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第1話 ステータスが「普通」じゃない

朝集計で総合89位! ジャンル別28位でした!

ブクマ・評価いただいた方ありがとうございます!


2018/8/20 改稿&サブタイ変更しました。

 ぼくは大きな街にやってきた。


 【地形走査(サイトビジョン)】によれば、ここはレジアス王国の王都らしい。


 高い壁の城壁。

 広くて、綺麗に舗装された道路。

 街の奥には、多くの塔が立ち並ぶ美しい建物が見えた。

 どうやらあれが、レジアス王国の王宮のようだ。


 ぼくは仕事を探すため、ギルドを目指した。

 そこでは色々な仕事を斡旋しているらしい。


 これだけ立派な街だ。

 ぼくに出来る仕事なんてあるのだろうか?

 せめて案内人の仕事に空きがあればいいのだけど。


 【地形走査】を使って、無事ギルドに到着。


 ぼくは、少し緊張していた。

 ギルドは就職斡旋などもやっているけど、主な業務は冒険者に魔獣討伐の依頼をする場所だと、【地形走査】の概要欄に書かれていた。

 きっと、この中にはたくさんの強い人がいるに違いない。


 気を引き締めてかからないと……。


 ぼくは意を決して、ギルドの扉を開けた。


 中にはたくさんの人がいた。

 奥にはカウンターがあって、数人の受付嬢が応対している。

 壁際には、クエストが書かれた紙が貼り出されていた。


 ぼくはホッとした。


 割と普通の人ばかりだったからだ。

 表情はどの人も険しいけど、眼光はとても優しかった。

 でも、なんでこの人たち、金属の塊を身に着けたり、なんの強化魔法(エンチャント)も施されていない武器を持っているんだろう?

 あんなんじゃケルベロスの体皮にだって、傷つけられないのに。

 これが王都では“普通”なんだろうか?


 それになんだかずっと二の腕をさすっていた。

 風邪か何かを引いているのだろうか。


「大丈夫ですか?」


「お、おう。ありがとうな、あんちゃん。いや、いきなり寒気がしてきてよ」

「おお……。お前もか。俺もなんだかやたら寒くて」

「室内の冷感魔法を強すぎなんじゃねぇか?」

「いや、なんかさ。上位魔獣に睨まれた時の恐怖っていうかさ……」

「俺、今日はもう帰るわ。明日、クエストだし」

「俺も!」


 俺も、俺も、と続けて、ギルドにいた人たちは、出て行ってしまった。

 後に残されたのは、ぼくだけだ。

 受付嬢の人も、早退してしまったらしい。


 弱ったな……。


 これじゃあ仕事を探せない。

 無一文で飛び出してきたから、一刻も早く仕事を見つけたいのに。

 このままじゃまた野宿だよ。


 すると、奥から人が出てきた。

 手に珈琲カップを握った綺麗な女の人だった。


 腰までスッと伸びた長い金髪に、宝石のような綺麗な紫色の瞳。

 肌は真っ白で、それと対称的な真っ黒な魔導士の服を着ている。


 顔の横にピンと張った耳が可愛らしい。

 きっとエルフ族なのだろう。

 村にはハーフエルフの幼馴染みしかいなかったから、純粋なエルフを見るのは、これが初めてだった。ちょっと新鮮な気分になる。


「なんだ? 誰もいないじゃないか? ……私も帰るか?」


「あ、あの……」


「うん? 君は?」


「し、仕事を探しに来ました。エイス・フィガロっていいます!」


「そうか。……仕方が無い。あーもー。折角の休憩時間がパァじゃないか」


 エルフの受付嬢はカウンターの向こうに座る。

 座りたまえ、とぼくにも席を勧めた。

 初めて利用すると申告すると、エントリーシートと呼ばれるものを差し出し、記入するように説明した。


 自分の名前と出身地、簡単な質問に答える。


 記入を終えると、女の人に渡した。

 ふと視線が合う。

 ドキリとして、鼓動が早くなった。


 受付嬢はふわっと欠伸をかみ殺していた。


「悪いな。昨日、徹夜で本を読んでいたんだ」


「そ、そうなんですか……」


「えっと、エイス・フィガロでいいのか?」


 受付の人は、エントリシートなるものを見ながら喋る。

 横に置いた冷めた珈琲を、ずずっ音を立てて啜った。


「わたしの名前は、リナリル・ミヤッドだ。よろしく……」


「よろしくお願いします!」


「早速だが、英雄村ってどこにあるんだ?」


「えっと……。ここから西の端にあって」


「ふーん。聞いた事がないなあ。で――何か経験は?」


「村の案内なら自信はあります!」


「えっと……村の案内って……。村は観光地か何かなのか?」


「いえ。普通の(ヽヽヽ)村だと思いますけど」


「じゃあ、えっと……他に特技は……」


「すいません。他にお見せするようなものは……」


「薬草を採ったり、魔獣と戦ったりとかも?」


「はい。……ぼく、不器用なんで」


「そ、そうか……。(チッ。外れ引いたかも)」


「何か言いましたか?」


「気にするな。何もいっていない」


 リナリルさんはエントリーシートに視線を落とす。


 おかしいなあ。今、確かに「チッ。外れ引いたかも」って聞こえたような。


 はっ……。


 そうか。きっと今のは、ぼくでは意味が解けない古代の言語なのかもしれない。

 それが理解できるか、この人は試したんだな。


 受付嬢という割りにぞんざいで(ヽヽヽヽヽ)ぶっきらぼうな(ヽヽヽヽヽヽヽ)態度も、ぼくの反応を見る試験なのかもしれない。


「じゃあ、今度はこのステータスカードにサインしてくれ」


 カードと羽根ペンを渡す。

 これはステータスカードといって、ギルドの会員証であり、自分の状態が一目でわかるものなのだそうだ。


 大人しく指示に従い、ぼくは自分の名前を書いた。


 すると、突如カードが発光する。

 煌びやかな光に、ギルド内は包まれた。


「な、なんだ……!」


 リナリルさんは息を呑む。


 ギィィィイイインン!!


 金属を打ち鳴らしたような音が響く。

 今のはなんだろう。

 ぼくの常時魔法に、何か魔法の干渉があったみたいだけど……。


 やがて発光は止まった。

 リナリルさんは、カウンター台に静かにたたずむカードを裏返した。

 そこには、ぼくのステータスが書かれている。


 一瞬、彼女は驚いたような顔を浮かべた。

 その後、そっとぼくにカードを差し出す。


「確認を」


 ぼくは恐る恐るカードの裏を見た。


 名前  : エイス・フィガロ

 力   : 0

 体力  : 0

 素早さ : 0

 魔力  : 0

 運   : 0

 etcetc。


 色んな数値が「0」で埋まっていた。


 がっくりと肩を落としかけた時、リナリルさんは説明する。


「やはり何か反応がおかしいと思ったが、数字が正常じゃないな。おそらくカードにかかった魔法が正常に動作しなかったのだろう。私には跳ね返された(ヽヽヽヽヽヽ)ように見えたがな……」


「はい。ぼくにもそう見えましたけど……」


 すると、リナリルさんはぎろりとぼくを睨んだ。


「そう簡単なことではないのだ、エイスくん」


 ステータスカードは古代の遺物をコピーし、初めて製品化されたものだ。

 つまり、このカードには古代言語を羅列した魔法が書かれている。

 ぼくがサインした事によって、魔法は発動し、数値化されるはずだった結果が、跳ね返され、「(エラー)」が出たそうだ。


「“普通”古代言語を使った魔法を跳ね返すことなんて出来ないはずなんだ! 一体、君は何者なんだ?」


「えっと……」



 “普通”の村人だと思いますけど……。



 リナリルさんは初めてコピー化したっていうけど、村ではよく使われてる魔法言語なんだよね。ぼくたちの方では、一般的な(ヽヽヽヽ)農具にまで使われている。


 そもそもカードに書かれてる古代の言語なんて、生まれたての赤ん坊でもわかるのに、なんでそんなに持ち上げるんだろうか。


「“普通”の村人は、“普通”古代の魔法を跳ね返したりしないものなんだがな」


「そ、そうなんですか……」


 王都では“普通”じゃないのか。

 “普通”ってなんだろうか。


「まあ、いい。カードの誤作動かもしれない。これは私が預かって調べておく。君には仮発行ということで、別のカードを渡しておこう」


「ギルドに登録してもらえるんですか?」


「ああ。仕事はいくらでもある。登録者は大歓迎だ。特に古代言語魔法を跳ね返すようにデタラメな登録者はな」


 キランとリナリルさんの瞳が光った。


 うう……。もしかして、ぼく何か怪しまれてる?

 自分でいうのもなんだけど、善良で普通の村人だと思うんだけど……。


「明日から来てくれ」


「明日ですか? はい! 頑張ります!!」


 ともかくお仕事頑張ろう!!


他の更新ともきちん折り合いをつけながら、

毎日投稿していくので、今後ともよろしくお願いします。



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