100.森の民とおっさん―2
「な……なんだあれは!?」
「嘘だろ、無敵か、ヤツは!?」
エルフ達に動揺が広がる。
なまくらであれば傷一つ付かないグルゥの鋼の肉体。
それは非力なエルフ達にとって、何よりの脅威のはずだった。
だが――
「ええい、その程度で狼狽えるなッ!!」
再び響く、男の号令。
森の奥から姿を現したのは、深緑色のマントに身を包んだ、壮年のエルフだった。
(なんだ……この男!?)
深く皺が刻み込まれ、髪もすっかり白くなっているが、その目は荒れ狂う獣のように覇気に満ちている。
驚愕するグルゥ。
グルゥは過去にも、同じ目をした男に会ったことがあった。
(そうだ、これはまるで……デルガドス王と同じ眼差し)
「これ以上、若ぇ連中がビビって士気が下がるのも癪だからな……。ここは、俺が相手しようじゃねぇか」
グルゥの前に仁王立ちで立ち塞がる、壮年のエルフ。
一筋縄ではいかない相手だろうと、グルゥも自然と身構えた。
「待ってくれ。私は、戦いに来たわけではないのだ」
「へっ、盗人は全員同じことを言うからな……話は、これを済ませてからだ」
そう言って、壮年のエルフが勢いよくマントを剥ぎ取って投げ捨てた瞬間――グルゥは目を疑った。




