11.騎士とおっさん―3
カッツォは、そんなグルゥを慌てて押し止める。
「い、いいんじゃグルゥさん。この件については、オイラたちが悪いんじゃから」
「な、なんだよお前!! やっぱり用心棒じゃねーか!! やるってのか? こちとら公国を背負ってここまで来てんだぞ!? やるってのかァーッ!?」
カッツォの制止を振り切り、男の前まで進み出たグルゥ。
その威圧感に、あれこれ文句を言っていた男の口は、パクパクと動くだけになっていた。
「御布令だ」
「……は?」
「まずはその御布令を見せてみろ。正しく、公爵の署名が入ったものか。それを確認したい」
「…………殺されるんじゃなかったのか、ホッ」
小声でそんなことを呟きつつ、男はいそいそと一通の書簡を取り出した。
確かにそこには、“ダストン・アルゴ”の名で署名と捺印がされており、王国からの徴収により緊急で税が必要になった旨が記されている。
だが、
「は、8割!?」
そこに書かれていたのは、前年に納付した額の8割の税金を一ヶ月以内に納めろという、無茶苦茶な要求であった。
「緊急納税分は、後に年税額から引かれるとは書いてあるが……あまりに馬鹿げている! そんなことをして、町や村の経理が破綻としないとでも思っているのか!? その上、納付が遅れた場合には延滞税まで加算するとは」
「う、うん? 何?」
グルゥの話を、男はあまり分かっていないようである。




