表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/54

第3話 王都の取引値が「普通」じゃない

ブクマ・評価をいただいた方ありがとうございます。

励みになります!


2018/08/20 改稿&サブタイ変更しました。

 昨日の薬草取りは、中止になった。


 ぼくが知らない間に(ヽヽヽヽヽヽヽヽヽ)、リナリルさんが魔獣を目撃したらしい。

 ギルドを通して街の衛兵に報告したそうだ。

 けれど、100人態勢で山に入り、捜索に入ったそうだけど、結局見つけることは出来なかった。


 それにしても、いつの間に魔獣なんて出たんだろうか。

 全然気づかなかった。

 ぼくが知らない間に魔獣を見つけるなんて、さすがリナリルさんだ。


 あの“猫”は大丈夫だろうか。

 魔獣に食われたりしていないかな。

 妙に人懐っこかったし。

 もしかしたら、飼い猫だったのかもしれない。

 でも、王都ではペットを飼ったらダメだし。

 誰かがこっそり飼ってたのかな?


 捜索は終了し、安全が確保されたということで、ようやく入山の許可が出た。

 ぼくは、改めてアミナさんと共に薬草を採りに行くことになった。


「大丈夫かね? また魔獣が出るんじゃ……」

「大丈夫大丈夫。あたしたちにエイスちゃんがいるんだから」


「頼りにしているよ、エイスちゃん」


 アミナさんをはじめ、みなさんぼくを頼ってくる。


 よくわからないけど、薬草採取を頑張れってことかな。


 なら、期待に応えないと。


「アミナさん、この前見せてくれた薬草をもう1度見せてくれますか?」


 もう1度、団扇みたいな葉の薬草を見せてくれる。

 ぼくは【神贋(ゴッド・アイ)】の魔法を使った。

 アイテムを鑑定する魔法だ。

 脳裏にステータスが浮かぶ。


 名前   : 普通の薬草

 レベル  : 2

 用途   : 主に患部の再生能力の活性化


 そんなに大した薬草じゃないみたいだ。


 ぼくは【地形走査(サイトビジョン)】を使う。

 おかしい。

 この山には、この薬草よりもいい薬草が、一杯生えてるんだけどな。


 いや、待てよ。

 村のおばあさんたちもいっていたじゃないか。

 ぼくの鑑定魔法はとてもレベルが低いと。


 きっとアミナさんたちは、この薬草の隠れたステータスを鑑定できているんだろう。


「どうしたんだい、エイスちゃん」

「もしかして、今日はリナリルちゃんがいなくて寂しいのかい?」


 恋バナが大好きな2人のおばあさんたちが、ぼくに迫る。

 にへっへっへっへ、と肩をふるわせ笑った。


 そう。そうなんだ。

 今日はリナリルさんはいない。

 ギルドのお仕事をしなければならないらしい。


「そ、そんなことありませんよ」


「そんな強がらなくてもいいんだよ」

「甘っずっぱいねぇ。あたしが、あと30年若かったら……」

「30年若返ったってババアのまんまじゃないか」

「うるさいねぇ。あんたにいわれたくないよ!」


 今度は、ぼくを巡って喧嘩を始めた。

 この前の事件で、何か怯えていた様子だけど、すっかり元気になったようだ。


「ごめんねぇ、エイスちゃん。うるさいおばあちゃんが相手で」


「いえ。勉強になります」


 こうして、ぼくはアミナさんたちと薬草採取を始めた。



 ◆◇◆◇◆



 夕方、アミナさんと一緒に王都へ戻ってきた。

 籠の中には、薬草で一杯だ。


 採った薬草は、そのままアイテムショップに売るのが通例らしい。

 換金されたお金の何割かが、ギルドに依頼料として払われる約束になっていた。


 他のおばあさんとは別れて、アミナさんがよく利用するアイテム屋に行く。

 馴染みの客を見て、アイテム屋の主人は顔をほころばせた。


「こんばんは、アミナ。薬草の換金だね」


「こんばんは。今日もよろしく頼むよ」


「今回は随分と多いなあ」


「エイスちゃんが頑張ってくれたからね。ああ……。この子ね。新しくギルドに登録した新人のエイスちゃん」


 ぼくを紹介してくれる。


 ここのアイテム屋は、周辺の店よりも高値で取引してくれるという。

 しかも目利きがよくて、アミナさんも信頼しているらしい。


「よろしく、エイスくん」


「はい。よろしくお願いします!」


 ぼくはペコリと頭を下げた。

 持ってきた薬草を、カウンターの上に置く。


「じゃあ、ちょっとお時間いただきますよ。ん? エイスくん。その薬草はいいのかい?」


 アイテム屋さんは、ぼくが小脇に抱えていた草を指差す。


「あら? それ……。私たちが摘んでいた薬草とは違う種類よね」


「え? そ、その……。自分で使おうかと思って、採っておいた薬草なんです」


 山に生えていた他の種類の薬草を、ぼくはこっそり摘んでいた。

 これを使って、自分用の薬を作ろうと思っていたんだ。


 アミナさんは、ぼくが採ってきた薬草を見る。


「うーん。残念だけど、これは単なる草よ」


「え? そうなんですか?」


 おかしいなあ。

 それなりに貴重な薬草を採ってきたつもりだったんだけど。


 ……そうか。

 アミナさんにとっては、単なる草なのかもしれない。

 ぼくでは全くわからない“普通”の薬草を大量に採るぐらいだからね。


「んん? ちょっと待ってくれ。その草を見せてくれないか?」


 ぼくが採った薬草は、アミナさんからアイテム屋さんに渡る。


 葉の裏、茎の様子を入念に確認した。

 すると、アイテム屋さんの顔が、みるみる赤くなる。

 ふんと鼻息を荒くした。


 ぼく、何か怒らせるようなことをしただろうか?


 またか……。

 こうやって村でもよく怒られていたな、ぼく。


「エイスくん!」


 アイテム屋さんは語気を荒くする。


 ぼくはぴくりと首を竦め、覚悟を決めた。


「こ、この薬草……。どど、どこで拾ってきたのだね」


「へ?」


「どういうこと? アイテム屋さん」


「これ……ソルマ草だよ」


「え? ソルマ草ってあの幻の?」


「煎じて飲むだけで、最上ランクの毒や呪いを癒やせるっていう草さ。たぶん、レベル90以上の価値があるんじゃないかな」


「9……90!!」


 いきなりアミナさんは声を張り上げる。

 倒れそうになったのを、ぼくが慌てて受け止めた。


 アイテム屋さんのいうとおり、あれはソルマ草だ。

 魔獣の毒や呪い、麻痺なんかを治癒できる。


 あれれ? でも、そんなに驚くようなことかな?

 割とそこら中に生えてるし、幻っていわれるほど大層な薬草じゃないとは思うんだけど……。


「普通の草と見分けがつかないから、採取はかなり難しいっていうのに。よく見つけられたね。私だって、こうやってよく鑑定するまでわからなかったのに」


「えっと……。そ、そうなんですか?」


 【地形走査(サイトビジョン)】を使えば、瞬時に辺りの草を選別してくれるし、よく生えてる地形などを紹介してくれる。


 そんなに難しいことじゃないんだけどな。


「アイテム屋さん、それでおいくらなの?」


「そうだね。金貨100枚はくだらないと思うけど」


「き、金貨100枚!!」


 え? 金貨100枚もするの?

 村では二足三文にもならなかったのに?


「金貨100枚って……。ちょっとした家ぐらいなら足られるお金よ」


 またアミナさんが目を回す。

 アイテム屋さんは興奮冷めやらず、カウンターを叩いた。


「エイスくん! 是非買い取らせてくれ! 100、いや金貨108枚だそう」


「ええ? そ、そんなにもらえないですよ。金貨1枚でいいですから」


「何をいっているんだね! そんな値で買ったら、店の信用を失う! あと、その残りも売ってくれないか? 10枚はあるね。じゃあ、まとめて金貨1100枚でどうだ? 今、店にはないんだが、明日お金を工面するから」


 100枚が今度は、金貨1100枚……。


 一体、どうなってるの?


 こんなゴミ薬草に、1100枚って。


「す、すいません。やっぱりこれは売れません。そんな高値で取引して、ご迷惑をおかけするには……」


「いやいや、これは“普通”の値段なんだよ。もう少し色を付けてあげたいぐらいなんだ……」


「ご、ごめんなさーい」


 ぼくはアイテム屋さんからソルマ草を奪い取る。

 そのままお金ももらわず、店を出て行った。


 ダメ! こんなの絶対“普通”じゃないよ!


勘違い系主人公エイスくんをこの後もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! よろしければ、こちらも読んで下さい。
『隣に住む教え子(美少女)にオレの胃袋が掴まれている件』


小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=268202303&s

ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ