101.続・森の民とおっさん―1
招かれたエルフの里は、深く生い茂った木々の中、青と緑に包まれた神秘的な村だった。
家屋は全て木々で出来ていて、石造りの街とは全く異なった趣がある。
ある意味、それはグルゥの想像通りの光景だったが――全く予期していなかったのは、その里の中心人物である王だった。
「ふーむ……するってぇと、お前らはこの森のさらに奥に用があるってことだな」
里の奥まった場所で、切り株に腰掛けたグルゥとキット。
その前には、腕組みをして深く悩んだ様子を見せるイシュアが居た。
「ああ。理由は今説明した通りだ。どうか、先に進ませてくれないだろうか」
「だが、この大森林の深部は、我らとて立ち入ることがない“神狼”の領域なんだ。いくらこの世界の危機だとか言われても……ハイ、そうですかと入らせるわけにはいかねぇな」
イシュアの答えは、グルゥの予想した範疇の答えだった。
いや、それはグルゥの予想というよりも、事前に聞かされていた通りの反応、というところだが。
「……なぁ、一つ聞いてもいいか?」
すると、それまで黙っていたキットが唐突に声をあげる。
「あん? なんだい獣耳の嬢ちゃん」
「なんでずっと、上半身裸なんだ? 戦いはもう終わったんだろ」
キットの疑問は、至極当然のものだった。
が、それに対してイシュアは、ニッと白い歯を見せて応える。
「服を着ちまったら、自慢の筋肉が見えなくなるだろうが!」
ここぞとばかりにポーズを決めるイシュアだが、もはやただの露出狂だと、内心グルゥは考えていた。




