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100.森の民とおっさん―3

 それはまるで彫刻のような、極限まで絞られた肉体美。

 壮年のエルフがポージングをする度に、隆起した筋肉がはつらつと脈動する。


 年齢など感じさせない精悍な体つきに、グルゥの脳内は完全にパニックを起こしていた。


(何故だ……何故戦う前に、自ら裸を晒して防御力を下げる――!?)


「おらッ、拳を構えやがれッ!!」


 グルゥの困惑など感知することなく、壮年のエルフは一歩踏み込んで真っ直ぐパンチを繰り出した。


 剛速球のような空気を切る一撃を、グルゥは頭を逸らして辛うじて避ける。

 が、かすかに触れた頬が、真一文字にぱっくりと裂けていた。


「なっ……!? これが、エルフの身体能力なのか……!?」


「エルフが華奢でなまっちろい野郎だってのは……どこのどいつが決めたんだ?」


 グルゥのリアクションに対し、壮年のエルフは満足げな笑みを浮かべた。

 後ろに下がったグルゥを見て、さらに一歩踏み込むと左手でジャブを繰り出す。


 鼻っ柱に当たった一撃に、グルゥはたまらず鼻血を噴き出した。


「ぐっ、この……ッ!!」


「そうそう、その意気だ!! デカブツみてぇな筋肉の力を見せてみろッ! 無駄に肥えてるワケじゃねぇだろォ!?」


 グルゥはお返しに右の拳で一撃を繰り出したが、大振りの一撃は俊敏なステップによりあっさり避けられてしまう。

 身を屈め懐に潜り込んだ壮年のエルフは、そこからすくい上げるような一撃をグルゥの顎に食らわせた。

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