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99.天災とおっさん―9

 漆黒の刃が、細く柔な喉を掻き切ろうとする。

 ミルププが自身の死を覚悟し、グッと体に力を込めた瞬間だった。


「いけないですねぇ~! 虫は退治退治っ!」


 明らかに場違いな軽い声と共に、ミルププの眼前に霧のようなものが散布される。

 その刺激臭にミルププは目を瞑り、鼻を覆って何度も咳き込んだが、その時に体の自由が戻っていることに気がついた。


「これ……は……?」


「大丈夫でしたか? ミルププ様ぁ。悪い虫は、私が退治しておきましたぁ」


 いつの間にか、目の前にユグドラシズの姿は無く、代わりに殺虫剤の缶を手にしたニフラが立っていた。

 そして、ミルププの足元に転がっているのは、引っくり返って痙攣している一匹の虫。


「まさか……!?」


「ええ、全ては……この小蠅を通して、術をかけていたようです」


 ニフラの言葉を聞いて、ミルププは殺されかけた瞬間以上の絶望を覚える。


(そんな……こんな使い魔(ファミリア)を通して、あんな高度な魔法を?)


 それはミルププ自身もイモムシを介して行っていた技であり、珍しいことではない。

 だが、離れた場所から虫を使って行使する魔法などたかが知れており、本来の魔力の数十分の一程度しか発揮できないのが、普通のことなのだ。


(ユグドラシズ……見くびっていた、これほどまでの天才だなんて)


 これから相手にする者との、あまりの力の格差にミルププは愕然としていた。

 だが、それを乗り越えない限り、世界はユグドラシズに支配されてしまう。


「もっと……もっと、強くならなきゃ……!」


 ぎゅっと唇を噛み締めたミルププは、書庫内の蔵書をさっと一瞥した。


 せめて、ほんの少しでもグルゥの力になれるように。

 その思いが、ミルププに新たな決意をさせていた。

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