第40話 真っ正面から戦うなんて“普通”じゃない
新作『縛り勇者の異世界無双~ユニークスキルで成り上がる~』投稿記念
ちょっと早めに更新しました
ルードガス魔帝国の突然の宣戦布告。
それはバナシェラ王国だけじゃない。
レジアス王国や近隣諸国にも驚きと衝撃が与えた。
つまりは“普通”じゃないことが起こったのだ。
ルードガス魔帝国は、その強さを見せつけるように近隣諸国の領土を侵略。
バナシェラ王国も北方から侵入され、北の街や村が飲み込まれてしまった。
対応が遅れた王国は、ようやく兵士を揃える。
けど、気がついた時には、ルードガス魔帝国は、バナシェラ王国王都の北――歩いて1日というところまで迫っていた。
「くそ! ルードガス魔帝国め! いきなり戦争を仕掛けてくるとは!」
会議室の机を叩いたのは大臣だった。
珍しく怒りを露わにし、頭に血を上らせている。
その物音を聞いて、気弱なロザリムはビクリと肩を震わせた。
今、ぼくたちは作戦会議の真っ最中だ。
参加者はぼく、マリルー、エトヴィン、ロザリム、リナリルさん、大臣。
そしてバナシェラ王国新王フォルデュナンテさん。
他にも王国の将軍と参謀が揃っている。
怒る大臣の一方で、フォルデュナンテさんは落ち着いていた。
北の窓の方を向いて、黙祷を捧げる。
くるりと振り向いた時、纏っていた具足がカシャリと音を鳴らした。
「落ち着け、大臣」
「す、すいません。新王」
「だが、死んでいった民には申し訳が立たないな。私が席を外していたばっかりに……」
「兄上、それならばわたしも同罪です。探窟に夢中になるあまり……」
リナリルさんとフォルデュナンテさんは、下を向く。
重い空気が会議室に垂れ込めた。
ぼくもなんと言っていいかわからない。
リナリルさんがとても悲しそうだったからだ。
「落ち込んでいられないわよ。過去は過去。空気を重たくしたって、人間は生き返らないわ。今はどうするかが肝心でしょ?」
そんな空気を吹き飛ばしたのは、マリルーだった。
王様たちの会議なのに、とても堂々としている。
こういう時のマリルーは頼りになる。
「マリルーの言うとおりだな」
「はうぅ……。そうです! これからが大事だと思います!」
他の仲間たちも賛同する。
マリルーの言葉に、フォルデュナンテさんもリナリルさんも強く頷いた。
フォルデュナンテさんは、机に広がった地図を見る。
そして将軍たちに尋ねた。
「集まった兵士の数は……」
「約2000です、陛下」
「大して敵の数は?」
「およそ10000かと」
「数では圧倒的に我が国が不利か」
フォルデュナンテさんが唇を噛んだ。
倍以上の兵力さだ。
それに魔族はとても力が強い。
将軍たちの話では、あのスピアブライドには及ばないものの、それに匹敵するほどの猛者が集まってるそうだ。
スピアブライドか……。
あの人と匹敵するほどの力を持った魔族が10000匹。
…………。
もしかして、ぼく1人でも大丈夫じゃないかな。
すると、将軍はフォルデュナンテさんに進言する。
「陛下、具申いたします。ここは籠城すべきです」
「なんだと! 花と森の都と呼ばれたバナシェラ王国の王都を戦火に巻き込むつもりか!?」
「ですが、我が軍は数でも質でも劣っています。ここは籠城し、他国の援軍を――」
「他国も攻められておるのだ。援軍などいつになるやら」
議論は紛糾する。
籠城派と撤退派――意見は真っ二つに分かれていた。
交わることなく、平行線を辿る。
「ならば、大臣! あなたの意見をお聞かせください」
「に、逃げるしかあるまい。せめて王だけでも」
「国を捨て逃げると仰るのか。それなら籠城も一緒ではないか」
「討ち死によりはマシだ!」
「あなたは自分の命が惜しいだけでしょ」
「なんだと! わしはバナシェラにとって最適な――」
「もういい!!」
議論を遮ったのはフォルデュナンテさんだった。
とても騒がしかった会議室が、水を打ったように静かになる。
「同族同士で争っている場合か。こういう時こそ、我々は一致団結しなければならないのだ」
フォルデュナンテさんは、怒るわけでもなく悲しむわけでもなく、ただ厳かにそう言った。
将軍と大臣はシュンと肩を落とす。
赤くなった頭から血の気が引き、やがてすとんと席に座った。
フォルデュナンテさんはぼくの方を向く。
「エイスくん、君の意見を聞かせてほしい」
「ぼ、ぼくですか。でも、ぼくは単なる村人で……」
「君は単なる村人かもしれないけど、英雄村の村人だ。そして、君がここにいる誰よりも強いのは周知の事実だ。違うかい……」
「それは――」
「私たちを導いてほしい。英雄村の村人ではなく、我が国の英雄として」
「バナシェラ王国の英雄……」
そう言われた時、ぼくの血が沸騰したような気がした。
とても熱い。
心臓がドクドクいっている。
これが兄さんがいう英雄の血なのだろうか。
でも、ぼくは――。
『胸を張れよ、エイス。……お前はちゃんと強いぞ』
ふと兄さんの言葉を思い出した。
そうだ。
立ち止まるな。
あのスライダル兄さんが認めてくれたんだ。
ぼくがやるべきだ。
リナリルさんと、リナリルさんの国を守るために……。
「戦いましょう!」
ぼくははっきりとそう言った。
会議室がざわつく。
やがて将軍が尋ねた。
「戦うとは?」
「野戦で、真っ正面から」
「馬鹿な! 相手は魔族。兵力は我らの倍以上なのだぞ」
今度、異を唱えたのは大臣だった。
厳しい口調だったけど、ぼくは怯まない。
「大丈夫です。勝てます、ぼくなら」
「10000匹の魔族を相手にすることになるんだよ」
「兄上、問題ありません」
リナリルさんが口をはさむ。
「わたしはエイスくんを信じます。これまで彼は我々の常識では計れないことを成し遂げてきました。きっと我々に勝利を与えてくれるはずです」
フォルデュナンテさんは目を閉じた。
考えるのに、さほど時間がかからなかった。
「わかった。エイスくんとリナリルの言葉を信じよう」
「へ、陛下!」
「将軍と参謀は、そのように部隊編成を練ってくれ」
「「わかりました」」
2人は敬礼し、部屋を出て行く。
ぼくの一言で戦いの行方を左右することが決まってしまった。
本当にこれで良かったのだろうか。
すると、ぼくの肩にマリルーが手を置いた。
さらにエトヴィンとロザリムも続く。
「私たちも戦うわ」
「俺もだ」
「はうぅ! エイスを1人にさせません」
「みんな……」
「というか、なんかうずうずしてるのよね」
「ああ、なんか暴れ足りないっていうか」
「はうぅ……。ロザリムも燃えてます!!」
やる気満々だ。
最後にフォルデュナンテさんとリナリルさんがそれぞれぼくに声を掛けた。
「良い仲間を持ったな、エイス」
「君は1人じゃない。わたしもお兄様も、そしてバナシェラ王国の民もいる。存分に暴れてきてくれ」
そうだ。
ぼくは1人じゃない。
みんながいる。
だから、守らなきゃ。
ぼくを認めてくれた人たちのために……。
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しばらく更新作が増えますが、
月曜も投稿予定ですので、新作ともどもよろしくお願いします。




