101.続・森の民とおっさん―3
「ってコトは、ユグドラシズはもうじきこの大森林にやって来ると……そう言いたいワケか」
グルゥの話を聞き終えたイシュアは、腕組みをして、うーんと悩む様子を見せる。
「で、お前は先に森の奥に行って、何をするつもりなんだ?」
「“ラグランジュ・ポイント”の前に防衛線を張る。森を荒らすつもりはない」
グルゥの答えを、イシュアはガッハッハと豪快に笑い飛ばした。
「そういうことなら、心配ご無用だ。そんなよく分からん魔導師連中なんざ、俺が自慢の筋肉でぶっ飛ばしてやる」
そう言って、二の腕の筋肉をアピールするようにポージングをするイシュア。
グルゥとキットは顔を見合わせ、何かを言いあぐねている素振りを見せた。
「だから、わざわざお前らが森の奥に行く必要はねぇよ。手を煩わせるつもりもねぇ。そのコトを教えてくれてありがとよ、と礼は言っておくぜ」
「いや、その……」
「まあ、せっかくこんな森の中まで来てくれたんだ。多少は歓迎するぜ? どうやって、ここまでの道中の“迷いの森”を抜けてきたのか、それも聞きてぇところだな」
一方的に話を切り上げ、イシュアはその場を去ろうとした。
グルゥは、まだ迷っている様子だが――
「待ってくれ!!」
声をあげたのは、キットだった。
イシュアの前に回りこみ、両手を広げて通せん坊のポーズを取るキット。
その、切羽詰った顔色を見て、イシュアもおや、と何かを感じ取ったようだ。
「……やっぱ、正直に言おう、親父」
「だが、それは――」
「オレのせいで、これ以上迷惑を掛けたくないんだ。……オレたちの、いや、オレの本当の目的は……“神狼”に会うことなんだ」




