100.森の民とおっさん―5
両者は再び向き合い、第二ラウンドの幕が上がる。
流れ出る鼻血を無造作に拭って、今度はグルゥから殴りかかった。
「おうおう、さすが『サタン』はすげぇ筋肉だな。だが、お前ぇはまるでダメだ」
イシュアはグルゥの攻撃の勢いを殺すことなく、捌くように受け流していく。
「まるで体の使い方がなっちゃいねぇ。ガタイにうぬぼれて、鍛錬を積んでねぇ証拠だ」
痺れを切らしたように大きな一撃を放ったグルゥ。
さっと横に避けたイシュアはその右腕を掴むと、同時に足払いをして、グルゥの体を前に転ばせた。
「ぐっ……!!」
鋼の肉体を持っているとはいえ、その重さの分、転倒のダメージが体の内側に来る。
よろめきながら立ち上がるグルゥの脇腹に、鋭いフックが突き刺さった。
「かはッ!?」
あばらを砕き、内臓に貫通するクリティカルな一撃。
並大抵の相手であれば、即座に勝負が決するようなクリーンヒットだ。
だが、
「その……通りだッ!!」
グルゥはグッと奥歯を噛み締めると、痛みに怯むことなく、ふらつく足取りのままイシュアに体当たりを食らわせた。
「うおッ!?」
まさか反撃を食らうと思っていなかったのだろう。
グルゥの巨体に突き飛ばされ、二人はもつれるように地面の上を転がっていく。




