。にわかに信じがたいが……。なかなかやるな小僧。だが、安心するのはまだ早いぞ。スピアブライドは四将の中でも最弱。

今、お前の前にいるのは、四将最強と名高いバズス様だ」


「そうなんですか。でも、スピアブライドってあんまり強くなかったので、最強といわれても、あんまりピンとこないですね」


「な! 貴様、スピアブライドを愚弄するか!!」


 いや、最初に馬鹿にしたのは、バズスの方じゃないか。


 スピアブライドもそうだったけど、バズスもなんかおかしな魔族だな。

 “普通”じゃないっていうか。


「それより、一騎打ちで勝ったら軍を退いてくれるって本当ですか?」


「魔族に二言はない。むろん、我に勝ったらだがな」


「そうですか。意外と優しいんですね、バズス」


「や・さ・し・い・だとぉぉおぉおぉぉおぉおぉおぉお!」


 あれ? なんかぼく、気に障るようなこと言ったっけ?


「貴様! 言うに事欠いて、魔族である我を『優しい』だと!ふざけるな!」


 え? ええ??

 なに、この怒りよう。

 “普通”じゃない。


 ぼくは誉めたつもりなんだけど……。

 どうやら魔族にとって『優しい』は禁句のようだ。


「今すぐ八つ裂きにしてくれるわ!」


 バズスはぼくに襲いかかってきた

 大槍を目いっぱい大きく振るう。


「我が槍の冴えを見よ! 千魔突き!!」


 連続して槍を突いてくる。

 それはまるで流星群のようだ。

 いくつもの槍が、ぼくの視界を覆った。


「よっと!」


 ぼくはその1つを軽く指先で摘まむ。

 あっさりと大槍を止めた。

 ぐいぐいと槍を振るっていたバズスの動きも、同時に止まる。


「え? あれ?」


「どうしました?」


「馬鹿な! 我が高速突きをあっさりと……」


「え? でも、そんなに速くなかったような」


「ふざけるな! この技は魔王様にも誉めてもらったのだぞ」


「じゃあ、魔王様って大したことないんですね」


「貴様! 我ならいざ知らず魔王様まで愚弄するか」


 ますます怒り出す。

 紫色の顔が真っ赤になっていた。

 直後、大きく息を吸い込む。

 吐き出されたのは、紅蓮の炎だ。

 ぼくはたちまち炎の渦に飲み込まれる。


「え、エイスくん!」


 突然の業火に驚いたのは、リナリルさんや仲間たちだった。

 身を乗り出して心配するのが見える。


 あれれ? なんでだろう?


 驚くような事かな。

 この程度の炎、全然効かないよ。

 グランドキングの炎の方がよっぽど熱い。


 ぼくは軽く手を振った。

 突風が巻き起こる。

 その風があっさりとバズスの炎を消し飛ばした。


「な、なんだとぉぉぉおおおおおぉぉぉおおぉおぉおぉおぉお!!」


 自称四将は叫んだ。

 真っ赤になった顔が、一転真っ青になる。

 だが、攻撃は終わらない。


「これならどうだ!」



 【万殿烙雷】!!



 巨大な稲妻がぼくに落ちてきた。

 青白い光が周囲を照らす。


 今度は魔法か。

 ちょっとピリッと来たかな。

 でも、これぐらいならちょうどいいかも。

 英雄村にいる向かいのおばあちゃんの腰には効くかもね。


 長い間、バズスはぼくに雷属性魔法を叩きつける。

 やがて魔力が尽きてきたんだろうか。

 魔法を途中で止めてしまった。


「もう終わりですか?」


 ぼくはケロッとした顔を向ける。


「な、何故だ……。どうしてだ……。なぜ貴様は生きてる?」


「生きてる? 結構気持ち良かったですよ。おかげで、身体が軽いです」


「ふざけるな!!」


 バズスは槍をぼくに叩きつけた。

 ぼくは腕でその切っ先を受け止める。

 するとポンッと先の刃が飛んでいった。

 折れたんだ。


「随分と脆い武器ですね」


「ふざけるな! あれは先代のダークネスドラゴン様からいただいた」


「じゃあ、そのダークネスドラゴンが不摂生をしていたのでしょう。ちゃんと骨にいい生活を送ってなかったんでしょうね」


「貴様、どこまで魔族を愚弄すればいいんだ」


「そんな……。馬鹿になんかしてません。アドバイスしただけです」


「わ、わかった! なら、貴様の力を見せてみろ!」


「え? いいんですか?」


「ああ! こい! ばっちこい!!」


「死んじゃいますよ」


「我の身体がミスリルより硬いぞ!」


 バズスは胸を張る。


 確かにミスリルは硬いけど。

 でも全然自慢にならないんだけどなあ。


「じゃあ、行きます」


「応!!」


 ぼくは拳を作り、大きく振りかぶった。


「せーの!」


「へ――――」



 ぐちゃ!



 瞬間、バズスの上半身は吹き飛んでいた。

 急速に魔力の反応がなくなっていく。

 たぶん、間違いなく死んだだろう。


 残った下半身が、ごろりと転がった。


 しぃん、と静まり返る。



 あれ? なんか雰囲気が“普通”じゃないんですけど……。


約束されたオチ……。

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